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第十二幕

「此所でいいだろう」


アヌビスが止まる。


「ハッ、こないだみたいになりてえのか?」


「今の我には勝てぬぞ」

「言ってろ。さっさと終わらせてやるよ」


そして隼人が黒い魔力で包まれる。


「ほう、もう『魔業』を使うか」


「あ?魔業?」


「貴様のその力の事だ。それを『魔業』と言う」

ふーん。


知らなかった。


「だから?」


名前を知ったところで強さが変わる訳ではない。

だからどうでもいい事だ。


「貴様の魔業に我は勝てぬ」


「負けを認めてさっさと死ぬってか?」


「貴様が悪魔龍の力を借りているなら我は邪神の力を借りるまで」


「……まさかテメェ!」

「力を貸したまえ、邪神アヌビス」


その瞬間アヌビスの目が開き、光に包まれる。


「くそっ…野郎!」


そして光が収まった所に立っていた奴の姿は変わっていなかった。


開かれた目以外は。


「なんだぁ?何も変わってねぇじゃねぇか」


「久しいの。現世に降りるのは何千年ぶりだ?」

そしてこちらを見ると殺気が俺の体を貫いた。


「貴様が敵か?」


まるで喉元に剣を突き付けられているような殺気。


ふとアヌビスが視界から消えた。


次の瞬間俺はビルに叩き付けられていた。


「くそっ、油断した」


油断というより気圧されていたという事を自分で気付いていないふりをしていた。


「テメェがいくらあのアヌビスでもその体は人間だ。限界があんだろ?」

「いかにも」


その言葉を聞いた途端俺は飛び出した。


アヌビスに刀を振り下ろす。


しかし、躱され今度はアヌビスの剣が眼前に迫る。


間一髪顔をずらして躱したが、頬を抉られた。


そして腹に激痛が走ったかと思ったら俺の体は宙に浮いていた。


どうやら腹を蹴られたらしい。


上空に吹き飛ばされた俺は手をかざし光弾を放つ。


それを剣で防がれる。


しかし、その隙に懐に潜り込み刀を振る。


躱されはしたが、肩口を斬りつけた。


そして両者一旦距離をとる。


「ほう、やるではないか」


「そりゃどうも」


そしてまた距離を詰める。


金属音が鳴り響く。


刀と剣のぶつかりあいが続く。


お互い手を休める事なく斬り続ける。


そしてお互い傷が増えていき血の量も増えていく。


この時点ではほぼ互角だった。


しかし、


「飽きたの」


その言葉から実力の均衡は崩れた。


ズシャという音ともに右肩を斬られる。


「あ?」


今…見えなかった?


気が付くと右肩だけではなく何か所も斬られていた。


そして剣が俺の腹部を貫通している事に気付いた。


「ぐぁぁぁぁぁぁ!」


アヌビスは剣をそのまま右に振り抜く。


パックリと割れた腹部からおびただしいほどの血が流れ出す。


魔業の状態は回復スピードがとてつもなく早いがこの傷が治るのには時間が必要だった。


アヌビスの蹴りを顔面にくらいまたもやビルに叩き付けられる。


今度はビルが崩れてきた。


(やべえ…これは)


