第三十二幕
「大丈夫か!?」
ボロボロの正一に駆け寄っていく。
正一の体は血で真っ赤に染まり意識がなく、体が少し冷たかった。
「みのり!回復魔法使え!」
「はい、兄様!」
みのりが術式を展開して治療を始めた。
「みのりが治療しているなら次は私が行こう」
多分刹那と隼人は後ろのほうが良いだろう。
「いえ、私が行きます」
「でもみのりは今…」
「私の力じゃ血を止めるのが精一杯。それに正一さんは無意識に自分で治療を始めたようですしね」
見ると正一のまわりには結界が張られみるみると怪我を治していた。
「だが…」
「うるせぇ。みのりが行くって言ってんだから行かせてやれよ」
「……分かった」
私がしぶしぶ了解するとみのりは満面の笑みを浮かべた。
「ありがとうございます!氷華さん。ありがとう兄様!」
だがすぐに私は悪寒を感じた。
その時私が見たみのりの顔は見た事がない顔だった。
「…仇はとってきます」
みのりは舞台に向かう。
もうそこには黒コートの人物が待っていた。
「あ~あ、みのりを怒らせちまったな」
「そうなのか?」
「アイツが怒るとこえぇぞ」
くっくっくと一人で笑う隼人。
私はみのりを見た。
確かにいつもと比べ物にならないくらいの殺気だ。
これがみのりの本気。
その時敵が黒コートを脱いだ。
「私の名前は真。よろしく」
「私の名前はみのりです。よろしくお願いします」
「それでは第二試合始め」
お互い距離をとって様子を見ている。
みのりは日本刀の形をした刀を取り出した。
「はぁぁぁ!」
みのりは走り出した。
相手の能力が何かは分からないが先手必勝だ。
すると目の前に霧が出始めた。
(隠れる気!?)
そうはさせないと速度を上げるが、みのりの眼が危険を知らせた。
みのりは一旦止まった。霧はドンドン溢れ出ている。
「よく止まったね。この霧は普通じゃないよ。この霧は刃物だよ」
「刃物?」
「水滴を凍らせ鋭い氷の塊なんだよ」
「なるほど」
霧がみのりのまわりを囲む。
「あなたの能力は知ってるよ。だけど霧は避けられないでしょ?」
真の合図と同時にいっせいに霧がみのりに襲いかかる。
みのりが霧に突っ込んでいく。
みのりは傷を負ったがたいした傷ではなかった。
「集まる前に自ら食らうとはね。流石に眼を持ってるだけはあるね。でもいつまでもつ?」
みのりに霧が迫る。
全方向から攻撃されるので避けようがなかった。
(それなら!)
みのりは霧で切り刻まれるのも構わずに真に突っ込んだ。
「避けられないなら避けない」
真の目の前にまで近付いたが真は反応しきれていなかった。
こんな術を使っているから肉体面は普通の人並なんだろう。
みのりは真に刀を振るった。
だが、手応えがなかった。
何度も何度も刀を振るうが体をすり抜けている感じだ。
「まさか!」
「そのまさかだよ。私の体も霧で出来ているの」
みのりの後ろに霧が迫る。
「しまった!」
みのりの姿は霧で包まれ見えなくなったが、すぐにみのりは霧から飛び出した。。
だが、ワンピースのような服はボロボロで血の斑点が出来ていた。
「私は改造された。身を引き裂かれるような苦痛に耐え、手に入れた力がこれ…。私はいつもフワフワとしていて自分の存在に確信がもてない。そんな苦しみがあなたに分かる?」
「分からないよ。でもそんなことは関係ない。正一さんをあんなにしたあなた達を私は許さない!!」
「許さないからってあなたに何が出来るの?」
再び霧がみのりを包み込む。
「おい、隼人。やばいんじゃないか?」
隣りで見ていた氷華が話しかけてきた。
「みのりは魔術使えないのか?」
「使えるけどアイツのは水系の魔術だ。相性は最悪」
