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第十幕

下村家に着くと客人が居る事に気付いた。


玄関に見知らぬ靴があったからだ。


するとリビングから氷華が出てきた。


「おっ、帰ったか。今ベルセルクの者が来ている。遅いからお前の事を迎えに行くところだったぞ」


「ずいぶん早くねぇか?連絡したのは今日の昼間だろ?偽者じゃねーの?」


普通応援を要請したら一週間は最低でもかかる。


ましてやその日のうちとは普通有り得ねぇ。


「何でも暇だったらしいからだそうだ」


怪しい。


怪しすぎる。


俺はリビングに入った。

そしてその怪しい人物を見るとそこには、


「よーひっさしぶり」


飄々としている昔馴染の顔がいた。


「は…?刃!?」

いきなり知り合いに会って動揺する俺。

「なんでお前が?」



「俺一応ベルセルクNo.9だからよ〜」


そうか、まぁこいつも十大貴族の一人だからな。

赤戌刃あかいぬじん

赤戌家の現当主。


先代の当主の刃の父を倒して当主の座についた。

いわゆる天才だ。


「刃君、ちょっと聞きたい事があるんだけど?」

正一が俺の飯を持って来て言った。


「いいっすよ。なんすかー?」


「戦力はどのくらいくるんだい?」


俺も夕飯を食べながら聞いている事にした。


あ?


なんで飯がなくなってんだ?


まわりを見渡すと刹那の口がモグモグと動いている。


そして刹那と夕飯をかけて闘う事にした。


「うーん、ぶっちゃけあんま強い人来ないっす」

「どのくらいだい?」


「ベルセルクは多分俺だけだし、騎士団は副隊長レベルぐらいっすね。あっでも数はけっこー来るっすよ。まぁ教団側が今回虚無の様子見だろうって判断なさりやがったみてーっすね」


「大丈夫なのかよ?」


すっかり半分以上夕飯を食われた俺は会話に参加する事にした。

「まぁ大丈夫しょ?俺もいるし。アイツらが沢山来なきゃ」


「アイツ…ら…?」


刹那が俺の飯を全て食べ尽くし、首を傾けた。


「なんだ。嬢ちゃんは知らねーの?」


「あぁ」


「ふーん。嬢ちゃん

「アイツら」っつーのは慈煉魔ジレンマの事だ」

「…じ…れん…ま…?」

ますます首を傾け、クエスチョンマークが頭上にたくさん見えた。


「慈煉魔っつーのは魔獣の上級種みたいな感じ。まぁアイツら一体だけでも街一つ三十分で滅ぼせる力を持っている。」


「…!」


刹那が驚いていると思うが普段から無表情だから分かりにくい。


「まぁ今回はそんな来ねーっつう判断だから何とかなるっしょ」



皆そこのベルセルクの少年に一抹の不安を抱いているだろう。


まぁ一応名家だし実力は申し分ないだろう。


…もう寝よう。


空腹が忘れられるようにもう寝よう。


そして立ち上がると


「もう寝るのか?」


刃がお茶をすすりながら聞いてきた。


「あぁ」


「そうか。じゃあ俺も帰るか」


「もう帰るのか?」


氷華がまだ質問し足りないみたいな顔で聞いている。


「まぁあんま遅くなっちゃうと悪いしね。あっこいつちょい借りるから」

と俺の事を指差す。


「……は?」


「あぁ構わないぞ」


「サンクス。じゃあ行くぞ」


「おいちょっと待て。俺はもう寝る」


嫌がる俺を見て刃は俺の耳元でボソッと呟いた。

「久しぶりの再会だ。ラーメン屋でも行って少し話さねぇ?もちろん俺のおごり―」


「さっさと行くぞ」


俺は玄関に直行した。


ちょうどいい、腹が減ってたところだ。


「おー。ちょい待て。じゃあおじゃま」


奇妙な挨拶をすますと俺の元へ来てラーメン屋に向かった。


「流石幼馴染みだな。操作がうまい。見習わなければ」


変な誓いをたてている氷華がいた。






とある見た目はボロボロのラーメン屋に入った俺達。


こんな所のラーメンが旨いのか?


