第三十一幕
氷華は家に帰り、ポストに入ってた夕刊をとる。
それと同時に便箋に入った手紙のようなものがヒラリと落ちた。
「なんだ?」
私はそれを拾い家の中に入った。
便箋を開けると中には手紙が入っており魔方陣が書いてあった。
「これは…」
魔方陣が書いてあるのでうかつに開く事も出来ずにとりあえず明日正一に見て貰うことにした。
次の日の放課後。
隼人は何故か家にいた。
「おい…寝てろと言ったろ?」
何か自分のまわりにオーラが漂っている気がする。
「ん?退院していいってよ」
「……本当か?」
「おう、もう治ったぜ」
「そうか…ならいいんだが…」
すると正一がヒョコッと現われた。
「氷華ちゃんおかえり。それでなんだい?見てもらいたいのって?」
「あぁ、これなんだ」
白い便箋の中から真っ白な紙を取り出した。
正一はその手紙を受け取るとじっくりと見始めた。
正一は黙っていればかなりいい男で少し長めの茶髪の髪も優しそうなその目付きも世の女性たちには大ウケだろう。
だけど正一は変態なのだ。
突然正一は虫眼鏡を取り出してニヤニヤと笑いながらさらにじっくりと見ている。
「刹那とみのりは…?」
「ん?あっちで遊んでんじゃね?」
隼人はゴロゴロしながら興味なさそうに答える。
「そういえば刹那っていくつなんだ?」
すると隼人は起き上がりその紅い目でこちらを見つめてきた。
その紅い目も昔のような禍々しさはなかった。
「みのりと同じ年のハズだ。つーかなんなんだよ。めんどくせぇな」
「いや正一が調べ終わる間暇だからな」
さらに気色悪く調べている正一を見て私はため息をついた。
「しかし、お前たち旅している間ちゃんと食べていたのか?だから刹那はあんな小さいのではないか?」
「食べさせてたっつーの。アイツは……特殊なんだよ」
「え?」
「分かったー!!」
その時正一が調べ終わったようでかなり興奮していた。
「分かったのか?」
「うん、分かったよ。この魔方陣は録画機能のような魔法だね。すぐに見れるけど見る?」
「あぁ、頼む」
「早くしやがれよ」
なんだかんだで隼人も興味津津のようだ。
「いくよ」
正一が魔方陣に触れると空中にスクリーンができ映像が写し出された。
やがて真っ黒な人影が現われた。
「やぁ、みなさんこんにちは。いきなりですが、この映像を見た三日後に指定した場所に五人で来てください」
それを告げる黒い人影の声は機械で変えたような声だったため、男か女か分からなかった。
「選ばれたとはどういう意味なのか?そしてそこにいるであろう、白い死神の生い立ちを話してあげますよ。それでは三日後に」
そこで映像が途絶え手紙が燃え上がる。
「証拠湮滅ってやつか?上等じゃねーか。俺は行くぜ」
「ダメだよ。罠かもしれないんだ」
正一は隼人に必死に訴えかけたがまったく動じていなかった。
「私も気になる。だから行こう」
「氷華ちゃんまで!?」
「私も行きます」
「……………」
いつの間に居たのかみのりと刹那も行く気満々だった。
「仕方ないなぁ」
なんで誰も僕の味方がいないんだとか考えながら涙ぐむ正一だった。
三日後。
指定された場所は普通の家だった。
警戒しながらドアを開けると中は違う場所に繋がっていた。
「どこで〇ドアか?」
隼人のツッコミをスルーして私達は中に入った。
ドアを抜けるとまた外でコロッセオのようなものが目の前にあった。
「ようこそ」
目の前に一人の男が現われた。
髪を剃髪しており服もお坊さんのような服を着ていてお坊さんに見えたがだがサングラスをつけていたので違和感があった。
「付いて来てください」
言われるがままに付いて行くと舞台の中央で四人の人がたっていた。
四人とも黒コートを着ており顔が見えなかった。
「何をする気なんだい?」
「五体五の団体戦です」
「約束が違う!話をしてくれるという事だったじゃないか!」
「こいつらに勝ってから教えてあげますよ」
急にどこからか声がした。
あの映像の人物の声だ。
「いいじゃねーか。最初から覚悟してたろーが」
「では始めようか」
