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第二十幕

俺らは急いで病院に向かった。


病室に駆け込む。


病室に入るとそこには泣いている父さんとみのりがいた。


「にい…さま…」


みのりが俺らの存在に気付いた。


その目には涙が浮かんでいた。


「兄様ぁー!!」


そして俺の胸に飛び込んで来た。


「母様が…母様がー!」

「わりぃ伽音頼む」


そういう伽音も今にも泣き出しそうだったがみのりを任せて俺は母さんのそばに近寄った。


「父さん……」


父さんは虚ろな目で空気を見ながら泣いていた。

「母さん…母さん…どうして…」


そうやって壊れたように呟いていた。


俺は母さんの顔を見た。

母さんの表情はいつもと変わらなかった。


今にも起き出しそうだった。


母さんは買い物を商店街でしていたらしい。


その時にイカれた通り魔に巻き込まれてナイフで刺された。


その犯人は警察に抵抗して射殺されたという話だ。


行き場のない怒りを俺は感じてた。















やがて母さんの葬儀が行われた。


父さんとみのりは終始泣きっ放しだった。


俺は何故だか涙が出なかった。


この二人の姿を見て俺だけはしっかりしなきゃと思ったからかもしれない。


親戚の人達からは頑張ってとか災難だったねとかと言われた。



やがて葬儀は終わった。


その夜家に伽音のお父さんがやってきた。




「お父さんはいるかい?」


その人は眼鏡をかけており優しそうな印象を受けた。


「あっ、はい」


俺は父さんの部屋へと連れていった。


父さんの部屋を開けようとした時


「何故だぁぁー!!」


父さんの叫び声が聞こえた。


「何故だ神よ!私達は一般人を守ってきたではないか!なんでその一般人に私の妻が殺されなきゃいけない!!」


その叫びは痛々しかった。


いつも冷静だった父さんは跡形もなく消えていた。


「人間なんていなくなればいいのか?分からない…もう皆死ねばいい!ははははははは!!!」


父さんは狂ったように笑い続けた。


伽音のお父さんは複雑な顔でみていた。


「……伽音はいるかい?」


「多分部屋に居ると思いますけど」


俺は部屋に連れて行き伽音のお父さんを置いて縁側に行き寝転んだ。


夜空には星が自分の存在を主張するかのように光っていた。


「…隼人…」


伽音が隣りに座っていた。


「一回帰って来いって言われた」


「おじさんに言われたのか?」


「…うん」


そりゃあそうだ。


あんなに狂っている男の家に大事な娘を置いておけないだろう。


そして俺はある事を考えていた。


「なぁみのりもそっちの家に居させてくれないか?」


「…なんでかな?」


「父さんを一人にしてやりたいんだ」


「でもいつまで?隼人も家に来るの?」


「いや…俺は行かない」

「じゃあ?」


「俺は一旦この街を出る」


「それって…」


「俺が帰ってくるまでみのりを頼む」


俺は九十度の角度で頭を下げる。


「……わかったよ。なるべく早く帰ってくるんだよ」




「あぁ悪い」


「あとね、私一つ聞きたい事があるの」


「なんだ?」


俺は頭を上げて伽音の顔を見る。


「……なんで泣かないの?」


「え?」


そして伽音の目から涙がこぼれた。


「私はおばさんが死んで悲しくていっぱい泣いたよ?みのりちゃんだっておじさんだって泣いてた。なのになんで泣かないの!?」


伽音の感情が爆発した。

「わかんねぇよ…。俺だってこんなに胸が張り裂けそうなぐらい悲しいのに…涙が…涙が出ないんだ…」


俺は自嘲気味に小さく笑った。


「そっか、隼人もやっぱり男の子なんだよね…」

何かに納得した伽音はいきなり俺に抱き付いてきた。


「な、何するんだよ!」

「いいんだよ」


「え?」


耳元で伽音の声がする。

伽音の吐息が耳にかかる度に伽音との距離の近さを感じた。


