第二十八幕
俺達は急いで刃がいる病院に向かった。
「こちらです」
看護婦さんが俺達を部屋まで案内してくれた。
中に入ると刃はベットで寝ていた。
「赤戌様は現在精神的ショックにより目を覚ます事が出来ません。まぁ無理もないでしょう。二十人編成の部隊で生き残ったのが赤戌様だけだったんですから」
そう言うと看護婦は部屋を出て行った。
俺らは慈煉魔討伐の命を受けて青森にいた。
その敵は聖地と呼ばれる霊園に現在もいるらしい。
情報はそれだけ能力も不明。
俺達はその任務を果たすため病院を出て霊園へと向かった。
そして霊園に着くと慎重に中に入っていった。
「いいか?無理しなくていいぞ」
氷華が小声でそう言葉を漏らした。
皆不安なんだろう。
ベルセルクである刃率いる部隊を全滅させてなおもこの場所に居座る正体不明の敵に。
「うるせぇ、ここまで来たらやるに決まってんじゃねーか」
「そうだね」
「氷華、私達を信じてよ」
「………分かった。みんな死ぬなよ」
そこで刹那が俺の袖を引っ張っているのに気付いた。
「この子……来てるけど……いい…の…?」
指差した方向にはみのりがいた。
「お前なんでここに!?」
「私も戦います」
みのりは危険だと思い留守番させてた筈だった。
「ダメだ」
「戦います」
「ダメだっつーの」
「戦う」
「まぁまぁ二人とも落ち着いて」
ここで正一が笑顔で間に入ってきた。
「隼人君、みのりちゃんは大分強いよ。だから戦力になると思うんだ。一緒に戦ったほうが勝率も上がるよ」
確かに解の力の使い方も俺よりみのりのほうがうまい。
「分かったよ」
こうしてみのりを仲間に加えて俺達は先へと進んだ。
やがて広い場所に出ると大きな墓の前で立ち尽くしている人影を見つけた。
俺達は武器を構えて気配を殺し忍び寄った。
その時微かな気配に気付いたのかゆっくりとこちらに振り向いた。
無表情なキツネのお面を被っており右手には傘を持っていた。
一見すると人間に見えるが禍々しい妖気が溢れだしていた。
「あれは妖狐じゃないですか?」
みのりが言った妖狐と言うのはかなり高位のほうの魔獣だ。
妖狐の慈煉魔だったらかなり強いだろう。
その時妖狐がおもむろに傘を開いた。
その時俺は何かが視えた。
「正一!囲め!!」
正一はとっさに一人一人を光の箱で囲んだ。
その時空から赤い雨が降って来た。
「なんなんだい?この雨は?」
「わかんねぇけどやべぇのは分かる」
みのりも同じものを視たようだ。
「しかしどうする?このままでは戦えないぞ」
とりあえず様子見をする事しか出来なかった。
しばらくしても動きはなかった。
「仕方ねぇ…攻めるか」
俺は魔業化しながら黒い魔力で屋根を作りゆっくりと妖狐に近付いた。
その瞬間妖狐は目の前にいた。
俺は右に蹴り飛ばされる。
そして赤い雨をもろに食らってしまった。
体勢を立て直して屋根を作ろうとしたがその前に妖狐が迫り来る。
「兄様!!」
「隼人!!」
みのり達が出てこようとしたのを俺は片手で制す。
「俺がこいつを引きつけるから一撃必殺の攻撃を用意しとけ!」
迫り来る攻撃をかすりながらもなんとか躱していく。
妖狐のまわりに青白い炎が現われる。
それらがいっせいに俺に向かって飛んで来た。
俺は右翼を出現させて翼で防ぐが、妖狐に背後に回り込まれ蹴り上げられた。
そのまま右に左に吹き飛ばされ地面に降りられなかった。
(コンボしてんじゃねーよ!)