こっちの一番手は正一だ。
舞台の真ん中には黒コートの人物と二人だけだ。
私達は観客席でそれを見ていた。
「その黒コートは取ってくれないのかい?」
「言われなくても取りますよー」
黒コートを取るとその正体は小さな子どもだった。
そのクリクリとした目。
小さな手足に体。
どこから見ても子どもだった。
「君……」
「子どもだからってなめないでくださいねー。ルール説明しておきますけど戦闘不能になるか降参するかで負けですからー。では始めましょー」
いつの間にかその少年は舞台の端っこに立っていた。
「準備はいいか?それでは試合開始!」
その声とともに正一は少年のまわりを箱で囲み、盾の剣を無数に作りいつでも串刺しになるような状態だった。
「さぁ降参してくれるかな?」
だが、危機的状況にもかかわらず少年は余裕の顔だった。
「僕の名前教えてなかったですねー。僕の名前はスコットですー」
「僕の名前は―」
「川島正一さんですよねー。盾を筆頭に補助魔法を得意とする後方支援型魔術師ですよねー。その程度で僕に勝てると思わないでくださいねー」
その瞬間まわりの盾が全て消滅した。
「なっ!」
「こんな盾、反質、反回転の魔力で消す事が出来るんですよー」
スコットは手のひらから大きな火の球をだす。
それを正一は盾でそれを防ぐ。
だが間髪を入れずに上空から光の剣が降り注ぐ。正一は全体を防げるようにドーム状に盾をはった。
光の剣は盾を少し貫通するが、そのまま止まった。
そしてスコットの方を見ると彼はまた余裕タップリの顔でこちらを見ていた。
その手には赤い本を持っていた。
「それは……マジックレコーダー!?」
「そのとおりーよく気付きましたねー」
マジックレコーダーとは魔術の詠唱をその媒体に登録しておく事で詠唱無しで魔術を使える優れものだ。
そんなものがあるなら皆使うだろうが登録の仕方と扱いが難しく使用者はほんのわずかしかない。
さっきの盾を消した事といい、まさに天才少年だ。
「だが、君はまだ幼い。それを使い続けるには魔力がまだ足りないだろう。だから僕は君の魔力が枯れ果てるまで防ぎ続ける!」
正一は横に走り出した。
「面白いですねー。じゃあいつまで耐えられますかなー?」
スコットは全ての力を注ぎ込み正一を殺すために全ての魔術を開放した。
走っていた正一は急に動きが止まった。
足が土で出来た手で掴まれて身動きがとれないのだ。
正一は自分のまわりに盾を何十にも張る。
そしてスコットから様々な魔術が放たれた。
火、水、雷、氷、土、光、闇。
全ての基礎属性の魔術が正一を襲う。
だんだんと盾が破壊されいく。
その度に新たな盾を展開していく。
それの繰り返しが何分も続く。
「らちがあかないですねー。仕方ないから上級魔法使っちゃいますー。巨人の鉄槌」
すると巨大なハンマーが正一を押しつぶす。
盾も意味をなさずにそれごと押しつぶされた。
「終わりですねー」
しかし砂煙が晴れるとスコットの顔は驚きで満ちた。
正一は立っていた。
血だらけでボロボロになりながらも。
「本当にしつこいですねー。もう一度上級魔法使っちゃいますー。炎陣の風花」
正一は再び盾でそれを防ぐ。
正一のまわりを炎の竜巻が囲む。
そしてその急に大爆発を起こした。
ドーン!!というすごい爆発音と爆風でコロッセオが壊れるんではないかと思うぐらいすごい威力だった。
「正一!!」
氷華が観客席から叫んだ。
「はぁ、はぁ、はぁ、もう…遺体すら残ってないですよー」
疲れたスコットはその場に座り込む。
その時スコットのまわりが盾で囲まれ最初と同じ状況に陥った。
「…な…なんで…?」
正一はまだ立っていた。
全体が真っ赤に染まり生きているのが不思議なくらいだった。
徐々に近付いて来る正一にスコットは恐怖を感じていた。
「ひっ!来るなー!来るなぁぁぁぁぁー!!」
スコットの目の前にまできた正一の目は虚ろで意識がもうなかった。
スコットは死を覚悟した。
しかし正一はそのまま倒れた。
「勝者スコット」
第一試合私達は負けた。