「男の子だって泣きたい時は泣いてもいいんだよ?泣く場所が無いって言うのなら私が場所になってあげるよ?」


俺のその言葉でつなぎ止めていた感情が溢れ出す。


「泣いても…いいのか?」


「うん…」


その言葉でついにこらえていた涙が溢れ出した。

「うわぁぁぁぁぁぁ」


誰に聞こえようが構わない。


大声で泣いた。


その光景を見ていたのは夜空に光る星達と伽音のお父さんだけだった。













「兄様…」


みのりは車の中で泣いていた。


翌日、みのりに事情を話し観音寺家に行く支度をさせた。


そして今みのりは観音寺の車に乗って出発する所だった。


「みのり、向こうで良い子にしてるんだぞ」


「うん、兄様」


そして俺は前に乗っている伽音とおじさんに挨拶をする。


「伽音、みのりを頼んだよ」


「うん、任せて」


「おじさんすいません。みのりを押し付けてしまって」


「いや、いいんだよ。それよりもいいのかい?君は」


おじさんは優しい笑顔で問い掛けてきた。


俺は笑顔で首を横にふった。


「そうか、それじゃあ頑張って」


車は静かに発進した。


俺は家の中に戻り自分の支度をした。


父さんに全ての事を話したが、ただ笑っているだけでまったく耳に入っていないようだった。


それから俺は家を出て街を出た。



俺は決めた。


全てを護もれる力をつけようと。


ここには大切な家族がいる。


唯一泣ける場所がある。

それを護るために旅をしよう。


俺はそれからいろいろな場所へ行き、様々な術師や魔獣と戦った。


時には死にかけた事もあった。


旅の道中で会った人の優しさにもふれた。


俺は旅をしてなるべくたくさんの人を護りたい。

そう思った。


いつしか俺は有名な賞金稼ぎになっていた。


















そして月日は流れて二年後。


隼人は十四歳だった。


俺は観音寺家のある街にきていた。


俺は旅を終えて家に帰ろうとしていた。


そのさいにみのりを連れて帰ろうと思ったからだ。


この街はいい街だとか思いながら観音寺家があるという山に着いた。


そして俺は登った。


山の空気はすごく澄んでいて、悪い事をする気にはまったくなれないだろうなと考えていた。


聖域と呼んでも間違いではないんじゃないか?


俺はひたすら登った。


その時右の林の方から殺気を感じた。


そして黒スーツの男が飛び出してきた。


手には刀を持っていて斬りかかってきた。


俺は刀て受け止めた。


「待て、俺は炎磨隼人っていう者です。観音寺伽音さんと許婚です!敵ではありません」


しかし攻撃を止めずに男は構わず斬りかかる。


仕方なく俺はみねで男を気絶させた。


俺は男をほっといて山を登った。


やがて屋敷が見えてくると異変に気付いた。


大きな門が開いており門番も居ないのだ。


俺は嫌な胸騒ぎがしたので全力で駆け登った。


そして屋敷の中に入るとそこは目を疑う光景が広がっていた。


辺り一面血と死体で溢れていた。


血のにおいが強くて吐き気がする。


俺は焦っていた。


「誰か生きている人はいませんかー?伽音ー!みのりー!」


そして俺はまだ生きてる人を見つけた。


その人は伽音のお父さんだった。


「大丈夫ですか!?」


お父さんは俺の姿を見ると笑った。


「君か…」


「伽音とみのりは?」


「伽音は私の仲間数人と逃げたよ。みのりちゃんは……連れて行かれた」

俺は頭の中が真っ白になった。


「みのりちゃんは第一研究所に連れて行かれた。……伽音…を…頼む」


そしておじさんは息を引き取った。


「くそっ!」


俺はみのりを助け出す前に伽音と合流しようと思い屋敷を出ようとした。

しかし門の前に最悪な人が立っていた。


「な、なんで…」


その人は不気味な笑みを浮かべていた。


「なんで父さんがここにいるんだよ!!?」


門の前に居たのは俺の父さんだった。

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