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第二十五幕

目を覚ますとまわりの空間が歪み始めていた。


「………そうだみのり!」


みのりは後ろのほうに倒れていた。

駆け寄ると息をしているのを確認したので安心した。


「早く脱出するぞ!」


唖然とした顔をしている氷華と花に叫ぶ。


我に帰った二人は正一と刹那を抱えて走り出す。

「こっちデス」


リースが先導するために前を走る。


長い廊下の先に穴のようなものが見えた。


「あそこデス!」


そしてみんないっせいに飛び込むとそこはあの廃工場だった。


「その二人を治療シマス」


そう言うとリースは正一と刹那を治療し始めた。


しばらくすると治療を終えたリースがこっちに来て


「早くここから離れマショウ。敵がいるかもしれマセン」


「あぁ」


みんなを抱えて走ろうとした時隼人の背中におぶられている人物が目を覚ます。



「…ここは…」


「みのり!分かるか?俺だ!」


みのりは意識がはっきりすると黙って頷いた。


「良かった…」


「隼人も妹の前だとそんな風になっちゃうんだ」

花が含みのある笑みを浮かべながら横目でこっちを見ている。


「うっせぇよ!」


「……ごめんなさい…ごめんなさい…」


するとみのりが急に泣きながら謝ってきた。


「いや…みのりに怒ったわけじゃねーの」


「違うの…私は…私は…兄様を…」


俺はそっとみのりの頭を撫でた。


「気にしてねぇ」


「でも!」


「俺が気にしてねぇって言ってんだから気にしてねぇんだよ」


そう言うとみのりは唖然とした表情だったがすぐに笑顔が戻り俺の胸に飛び込んできた。


…全力で飛び込んで来たのだろう。


俺は廃工場の中まで吹っ飛んだ。


「あっ、ごめんなさい」

皆がそこで笑い出す。


この戦いは怪我人も出たけど死人は出ずに大切なものも取り返せた。


辛うじてだが護ることが出来たのではないだろうか?


