第十四幕
(ここは…どこだ?)
意識がまだ覚醒してない状態だったが、目を開けて見た天井が知らない天井だったので知らない場所だという事は分かった。
そして完全に目を覚まして辺りを見回す。
俺は普通のベットの上に寝かされていた。
ガチャっと扉が開く音がした。
俺は身構える。
姿を現したのは俺より同年代もしくは一つ二つ年上の少女だった。
髪は栗色で肩まで伸びていて綺麗な髪だった。
「あっ!起きたね」
ほんわかとした雰囲気で言われるとさっきまでの死闘が夢のようだった。
「びっくりしたよ〜。街の真ん中で倒れてるんだもん」
「あぁ、助けてくれてどうも」
俺は無愛想な挨拶をして立ち去ろうとする。
「ぐっ!」
しかし、腹に激痛が走り立ち上がる事が出来なかった。
「ダメだよ?すごい怪我だったんだから〜」
今お粥持って来てあげると言ってその少女は部屋を出て行った。
ベットにゴロンと寝転がって考える。
今は何日だろう。
戦争はどうなった?
分からない事だらけだった。
まぁいいや。
とりあえず傷を治そう。
あと一日もあれば治るだろう。
「は〜い。持ってきたよ」
少女はニコニコしながら持って来た。
「つーか食欲ねぇ」
「ダメだよ?食べなきゃ元気になれないよ?」
「食欲ねぇ」
「…は〜い、ア〜ン」
こいつは分かってないのか?
「わかったよ。自分で食うよ」
すると少女は涙目になってこっちを見てくる。
「私のア〜ンじゃあ食べれないのね…」
「いやそういう事じゃなくて」
「ぐすっ…」
「わかった。食べるから」
「は〜い、ア〜ン」
すぐにニコニコに戻りやがった。
確信犯か、ちくしょうめ。
「あっそうだ。私の名前言ってなかったね」
俺がお粥を食べているのをジッーと見ていた少女が唐突に言い出した。
「私の名前は立浪想。花の十八歳で〜す。男っぽい名前だけどよろしくね?隼人君」
「あ?なんで俺の名前…」
「私に知らない事はないんだよ」
まったく謎の存在だ。
「とりあえず食べたらまた寝とかなきゃダメだよ」
俺はお粥をいっきにかきこんで布団に潜った。
「あらあら。食欲旺盛だね」
空の器を片付けようと部屋を出る。
「……ごちそうさま」
隙間から見ると彼女は驚きの表情を一瞬浮かべたがすぐにいつもの笑顔に戻った。
「ふふっ。お粗末様でした」
ったく、俺のキャラ崩壊してんじゃねぇか。
とりあえず俺は再び寝る事にした。
私達は家に着くとすぐに刃に求めた。
「どういう…事…?」
「いや、生きてるってのは仮定の話で確率は低いってな感じなんだけど」
「早く…」
「…普通は有り得ねぇんだけど…とりあえずまず説明しなきゃいけねぇんだけど」
「男なら言いなさよ!」
花が我慢出来ずに叫びだす。
「調整者ってのは知ってっか?」
「なんだ?それは?」
「調整者ってのは教団にも属さず、虚無にも属さない組織なんだけど」
と、ここで刃は置いてあったお茶を飲む。
緊張感がないというか空気が読めない奴だな。
「んでそいつらは世界の均衡を保つのが目的で世界の均衡を崩すような危険要因を始末してるわけ」
「それが隼人君の行方とどう関係するんだい?」
正一は真剣な声だが、刃は相変わらず飄々としていて、まぁちょっと聞きやがれってとか言っている。
「これも…噂なんだけどさ。なんかこの街らへんにその調整者たちの中心となる名家が隠れているらしいんだよ」
「…だから…?」
刹那の殺気が溢れ出ている。
息をするのも痛いぐらいの殺気だ。
「その名家の能力がさっきみたいな重力を操る力を持ってんだよ。そんで隼人の中には悪魔龍デルトロの力があんだろ?だから捕まっているか、もしくは…」
そこで刃は言葉を濁らせる。
皆分かっている。
悪魔龍デルトロは太古の昔この大陸に現れ一つの大陸を滅ぼして世界を崩壊寸前まで追いやった慈煉魔だ。
そんなものがこの世にまた降臨したらこの世界は終わりだろう。
第一なんであいつの中にそんなものが眠ってるのか疑問だ。
「おい、その家の名は?」