「それじゃあ…」
「いいから黙って見ていやがれ。アイツは炎磨家の次期当主に選ばれたんだぜ?」
そんな話をしているうちにみるみるみのりの姿が見えなくなっていく。
しかし、突然霧が消え始めた。
それを見て動揺する真。
「どうして?」
みのりが動揺しているすきをついて一気に間合いを詰める。
「くっ!」
慌てて霧を再び出現させみのりに攻撃するがまたかき消されてしまった。
そして目の前にみのりが迫る。
みのりは刀を下から上へ振り上げた。
ズシャッと肉の斬れた音が響き血が流れ出す。
「なんで斬れるの?」
見るとみのりはさっき持っていた刀とは別に左手に銀色に輝く短刀を持っていた。
「この短刀は魔術や異能を無効化する効果があるんです。あなたの術や体は魔術による力だと判断したのでこれを使おうと思ったんです。当たりでしたね」
もう勝負はついたも同然だった。
体を強化して動けるみのりと違い、真は術がなければタダの人間だ。
「降参してください。あなたをこれ以上傷つけたくないです」
「私を許さないんじゃなかったの?甘いわね」
「あなたを傷つける事は簡単です。けれどそれだとあなた達と変わらない」
「……負けたわ」
「勝者炎磨みのり」
その声がコロッセオに響き渡る。
みのりは傷つきながらも戻ってきた。
「治療するよ」
正一がみのりに治療を始めた。
「でも正一さんのほうがヒドい怪我じゃないですか」
「僕はもう治療し終えたからね。それに僕の役目でもあるんだ」
「黙って治療してもらえ」
氷華が準備運動しながらみのりに言った。
「…じゃあお願いします」
「よし、私も行くか」
氷華が歩き出す。
「負けたら承知しねーぞ」
俺は少しプレッシャーを与えたが氷華は少し笑ってあぁと答えただけだった。
舞台で黒コートの人物と氷華が向かい合った。
「第三試合始め」
黒コートの人物が黒コートを脱いだ。
その人物は黒のショートヘアーでかわいい顔をしていて服なども見て思った印象は…メイドだった。
彼女はメイド服を着ていたのだ。
「敵を認識。撃墜します」
彼女は空間からミサイルランチャーを取り出した。
「おい、名前ぐらい名乗ったらどうだ?」
「私は製造番号七番。ご主人様からはナナと呼ばれています」
「そうか、私は下村氷華だ。よろしく」
氷華はナナに向かって走り出す。
それにナナはミサイルを撃って応戦するが、氷華はそれを軽々躱す。
ナナは武器を変え両手にマシンガンを持った。
ガガガガとマシンガンを連射するが氷華は刀で防いでいる。
次の瞬間氷華の姿が消えた。
そしてナナの背後に回る。
氷華は思い切り刀を振り下ろした。
しかし、カキーンという音がするだけで刀は肩で止まっていた。
「何!?」
ナナはマシンガンで思い切り氷華を殴った。
「くっ!」
氷華は後ろに吹き飛ばされる。
「無駄です。私の体は超合金で出来ています」
「お前サイボーグか?」
「その通りです」
ナナは両手に持っていたマシンガンをしまった。
そして氷華の事を指差した。
氷華は何をするのか様子を見ていた。
その時隼人が叫んだ。
「避けろバカ!」
「え?」
氷華は隼人の声に反応し右に避けようとする。
その時左肩に熱い感覚が走った。
血が勢いよく噴き出す。
何かが氷華の左肩を貫通していた。
まったく見えなかった。隼人の声がなかったら心臓を貫いていた。
「それはなんだ?」
「レーザーです。肉眼では見えません」
するとナナの背中から正方形の物体が十個ほど出て来てナナのまわりを浮遊している。
「これからが本気です」
「くっ…」
そして正方形の物体からレーザーが放たれた。




