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第十一幕

家の外に出ると一層大きな魔力を感じた。



空を見上げるとおびただしいほどの魔が地上に降りて来ていた。


「僕らの目的は一つ」


年長者の正一がリーダーとなり俺らをしきる。


「人間同士の戦争なら大将を落とせば戦争は終わる。だけど魔との戦争は違う全てを滅っさなければいけない」


「だが大将を落とせば統制が崩れ、勝率が上がる」


氷華が続ける。


「あっ…僕のセリフ」


「いちいち小さい事に反応するな。だから私達は大将と思われるアヌビスを倒す。それが目的だ」

「ほう…」


背後から声がした。


皆が振り返るとそこに俺らの目標がいた。


「我を倒すとな。面白い。さあ我の方から来てやったぞ」


余裕を見せつける態度が癪に触った。


「大将さんのお出ましか。テメェだけで俺らに勝てると思ってんのか?」

「うむ…確かに我だけでは流石に無理であろう。しかし我だけでないとしたら?」


「何?」


「後ろに何かいる!!」

花が指差しながら叫ぶ。

後ろには巨大な黒い亡霊のようなものが立っていた。


その身の丈はまわりのビルと肩を並べ、手足と呼べるものもなく、顔に付いている仮面らしいものが恐怖を一層あおる。


これが慈煉魔。


「炎磨、場所を変えるぞ。我と一対一で戦おうではないか」


「隼人!そいつの言う通りにしてはいけない」


氷華が俺を止めるが俺はもう決めていた。


こいつは俺が一人で倒す。


「おい、行くぞ」


「着いて来い」


俺がアヌビスに付いて行こうとすると


「待て!」


「氷華…後は頼む」


俺はアヌビスの後を追った。













「くそ、あの馬鹿め。罠かも知れないのに」


「氷華ちゃん、そんなこと言ってる暇ないよ」


「く…る…」


刹那が呟く。


慈煉魔の体に突起が幾つも現れ、それが伸びて襲いかかる。


それを躱し、花が後ろに回り込み槍で突き刺す。

しかしその刃は突き刺さらず、先ほど伸びてきた触手のようなものにたたき落とされる。

「きゃああ!」


花がたたき落とされた触手の上に刹那が立っていた。


そして死神の目で視る。

死の点を見つけそこに鎌を振るう。


しかし、傷一つつかない。


「くっ…」


その瞬間触手が刹那を叩き落とす。


私は氷の波を放つ。


同時に正一が盾の槍を放つ。


お互いたたき落とされた二人の身が心配だったが他人の心配をして攻撃の手をやめてしまったら私達が死ぬ。


だから信じて攻撃をした。


しかしその攻撃も無意味だった。


こいつを倒すには一つしかない。


「花!刹那!大丈夫か!?」


「いった〜。大丈夫大丈夫」


「ん…」


二人とも大きな怪我はしてないようだ。


「皆聞いてくれ」


私は皆に話しかける。


「こいつを倒すのに時間がいる。時間を稼いでくれないか?」


「どのくらいだい?」


側にいた正一が聞いてきた。


「五分…五分あれば間に合わせる」


「分かったわ」


「……りょ…うかい…」

花と刹那も了解してくれた。


私は返事を聞くと少し離れたビルの屋上へ向かった。


「さて五分もたすわよ〜」


「…ん…」


「了解」



花は後方から、刹那は前方から飛び掛かる。


正一は援護を担当。


花はお得意のスピードで慈煉魔を翻弄する。


刹那もスピードを上げる。


この巨体だからパワーはあってもスピードがないと判断したからだ。


しかし、確かに本体のスピードは鈍いが触手のスピードは花たちにしっかり付いてきていた。


「化物ね…」


必死に触手を防ぐ。


しかし、刹那の隙をついて背後から触手が伸びる。


「…しまっ…!」


その時間一髪正一の盾が刹那を守った。


「大丈夫かい?」


「あり…がとう…」


「どう致しまして。しかしあの触手は邪魔だね」

そう言うと正一は手を前にかざす。


「捕らえろ」


