第二十七幕
俺は下村家の庭で訓練をしていた。
魔業のコントロールを中心に特訓をしていた。
「兄様〜!ご飯ですよ」
あの日失った筈だった大切な妹。
それが今ここにいる。
「おう、わかった。今行く」
食卓には所狭しと料理が並べられている。
「ほう、お前が修行なんてするなんてな」
この家の主の少女は感心しながら頷いている。
「別に。誰よりも強くなりてぇんだよ俺は」
そうかそうかと含みのある笑みを浮かべて味噌汁を飲む少女にイラッときた。
同時に恥ずかしさも込み上げてきた。
俺は辺りのものをひたすら食べて風呂場へと向かう。
「お風呂に入るのなら私も一緒に入ります」
「いや風呂は俺一人で入る」
「いや昔みたいに一緒に…」
「昔とは大分変わってるだろーが。いいからお前は飯食ってろ」
なんとか妹を説得させて風呂場に行く。
一緒に入ったら教育上悪いからな。
俺は訓練で流した汗をサッパリ洗い流し風呂から上がる。
なんか飲もうとキッチンによって麦茶を飲みながらリビングに向かう。
すると氷華が宿題をやっていた。
「お前学校行ってたんだ」
「当たり前だ。最近休みがちだったがな」
そしてまた問題に取り組み始めた。
「お前頭良いのか?」
「まぁ学校では三番くらいだな」
「ふーん」
俺はテレビをつけて適当な番組を見始める。
しかしさっきから氷華の手の動きが止まっている事に気付いた。
「お前進んでなくね?」
「いやこの問題が難しくて」
俺は問題を見た。
「隼人は学校行ってたのか?」
「小学校まではな」
はははと氷華は苦笑いを浮かべた。
俺はスラスラと問題を解き始めた。
「おいおい、適当な事書くな」
氷華は書かれた答を見ていく。
「な!これ…合ってないか?」
「だろ?」
「嘘だ…お前に解ける筈がない…キャラが違うぞ…」
イスから転げ落ちる氷華。
つーか俺はバカキャラだったのかよ。
「どうしたんですか?」
風呂上がりのみのりが現われる。
「み…みのり…隼人は頭良いのか?」
「あっ、はい。小学生の時にはすでに大学生レベルだったと思いますが」
「そんな…」
「みのりなんて博士の資格持ってるぜ」
「お前らは一体どういう家系なんだ!?」
「うるせぇな、俺はもう寝るわ」
俺はちゃっちゃっと寝る事にした。
次の日の朝。
私は久しぶりの学校だった。
朝食を作ると私はみのりと食事をとる。
隼人は昼間にならないと起きないので最近はみのりと二人で朝食をとっている。
すると電話が鳴った。
みのりが出ようとするのを制して私が出た。
「はい」
「教団です」
「!…なんでしょう?」
「炎磨隼人殿にお話があります」
「あっ、はい」
隼人に電話が来るなんて珍しいな。
隼人を起こしに行くと完全に熟睡しており布団もはだけていた。
「おい、起きろ。電話だ」
「スースー」
「おい、起きろって」
「スースー」
「仕方ない」
往復ビンタを思い切り食らわせた。
「ウガッ」
あっやっと目を覚ました。
「ってえな!なにすんだよ!」
「電話だお前にな」
「あ?俺に?」
隼人はしぶしぶ電話に出た。
「あっもうこんな時間か。私は行って来る」
「いってらっしゃい。氷華義姉様」
私は学校へと向かった。
学校に到着すると懐かしい面々と再会した。
「氷華!」
「花久しぶりだな」
「まぁ五日だけだけどね」
ジャックとの戦いから私達は会っていなかった。
「ビッグニュースだよ!このクラスに転校生が来るんだって!」
やがて先生が教室に入ってきた。
皆が席につきさっきまでの騒がしさが嘘のように静かになる。
「えー転校生だがどうやら遅刻しているようだ」
えー、と皆が不満をもらす。
初日から遅刻するなどろくな奴ではないなと私は心の中で思った。
やがて授業は進み昼休みになった。
すると急に担任が入ってきた。
「転校生が今来たから紹介するぞ」
皆が慌てて着席をする。
「おい入ってこい」
ドアを開けて入ってきたのは長身で金髪の髪をたてていて瞳は紅色の少年炎磨隼人が現われた。
「「なんでー!?」」
私と花はつい大声を上げてしまった。
「なんだ?お前ら知り合いか?」
「あっ…まぁはい」
「そうか、なら早く溶け込めるだろう。さぁ自己紹介してくれ」
不機嫌そうな隼人を真ん中に連れていく。
「炎磨隼人…よろしく」
ブスッとした表情でたった一言の自己紹介に教室がざわつく。
「まぁまだ緊張しているんだろ。お前の席はそこだ」
指さしたのは私の席の後ろだった。
「じゃあ昼休みにしていいぞ」
担任が出て行くと私はすぐに隼人に問い掛けた。
「なんでお前が学校に?」
「教団が行けってよ」
「そうか…今朝の電話か……」
「案外似合ってるじゃん!制服姿!」
「うるせぇよ。めんどくせぇ」
そう言って隼人は教室から出て行った。
その後隼人は戻らなかった。
放課後私は隼人を迎えに行こうとしていた。
まぁサボリの定番は屋上だろう。
私は屋上に向かう。
そして屋上の扉を開けるとそこにはたくさんの女生徒がいた。
「なんだこれは…?」
まわりの話を聞いてみるとどうやら美少年が寝ているらしい。
私はその美少年に近付いていく。
「おい起きろ隼人」
「あん?もうそんな時間か?」
隼人が立ち上がるとキャアキャアと黄色い声がとぶ。
「なんだ?アイツらは?」
「お前と友達になりたいらしい」
「ふーん。まぁいいや。帰ろうぜ」
扉からさっさと出て行くのに私は遅れて続く。
しかし隼人が美少年か…確かに言われればそうか。
「腹減った…」
帰り道に隼人は急に呟きだした。
「悪いがいま持ち合わせがないから家に帰ったらな」
「まじかよ…」
ダランと気の抜けたのかだらしなく歩く。
「今日きた調子に乗った転校生ってのはテメェか?」
すると前に見るからに悪そうな不良が二、三人現われた。
「あん?」
「ちょっと面貸せや」
すると急に悪魔のような笑みを隼人が浮かべた。
「氷華テメェ先帰れ」
「そうか早く帰れよ」
「さぁ行こうか」
やがて料理が出来た頃に隼人が帰ってきた。
目茶苦茶たくさんの焼き鳥を持って。
「どうした…それは…?」
「さっきの奴等に奢ってもらった」
それは恐喝じゃないのか?
急に電話がなった。
「はい、もしもし」
「教団です」
「隼人の件でしょうか?」
「いえ、今回は任務です」
なんだ任務か。
「今回の任務は非常に危険です。ベルセルクNo.9の赤戌刃殿も重体になったほどの任務です」
「なに…?」
これから世界が回り始めた。