完全に俺らの勝利だ。


「いてぇよ…みのり…」

「本当にごめんなさい!」


舌をペロッてだして謝る妹にこれ以上何も言えなかった。


ったくつくづく俺も甘いぜ。


みのりの元へ駆け寄る。

「じゃあ帰ろうぜ」


「あぁ」


「うん!」


こうやってまたあの場所に帰る。


その繰り返しだと思っていた。


その時みのりと俺がリースによって思い切り吹っ飛ばされる。



「ってえな!何すんだよ!」


と、リースの方を見るとリースの体はバラバラになっていた。


「リース!」


みのりがすごい勢いでそのバラバラとなったリースに駆け寄る。


「みのり様大丈夫デスカ?」


俺も急いで駆け寄ると


「みのり様幸せになってクダサイ……私みのり様を守って何か人間に戻れた気がした」


そう言うと今までずっと無表情だったリースの顔が笑顔になった。


「私普通の女の子に戻れたかな?」


そう言うと哀しいロボットはもう動かなかった。


「リース!リース!」


みのりは泣き崩れる。


「ちぇ、外しちゃった〜」


声がした方を見ると中性的な顔をして青い髪をしている青年がいた。


「みのりちゃんを殺そうとしたのになぁ〜」


ニヤリと見せたその笑顔を見た瞬間に俺の体からブワァと冷や汗が流れる。


こいつはやばいと俺の眼は知らせるが俺の体は固まってしまったように動かなかった。


「隼人!逃げろ!」


「は?」


「私が足止めをしておく」


氷華がその青年の前に立ちはだかる。


「お前そいつはやべぇってわかんねぇのかよ!」

「分かっている!」


氷華が振り向くと笑顔でこう続けた。


「だからそいつらを運び終わるための時間稼ぎだけだ。終わったら逃げるさ」


笑顔で話す氷華の足は震えていた。


「…分かった…すぐに帰ってこい!」


俺は泣き崩れているみのりの手を掴み、刹那をおぶると急いで走り出した。


「花!お前もだ!」


「…分かったよ…隼人も従ったんだもんね…」


花も続いて正一をおぶり走り出す。



「終わったかい?」


「待っててくれたとは意外だな?」


「もうあの子には興味ないもの。今は君にある」

「私?」


何故私に興味があるのか解せない氷華を見た青年は急に笑い出す。


「ククククク、知らないのか〜?じゃ教えてあげる。君は神に選ばれたんだよ」


「神…?」


「詳しい事を知りたかったら僕に勝ってからね」


青年が銃を構える。



黒光りした拳銃は一見普通の銃となんら変わりない。


しかし、銃が光だすのを見てあれがタダの銃では無い事を理解した。


そして青年が銃弾を放つ。


放たれた光弾は凄まじい威力を誇って氷華に迫る。

それを氷の盾で防ぎ、一気に距離を詰める。


相手が銃の使い手なら接近戦に持ち込むに限る。

放たれる数々の光弾を躱し懐に潜り込み刀を振るうが、光の剣のようなもので防がれてしまった。

「なんだ…それは…?」

魔力だったら普通具現化するのは有り得ない。


あの少年は別として。

ならば魔術?


しかし呪文を詠唱してる暇はなかった筈。


ならば…


「お前…特質能力者か?」


「そう、僕は観音寺家の人間さ。今はジャックって名乗っているけどね」

その言葉を聞いた瞬間氷華の全身が逆立つ。


「…貴様が観音寺家襲撃事件の手助けをしたのか?」


「当たり!僕が門を開けたんだよ」


その瞬間我を忘れてジャックと名乗る裏切り者に飛び掛かる。


「貴様のせいでおじさまやおばさまも死んだ!」

「熱くなるなよ」


必死に攻撃を繰り返す氷華だが、ジャックはそれら全てを捌ききっている。


「なんだ…つまんないなぁ」


銃口を氷華の体に向ける。


「バン!」


その瞬間氷華に強力な光弾が零距離で放たれてそれをまともに受けた氷華は勢いよく吹き飛んだ。

廃工場の中まで吹き飛ばされて砂煙で包まれる。

そして砂煙の中で黒い人影が立ち上がる。


「私とした事が我を忘れるとはな…おかげで目が覚めたぞ」


やがて砂煙が晴れて姿を現した氷華は氷を体に纏い、まるで氷の龍のようだった。







必死に走り下村家へと逃げ帰った隼人たちは正一と刹那を布団に寝かせていた。


「じゃ俺戻るわ」


そう言って戻ろうとする隼人を花は引き止めた。

「待って!行くなら私も!」


「テメェはこいつらを守ってやっててくれ」


特に刹那は無茶な力を使ったようだからなと付け足す隼人。


「ずるいよ…」


「わりぃな」


玄関に立つ隼人を見送る花に隼人は


「必ず連れて帰ってくる」


とだけ告げて走り去る。

(頼むぜ、間に合えよ!)







「へぇ、すごいね…」


ジャックも驚きを隠せないようだ。


「私はいつもあの少年に頼っていた。だから私は強くなろうと思った」




しっかりと握った刀は氷で長さが長くなり芸術品のように美しかった。


「これはそのために手に入れた力だ」


ジャックに突っ込んで行く氷華。


走った後の地面は凍り付いている。


空気中の水分が凍り付き始め翼が形成されていく。


ジャックは光弾を放ち応戦するが、その翼で防がれる。


斬りかかってきた氷華の刀を躱し光の剣で氷華を突き刺す。


「くっ!」


氷華の腹部を光の剣が貫通したのを見たジャックはニヤリと笑う。


しかし氷華の体が崩れていく。


「氷!?変わり身か!」

背後に気配を感じ振り向きながら前に跳ぶ。


目の前を刀がスレスレで通りジャックの頬にかする。


「外したか」


「危ないなぁ〜」


そして光弾を連射するがこの距離で全て躱されている。


「ヒュー、やるね」


その時ジャックの動きが止まった。


「……?…しまった!」

足が氷で凍り付いており動けなくなっていたのだ。


「終わりだ…」


辺りの気温が急激に下がり氷の花びらが舞い落ちる。


そして花が咲いていき、やがてジャックのまわりは氷の花で埋めつくされた。


「爆砕氷花」


この言葉と同時に花が爆発しジャックは大きな氷の塊の中で凍り付いた。


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