次の瞬間鎖が地面から飛び出し慈煉魔の触手や体に巻き付き身動きを封じる。


「まだだよ」


盾が六重になって慈煉魔のまわりに張られる。


「こんな事もできたんだ?」


花が二人の元へと戻ってきた。


「まあね。一応援護系の術は得意だからね。でもこれは時間稼ぎ。長くはもたないけど、氷華ちゃんの準備までは―」


もつよ。と言いかけた所で魔力の高まりを感じる。


見ると慈煉魔の口あたりが光っていた。


そして街が大きな光に包まれた。



大きな爆発音とともに街の建物が破壊されていく。


その威力は絶大。


直線状の建物が瓦礫と化した。


防がれた部分を除けば。

「ハァ、ハァ、みんな大丈夫かい?」


正一はとっさに十枚の盾を張った。


しかしそれは残り一枚まで消し飛ばした。


その一枚だってひび割れてギリギリだ。


つまり奴はまわりに張ってあった六重の盾も含めて計十五枚もの盾を消し飛ばした。


「うん、大丈夫。正一は?」


「僕も…大丈夫…だよ」

正直とっさにあれだけの枚数の盾を張ったから魔力の消耗は激しかった。

だけどまだ戦える。


慈煉魔の触角が引っ込み始める。


何だ?


次は何をするんだ?


黒い球が慈煉魔の体からたくさん現われる。


そして僕らのまわりを囲む。


「…やば…い…」


球体が光始める。


「我らと外を隔てる壁となれ!!」


とっさに呪文を唱える。

「みんな僕のまわりに!」


刹那と花が側に来る。


「半球鉄壁!!」


ドーム型の鋼鉄の壁がまわりを囲む。


その瞬間幾つもの光が包み込む。


何度も何度も光弾が壁を襲う。


中は真っ暗なので外の様子が分からない。


轟音だけが響く。


(くそ…もうもたない…)


壁に亀裂が入り光が入り込む。


ふと音が止んだ。


そして魔力の高まりを感じる。


それもさっきと比べ物にならないくらい。


「まずい!!」


轟音とともに光に包まれる。


ドゴーンと音が響き、煙に包まれる。


やがて煙が晴れると三人とも瓦礫の中で倒れてあた。


「くそっ…」


頭から血が流れる。


体中がいたい。


あの時刹那が攻撃の死の点を視て、威力を殺したおかげで助かった。


しかし殺しきれはしなかった。


だから、辛うじて生き残った。


だが、動ける状態じゃない。


筈だった。


花が立ち上がった。


そして慈煉魔にたった一人で挑んだ。


しかしやはりダメージが大きいのだろう。


スピードのキレがなかった。


触手にはたき落とされながらも必死に立ち上がる。


「やめるんだ…」


しかし意識がもうないのか耳に届いていなかった。


雨が降り始めた。


ザーザーと叩き付けるような豪雨。


そのおかげでさらに声は届かない。


触手が花に伸びる。


「やめろー!」


その時触手が凍り付いた。


「すまない。遅くなった」


そこに現れたのは僕らの思いを背負った少女だった。



「よくも皆を…!」


みんなをこんなにしたこいつを許せなかった。


花の元へと駆け寄る。


花は立ったまま気を失っている。


「ゴメン…花」


正一たちの元へ運ぶ。


そして氷の結界で囲む。

そして眼前の敵を睨み付ける。


「勝算は…あるのかい?」


「準備は調った」


「…頼んだよ…」


そして目の前に立つ。


「この攻撃は威力は強いが時間がかかるのが欠点でな。この攻撃は第二段階に分かれる。準備はその最初の段階だ」


そして刀を天に向ける。

「氷雨」


呟くと雨の勢いが強くなる。


「第一段階はこの雨を降らすもの」


水が集まり幾つもの柱が出来る。


「そしてこれが第二段階だ」


柱が慈煉魔に集まる。


「死ね、氷結柱」


柱が一つになり、天まで伸び、凍り付く。


「終わりだ。慈煉魔」


慈煉魔は氷に閉じ込められ停止した。

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