「聞いてどうすんだ?」
「探す」
「無理だ!」
今まで飄々としていた態度が急変する。
「お前分かってんのか?今まで見つからなかった家だぜ?それにあの家の戦力は未知数だ。それに未知数でも俺ら手も足も出やしねぇ。それに噂じゃあ現当主は慈煉魔の高位種を超える力を持ってやがんだぞ!」
「探す」
「それにアイツはもう死んでかっもしんねーんだぞ!」
そこで場が静まり返る。
「…わりぃ」
刃は俯く。
「可能性はゼロじゃない。たとえ少しの可能性だって助けてやるのが仲間だろ?」
「………わーったよ。その家の名は――――」
目を覚ますと既にまわりは明るかった。
部屋にあった時計を見るとどうやら一日経っているようだ。
ガチャっと扉が開く。
「あっ、朝ご飯あるから来てね〜」
それだけ言って部屋を出ていった。
俺は部屋を出た。
この家はかなり広く廊下も五十メートルぐらいあるんではないか。
「こっちこっち」
部屋から顔をだして呼んでいる。
部屋に用意された朝食はよくある定番のものだった。
「なぁ立浪」
「想姉」
「…は?」
「想姉って呼んでほしいな」
「…いやだ」
「想姉」
「だから」
「ぐすっ」
「なぁ想姉」
「なぁーに?」
満面の笑みだよ。
まったく俺この人苦手だわ。
「俺そろそろ帰りてぇんだけど」
「だーめ。あと一日はいなさい。ちゃんと休まなきゃ。隼君なら明日には治るでしょ?」
「まぁそうだけど…」
「じゃあ話は終わり」
「……」
その後想姉が一方的に話して俺が適当に相づちをうつだけの朝食を過ごした。
俺は朝食の後部屋に戻っていた。
「怪我の様子見させてね〜?」
部屋に急に入ってきた想姉が俺の腹を見る。
「うん、もう大丈夫。傷も塞がっているし、明日には帰れるよ」
「つーかここ何処だよ?」
俺は現在地が何処なのか分からない事に気付いた。
「まだ街の中だよ?あっ、そうだ!ちょっとそばに川があるから魚を取ってきてくれないかな?」
「あ?んで俺が?」
「今日の晩ご飯だよ」
「めんどくせぇ」
「ぐすっ」
「行きゃあいいんだろ?行きゃあ」
俺はさっさと支度して川に向かった。
外に出るとそこは一面緑で木々がたくさん生えていた。
耳をすまして川のせせらぎを聞く。
(近いな)
歩くとすぐに川が見えた。
そして適当に川の魚を鷲掴みにする。
「アンタ立浪家の者かい?」
いきなり声が聞こえて後ろを振り向くと黒いスーツ姿の男が三人立っていた。
「なんだテメェら?」
「当主に会わせてくれ」
真ん中のボスっぽい奴が言う。
「当主?知ったこっちゃねぇな」
「兄貴!」
「あぁ、殺れ」
ゴツい男のほうがハンマーを構えた。
「ハッ、こいよ!!」
刀を構えて解の力を発動する。
解の力は全ての相手の行動に対して最善の行動を導かせる。
どう動こうとも対応出来る筈だった。
ただ見えなかった。
俺は吹き飛ばされ木々をへし折っていく。
「くそっ!!」
デケェくせになんて速さだ。
体勢を立て直して頭から流れた血を拭う。
「なんだぁ?立浪家ってのはこの程度か?」
「うっせぇよ!」
腹の傷が痛む。
俺は魔業を使った。
「なんだと?」
ボス格の男が驚きの声をあげる。
もう一人の男も驚いているようだ。
デケェ奴が動きだす。
しかし、今度は視えた。
俺はハンマーを刀で受け流し、一気に斬り込む。
だがそれを躱される。
そして蹴りが来るのが視えたので跳んでその足に乗り首を切り落とそうとする。
しかしハンマーで防がれた。
「なんだ。少しはやるじゃねえか。だけど今回はテメェと遊んでいる暇はねぇんだ」
「なんだと?」
眼前に刀が迫る。
「くっ!!」
もう一人の奴が斬りかかってきやがった。
バランスを崩した所にデカッチョがハンマーで追撃をしてきた。
やべぇ、躱せねぇ。
とっさに危険を感じ目を閉じてしまった。
しかしいっこうにハンマーが降り下ろされる気配が無い。
恐る恐る目を開けるとそこには片手でハンマーを止めている想姉がいた。
その家の名は――――――――立浪。




