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第十六幕

目を覚ますとそこはいつもと同じ天井だった。


「俺は…」


「起きたか」


見ると氷華が扉の前で立っていた。


「たく、刹那が心配してたんだぞ」


そう言って俺のほうに指をさす。


俺の上にはかわいい寝息をたてている刹那がいた。


「…わりぃ」


なんで俺は生きてるんだ?


俺は想姉に殺される筈だったのに。



俺は何かの理由で生かされたのか?


「なんかいつも俺介抱されてばっかだな…」


ボソッと聞こえないように呟いたつもりだったが氷華に聞こえてしまったようで、


「なに、気にするな。お前らしくないぞ?何かあったのか?」


と言われてしまった。


まぁ確かに落ち込んではいた。


あの少女の格の違う実力に絶望していた。


「いや別になんにもねぇよ」


「嘘つくんじゃねぇよ」

その声の持ち主はいつの間にか部屋の壁にもたれかかっていた。


「立浪家となんかあったしょ?話せって」


「……なんもねぇよ。つーかなんだよ立浪家って…」


何故俺は知らないふりなどしたのだろう。


自分でも分からなかった。


「ちっ」


舌打ちをするとその声の持ち主の刃は部屋から出ていってしまった。


部屋に気まずい空気が流れる。


「あっ、正一が戦いの勝利を祝ってご馳走を作ってるんだ」


「そうか」


「動けるなら行くぞ」


「わかった」


俺らが食卓に向かうと机の上にはたくさんの料理が所狭しに並んでいた。

「おっ、やっと起きた〜」


「さぁ食べよう?」


辺りを見回すと刃の姿が見えなかった。


「なぁ刃は?」


「あぁ教団本部に帰ったよ」


「なに、それは本当か?」


隣りにいた氷華も驚いていた。


「うん、ベルセルクは忙しいんだよって帰っていったよ。聞いてなかったの?」


「うん、聞いてなかった」


「いいじゃねぇか。帰ったら帰ったで。早く食おうぜ」


「あぁそうだな」


俺らは勝利を祝していつものように騒がしい食事を過ごした。










それから俺は街を歩いていた。


何故かと言うと氷華に買い物に付き合わされていたからだ。


「めんどくせぇ」


「まぁそう言うな。帰りに何かおごってあげるからさ」


「ちっ、しゃあねーな」

まぁそんな感じで今氷華の服を買いにきている。

戦闘の時和服を着ているからずっと和服のイメージがあるけど普段は普通の格好をしている。


「なぁ、これなんかどうだ?」


「いいんじゃん」


「じゃあこれは?」


「いいんじゃん」


「お前……流してるだろ」


「なんでお前の服まで見立てないといけねぇんだよ!」


「いいじゃないか。そういうのも男の役目だ」


「……めんどくせぇ」


氷華はまたあれこれ見始めた。


まったく長い。


一時間は経っているぞ。

ったく、女の買い物ってなんでこんななげぇんだ。


アイツもそうだったし。

そうやって昔の事を思い出す。


黒髪の少女の事を。


「おい、大丈夫か?」


「は?」


「いや私の声も聞こえないし、調子が悪いのかと」


「なんでもねぇよ」


「そうかじゃあこれはどうだ?」


そうやって笑顔で聞いてくる。


こんな風に笑っている所を見るとこいつも年相応の女だなと思った。


「聞いてるか?」


「あ、あぁ。あっちのほうがいいんじゃね?」


適当に考えている振りして飾ってあった服を指差す。


それは白いワンピースの服だった。


「あれか…。私にはああゆうかわいい服は似合わないだがな……」


「そうか?」


「うーん……よし買ってみるか」


そう言うと結局全部さっきから似合うかどうか聞いていたものまで買っていた。










家に着くと氷華が、ちょっと待っていろと言って部屋に入っていった。


刹那はどこか散歩でもいったらしい。


あいつには放浪癖があるからな。


俺はぼーっとテレビを見ている。


「待たせたな」


俺は氷華のほうを見た時驚愕した。


「どうかな?……似合っているか?」


少し恥ずかしそうに顔を赤らめながら俺が選んだワンピースを着ていた。

「……やっぱ似合わないか」


氷華はお世辞抜きでかなりの美人だ。


だからどんな服でも着こなしてしまう。


俺が驚いているのはそんな所じゃなかった。


「なんで…?」


「え?」


「なんで…そんなに似てんだよ…」


「隼人?何を―」


俺は無意識に氷華を抱き締めていた。


「え!?ちょっ…おい…はや、隼人!?」


氷華の熟れたトマトのように真っ赤になっている。


「由衣……」


俺は呟いていた。


「え?……ゆ、い?」


氷華がプルプルと震えだした。


「誰と…」


「は?」


「誰と勘違いしてるんだ貴様はー!!!」


「ぐふっ!!」


顔面に思いっきり右ストレートを食らってしまった。


そして俺の意識は途絶えていく。










「ハァ、ハァったく、こいつは…」


抱き締められた時の事を思い出す。


そしてカッーと顔が赤くなる。


あんなふうに男の人に抱き締められたのは初めてだ。


あの時恥ずかしさの以外にもたくさんの感情が入り交じっていた。


そして隼人が口にした由衣という名前を聞いた途端に脱力感と怒りが込み上げてきた。


私は自分の部屋に戻りいつもの服に着替えた。


そしてリビングに戻って気絶している隼人を見ながら考えた。


由衣って人は誰だろう?

家族かな?


もしかしたら…恋人?


隼人の過去に何があったのかまったく知らない。

聞きたいが聞いたら今のような生活が崩れてしまうような気がして怖かった。


このままたとえ時計の針が止まったままだとしてもいいと私は思った。


その時家のインターホンがなった。


玄関にむかい出るとそこには私達と変わらない年頃の少女がいた。


「お話がありマス」


抑揚のない声で言ったその子の顔は刹那以上に無表情だった。










とりあえず私はリビングに通した。


お茶を用意して話を聞こうとする。


「で、話って?」


「あ、スイマセン。あなたじゃないデス」


「え?」


「私はこの人に話があるんデス」


そう言って指を指したのは気絶している隼人だった。


「なんだって?」


「隼人サンに話があるんデス」


「……こいつの知り合いか?」


「いえ、まったく知りません」


「じゃあ話って?」


「隼人サンが起きたら話しマス」


「わかった、ちょっと待ってろ」


私は隼人の側へ行き、優しく起こしてあげる。


「おい、起きろ」


しかしまったく起きる気配がない。


今度は強めに揺さぶる。

「おい、起きろ」


しかしまだ起きない。


今度は全力で揺さぶってみた。


「おい、起きろ」


ガクガクと首が揺れる。

「んが!!」


あっ起きた。


「なんかすげぇユラユラするんだけど」


「お前に客人だ」


「は?」


そしてお茶を飲んでいる少女を見ると誰だ?と首を傾けながら座る。


「あっ初めまして隼人サン」


「テメェ誰だ?」


誰に対してもぶっきらぼうな態度は相変わらずだ。


「私はリース。虚無によって改造されたサイボーグデス」


それを聞いた途端私も隼人も刀を構える。


「あっ大丈夫デス。私戦う気ありませんカラ」


「じゃあ何のようだ?」

「この街の三丁目四番地にある廃工場に来てください」


「あ?」


「ある人が呼んでいるのデス」


「誰だよ?」


「あなたの妹サンデス」

「は?」


止まったままの時間が動き始めた。

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