俺はタイミングを合わせて刀を大剣に変えて思い切り振り抜く。
妖狐に直撃して地面に激突する。
俺は黒龍で追撃をする。
「今だ!」
それに合わせて皆が一斉攻撃をする。
ドーン!とすごい爆発音と砂煙がまき起こる。
地面に着陸して様子を伺う。
だが雨が止んでないのでまだ殺ってはないだろう。
俺は光弾を撃とうとしたが頭に強い衝撃を受けた。
頭に妖狐のお面がたくさん浮かぶ。
そして過去の嫌な記憶が走馬灯のように流れ続ける。
「やめろぉぉぉぉーー!!」
「隼人!!」
その間にも妖狐は隼人に攻撃を続ける。
「どうすれば…」
今出ていったらあの雨の餌食となってしまう。
かと言ってこのままほっとくと隼人は死んでしまう。
今の自分達にはここから何もする事が出来ない。
なんて無力だ。
強くなろうと思った筈なのに仲間一人も守れないのか。
そう思いながら横で泣き崩れているみのりをチラリと見て決心した。
「正一、私をここから出してくれ」
「でも、それじゃあ」
「頼む」
必死に頼み込む氷華の目に正一は承諾しそうになった。
「……ダメだ」
「なんで!?このままだったら隼人は死ぬ!そして私達も!」
「だから僕らは逃げよう」
その瞬間その場が凍り付いた。
「なんだって……?」
「逃げて情報を持ち帰って援軍を頼むんだ」
「ふざけるな!!」
氷華は光の壁に思い切り拳を叩き付ける。
「隼人を置いて逃げるなんて出来るわけないだろ!」
「いい加減にしろ!!」
普段温厚で大声を出さない正一に困惑する氷華。
「隼人君は僕らが全滅する事を望んでない!」
シーンと静まり返る。
「……分かった。逃げよう…」
そして今まさに隼人にトドメが刺されそうだった。
(くそっすまない隼人…)
氷華の目から涙が溢れ出す。
この場から逃げようとするのを拒むみのりを連れて早く逃げようとした時氷華の隣りに誰か居る。
「逃げなくても大丈夫ですよ」
柔らかな物腰で親近感を覚えさせるこの青年は雨をまともに浴びているのにまったく平気だった。
「なんだ?お前たちは…」
「援軍です」
「そういう事だ」
その青年の隣りに筋肉質の大男が立っていた。
「それじゃあ行ってくる」
「あなた達は?」
「あの人はベルセルクNo.6猪突拳で私はその付き人の治と言います」
治が自己紹介をしている頃拳は妖狐と対峙していた。
「あ……んた…は……?」
「ほう、この雨を受けてさらにこのダメージでまだ意識があるとはな」
隼人を片手で持ち上げて治に投げ付ける。
「治療しろ」
「ハッ!」
治は術式を展開して隼人を治療していく。
「さて、やるか」
両手に手袋をはめていく。
手袋といっても毛糸とか優しい感じではなくて金属が入っているいわばグローブのようなものだった。
そして体が光出して髪が少しだけ逆立つ。
「猪突家の能力『纏』を見せてやるわ」
その瞬間妖狐が吹き飛んだ。
拳はさらに追撃を仕掛ける。
お互いの姿が見えないほどのスピードで戦い合っていた。
「あの人…強い…」
花がそう言葉をもらすと治が得意げに説明し始めた。
「あの人の家の能力は『纏』魔力を性質変化させたオーラを纏う事が出来る。今は雷のオーラを使っていますね」
普通だったら死んでるほどのオーラを纏っているんです、と続けて治療に専念し始めた。
一方拳は完全に妖狐をおしている。
「チェストぉぉぉぉー!!」
右手に炎が宿り妖狐の顔面を殴り付ける。
その威力は凄まじく妖狐の仮面を砕く。
そして醜い妖狐の顔があらわになった。
妖狐はおもむろに傘を閉じた。
すると赤い雨が止んだ。
「本気という事か」
そして一気に拳との距離を詰めて傘で思い切り拳の右頬を殴った。
しかし拳は微動だにしなかった。
「全力でこの程度か?拍子抜けだわ」
右手にオーラが集中し激しく燃え上がる。
「吹き飛べぇぇぇー!!」
炎の拳により妖狐は跡形もなく滅された。