そしてビルの瓦礫たちは隼人に降り注いだ。












氷華たちは休息を取っていた。


すぐにでも隼人の元へ行きたかったが今のままでは足手まといだ。


しっかりと休息をして傷も癒せるだけ癒して行かないとあっという間に殺されるだろう。


今正一が休み休み刹那達を治療している。


私は怪我こそしていなかったがさっきので魔力がほとんど残っていなかった。


「大丈夫かな?隼人は?」


花も意識を取り戻して治療を受けている。


ちなみに刹那は意識が戻らないとかじゃなく寝ている。


「大丈夫だ。信じよう」

「そうだね、信じよう」

正一も花の治療をしながら呟く。


その時後ろに大きな魔力があるのに気付いた。


「!?」


振り向くとそこにはさっき倒した慈煉魔と同じ姿をした慈煉魔が二体いた。


「…そ…んな…」


花は唖然としている。


私達の脳裏に浮かんだ絶望、死という言葉。


「まだ…なにか…いる…」


刹那も目を覚ましていた。


確かに後ろになにかいた。


それも前の二体と比べ物にならない魔力の大きさ。


現われたのはさっきの慈煉魔の三分の一ほどの大きさの一つ目の巨人だった。


「サイクロプス…」


正一が目を見開きながら呟く。


そして続ける。


「さっき倒した慈煉魔の名前は『赦童』(シャドウ)数が多くていわゆる慈煉魔の中でも雑兵って奴」


「あれが…雑兵だって?」


さっき倒した化物が雑兵とは信じられなかった。

「それに対して本当の慈煉魔は名のある魔獣つまり妖怪が力をつけたものなんだよ。あのサイクロプスみたいにね」


「ってことはあれは化物の中の化物って事?」


「そういう事だね。でもサイクロプスは魔獣の中でもランクは下のほうだけどね」


「まずいぞ、今の私達では勝てる筈がない」


「逃げたほうがいいね」

私達は走り出した。


赦童は動きが遅く追いつけないと読んだからだ。

しかし、私達の目の前に一つ目の巨人が立っていた。


「嘘…でしょ…?この巨体で私達より…速いなんて…」


花は恐怖により地面に座ってしまった。


後ろから魔力の高まりを感じる。


そして光が放たれた。


目をつぶる。


しかし、何も起きなかった。


目を開けるとそこには、

「助っ人登場〜ってか?」


ベルセルクNo.9赤戌刃が立っていた。


「赤戌、お前」


「ギリギリセーフじゃね?」


相変わらず緊張感がない奴だった。


「これで勝機が見えたよ。みんなで戦おう」


「いやいいっすよ。アンタらは休んでな」


「でも」


「いいって」


「任せよう」


「氷華ちゃん?」


「あいつはベルセルクだ。大丈夫って言ってるんだ。大丈夫だろう」


「…うん。そうだね」


私達は少しそこから離れた。


「さーてと、まぁ本気出さなきゃちょいやべーかな?」


そして刃の体が炎に包まれた。


「オオオオ!!」


サイクロプスが叫ぶと赦童から触角が幾つも伸びる。


刃は双剣を抜いた。


そして一振りすると触角が全て燃え尽きた。

「この程度で俺を殺れると思ってんの?」


その時背後にサイクロプスがいる事に気付く。


サイクロプスは持っていた太い棍棒で刃を殴り付ける。


刃は双剣で防ぐも吹き飛ばされる。


すると後ろにいる赦童の触手から光が放たれる。

「ちっ!」


ズドーンという爆発音が響く。


「面倒くせえヤローだな」


煙から姿を現した所をサイクロプスが追撃する。

それを後ろに跳んで躱し距離を取る。


「ちっ、一体ずつなら楽勝なのによ。ホントめんでぇな」


しかし、愚痴を言う暇もなかった。


「オオオオオオオオ!!」


サイクロプスが再び叫びだす。


赦童たちの口が光だす。

「牙砲か!」


牙砲と呼ばれた光が放たれる。


街の建物が跡形もなく消し飛ぶ。


だが、刃には通用しなかった。


炎で身を守っていた。


「テメェら。いい加減うぜぇわ」


次の瞬間刃は赦童の頭の上にいた。


「燃やし尽くせ。俺の焔ちゃん」


そう言うと赦童の一体が燃えだす。


もう一体の赦童が刃に向かって触手を伸ばす。


しかし、触手ごと体を一刀両断されてしまった。

その傷口には焔が燃えていた。


「オオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」


燃えていた赦童が雄叫びをあげる。


「なっかなかしぶてぇな」


より一層焔が燃え上がると赦童は灰と化した。


「あとはテメェだけだぜぇ」


サイクロプスを見るとさっきの赦童を食べている。


「共食いって訳か」


「オオオオオオオオ!!」


サイクロプスがまた叫びだす。


そして飛び掛かってきた。


頭から棍棒を振るう。


双剣で受け止めた。


だが、そのパワーはとてつもなく地面に足がめり込み始めた。


その瞬間サイクロプスが燃え始めた。


「最大出力だ。お前が俺を潰すか、俺がお前を灰にするか勝負っつーわけ」


サイクロプスの一つ目が刃を睨む。


するとサイクロプスが口を開ける。


そして光だした。


「おいまさかテメェも!?」


そして光は放たれた。


「オオオオオオオオオオオオ!!」


しかしサイクロプスは焔に耐えきれずに燃え尽きた。


「赤戌!」


私達は未だ煙に隠れている刃の元へ駆け付ける。

「大丈夫か?おい!」


「いてぇっつーの。あの距離で牙砲を撃つなよな」


大丈夫ではないだろうが刃は生きていた。


「後は隼人…お前に任せたぞ」


私達はそこでまた休息を取る事にした。

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