ずっと疑惑を抱いていたが、来たラーメンは絶品だった。


「なんでお前この街に来たばっかなのにこんな店知ってんだよ?」


「昔この街に来た時に見つけた」


ズルズルとラーメンをすする昔馴染。


「で、話って?」


「いや久しぶりに会ったから話したかった感じ」

「嘘だろ」


「………」


「言いたい事があるからだろ?」


「しゃあねーな。バレたちまったか」


「で?」


「お前は今炎磨家の当主だろ?」


「…一応な」


炎磨家は俺一人しかいない。


だから一応そうなるだろう。


「お前十大貴族の秘密を知ってっか?」


彼の表情が真剣になる。

「秘密…?」


「やっぱ知らねぇーか。じゃあ教えてやるよ。なんで十大貴族がかけても補充されないか」


そうだ。


十大貴族は観音寺家がかけてる状態。


補充しようと思えば十大貴族の下のランクの名門を昇格させればいい。


それをしない理由はいくつかある。


一つは十大貴族を名乗るほどの家がないか。


それの納得がいく。


しかし、客観的に見て十大貴族に並ぶ家もいくつかある筈だ。


つまりここに一つの仮説が生まれる。


「実力がある家が選ばれての十大貴族ではなくて俺らだからこその十大貴族って事か?」


「そーゆうこと。本当は昔は名門十二家と呼ばれていた」


「十二?」


「そう。彼らの家の名には干支の名が入っていた」


「あ?俺には入ってねぇけど?」


「そうなんだけど…なんか面倒になってきたわ」

「言え」


「……時を経ていくつかの家は名を変えてしまった。お前の家はまだ名残があるじゃん。猿ってかいて猿魔ってな」


「ふーん」


「ちなみに下村は根津だ」


「ネズミか」


「そーゆこと」


「そんな昔話をしてどうしろと?」


正直その話を聞いてだからどうした?みたいな感じだ。


「まぁ待て。話を聞きなさいな」


なんだまだ続きがあるのか?


「そして時を経て滅ぶ家も出てきた。だが補充はされなかった。それは俺ら名門十二家の一族はみんな特殊な能力をもっていたからだ」



「能力?」


「例えば根津、今は下村か。下村は『雹』(ひょう)の力、赤戌は『焔』(えん)の力みたいな」

「俺はそんなもんもってないぜ?」


「今回言いたい事はそれだ」


これを言うためにわざわざ遠回りして昔話をしたわけか。


「お前は目覚めてないだけだ」


「つまりいずれ使えるようになるのか?」


「多分、まぁ俺もあんま詳しくは知らねーけど。炎磨家は『解』(かい)の力をもっているらしい」


「『解』?」


「だから詳しい事は知らねーっての。だけど聞いた話じゃ何かきっかけがあって初めて覚醒するらしいよ」


解の力……か。


「まぁ一月頑張って」


そう言うとアイツは店を出てった。


支払いを忘れて。




そしてあっという間に一月が経った。


結局俺は解の力とやらに目覚めなかった。


「何時来るか分からないから用心しとけってさ」

電話を持ちながら氷華が言う。


相手は大方刃だろう。


「街の人間も皆避難させたから大丈夫だって」


「ふーん」


俺らや魔獣の存在は表の世界でも知られている。

だから戦場になる街では避難してもらっている。

電話を終えた氷華がこっちにやってきた。


リビングには俺や刹那はもちろん正一や花もいる。


今回の戦争は基本この五人一組で動くらしい。


めんどくせぇ。


「おい、皆聞いてくれ」

氷華が真剣な面持ちで言ってきた。


「みんな、死ぬな。死の危険を感じたら逃げろ」

「分かったよ」


正一が微笑む。


「当たり前でしょ?こんなんで死ねないって」


花も決意を固めるように言った。


そして俺は遠くで違和感を感じた。


「来たぜ」


その瞬間街の空に切れ目が入った。


そして魔の軍勢が空間を破って姿を現した。

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