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空海と筆 〜真言宗始まってました〜  作者: moca


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番外編その⑨

番外編その⑨

答え合わせ 真実の一端


全ては皇家の為に



【嵯峨内裏】


よく 自分が楽をするために弟に皇位を譲った などと言われることがある が

楽をするためならば上皇などにならずに隠居してるわっ


朕が何故空海を酷使してまで弟に皇位を押し付けたか

これは今後のための前例作りだと何故わからんのか


いかに混乱なく皇位を譲り いかに混乱なく 皇位を戻すのか

そのための前例でありそのための今回なのだ


まあ 確かに 空海を酷使している という 話は アレだ 

酷使という言葉はね うそつきの言葉なんです

酷使=出来ない量の仕事を押し付ける であって

出来てるんだから酷使じゃないだろ? ヨシッ


まあその法印も入定した 悲しいな 

大徳も法印もいなくなってこれからどうなっていくのか

朕の時代にあ奴らが居てくれた それこそが朕の強みよな

本当に ありがとう


皇家のこれからを考えると頭が痛い

やはり人は愚かだ 法印がおれば………


とりあえず いつでも粛清できるようにリストは作っておくか

一度許したが やはり あやつらも だな 平城の………な


まあ、そろそろ朕も空海の所……いや、あやつはどこ行ったんだろな?

朕はまだ死なんぞ? まだまだやることが山積みじゃ。

まだだ まだおわらんよ


よし 弟(社畜)と話すとするか



【淳和天皇】


上皇となった兄からの申し送り事項──いや、これはもう御諚と言っても差し支えないか。


もともと 兄の代わりに皇位に就いて仕事をこなし

正良親王が成人するまでは皇位を預かる事だったのだが

10年もかかった。

当時仁明は13歳。2~3年程度だと思ってたのに……兄のバカ野郎がっ  いやまじで


そもそもな、これ いうてはならんけれど 

俺と兄、同じ年!!!

兄が年齢でどうのこうのいっても、俺もその年なのっ

なんていう無茶ぶりっ


まあ ちょっと冷静になろう。


今はもう仁明天皇陛下だ。

あの方を後見して助けになれば……というか

兄まだ現役でやってるよね?

なにが体つらいの だよ

今でも陛下より影響力もってるじゃんっ


冷静に 冷静に ………


そもそもだ、この申し送り? 申し送りなのか?

いやこれ、御諚だろ……死ぬ前に言うやつみたいな重さなんだよ……


ま、まあいい。で、この策とやらだ。


優しさだけではダメだとかさ、いい事言ってる風にいってるけどさ

仁明にやらせろよっ!!

もう我皇位ないんだよっ!!


絶対 黒い事やらせて 息子っぴに嫌われたくない(キラッ)とかだろ!

なんなんだよアレはさーーー(魂の叫び)


しかも さらっと 俺の息子も粛清リスト入りだしさああああ



【策の全貌解説】


① 現皇家に逆らう意思のある者達がいる

② その中には兄が即位した頃の平城上皇一派も

③ さらに我の息子・恒貞も巻き込まれる


事の発端は兄が我に即位を強制的にさせたことから始まる。


① 我が即位する

② 妻は兄の娘の正子内親王

(※いろいろとマテ まっておねがい?空海こころのつっこみ)


※補足:正子内親王は兄(嵯峨)の娘であり、仁明の叔母にあたる。

つまり、我(淳和)と仁明の“世代が逆転している”という地獄の構図。


③ 皇位は後に仁明(兄の息子)に返すとの約束

④ しかし元服後との話だったが、兄が思ったより長く影響力を持つ

⑤ 仁明の即位を「まだはやい」と止められ続ける

⑥ 藤原式家(真夏)が孫(我と正子の息子)こそ次代の、と野心を持つ

⑦ 兄(教皇SAGA)の側近は藤原北家(ここ大事)

⑧ 兄は藤原家の分裂をよく思っていない


 ・南家 → 薬子の変の首謀者の一族。弱体化。兄の中で“敵ではないが敵”

 ・京家 → お前の席ねーから状態。影すらない

 ・式家 → 真夏(影響力大)が野心もでかい


つまり兄は藤原を北家に統合させようとしている。


ここで問題になるのが

嵯峨(兄)→我(淳和)→仁明(兄の息子)→恒貞(我の息子)

という継承順位を兄が公式に出してしまったことだ。


兄の中では、我から我の息子ではなく兄の息子に戻すこと──

これがその時の返礼のつもりなのかもしれない。


だがここで大問題がある。


恒貞の妻・順子である。

いや、妻はいい。あれはイイ娘だ。問題ない。


が、親が真夏である。

そう、真夏なのである。

あの野心家である。


つまり何が起こるのかというと

息子の恒貞が継いだ後に、真夏が権力を握る。

皇家が圧迫される。


これを兄は嫌っている。

いや、ものすごく嫌っている。


そして兄の藤原家再編構想に真夏は入っていない。


※恒貞の妻は順子──藤原真夏の娘だ。

※つまり恒貞が天皇になれば、式家が外戚として復活する。

※兄(嵯峨)が最も嫌った未来である。


兄SAGAの頭の中には後継ルート設計がある。


兄(嵯峨)

→ 弟(淳和)

→ 仁明(兄の息子)

→ 恒貞(俺の息子)

→ 兄の息子の息子(嵯峨ライン)


未熟な天皇による政治的空白を無くすための構造。

自分が上皇に就いているのもその一環。


だが問題は真夏である。


自分(嵯峨)が亡き後、この設計図に真夏が納得するのか?

自分を中心に動くのではないか?


そして最大の問題。


兄は藤原家を北家中心に改変させるつもりである。

すなわち真夏は恒貞の時に“動かなければならない”。


恒貞が仁明の後に天皇になったとき

北家をどうにかしないと自分が潰されると分かっている。


なぜなら兄の構想だと

恒貞の次は仁明の息子──北家・冬嗣の娘の子。

つまり北家が外戚になる。


自分が外戚になったらやると思うことを

敵対している相手が自分にしない訳がない。

これぞ犯罪証明。


だから潰す。


まだ真夏は何もしていないのに。

そうするから、いや違う、そう“出来る”から潰す。


真夏は動いたから潰されたのではない。

“そこにいたから”潰されるのだ。

何かしても 何もしなくても これが現実だ。


偏に皇族の為。

ここで真夏をフリーハンドにさせると

皇家の後継問題を外圧で動かせた“外戚による後継指定”の前例になる。

兄はそれを恐れた。


しかし真夏を潰したところで

真夏が北家の者に代わるだけではないのか?

それをどう考えているのか……これがわからない。


だが決まったこと。

決まってしまった事ならば、やらねばならぬ、か。


そして強い一つの藤原家を皇族の支援に回せば

政権運営はより強く早く安定する。


やはり何をおいても皇族の安定化。

これが兄の考えの中心なのだな。



【橘逸勢】のこと


そのための生贄が

藤原北家以外の藤原家であり

平城の残り香のあの方であり

あの方と近しい政治勢力であり

あの方と近しい藤原家(式家)である。


そしてそこに橘逸勢が入る。


SAGA的危険ポイント:


・文化人・教養人で名声もあり温和な人柄で人脈も多い

・藤原式家の政治圏内の人物

・名門・橘家の人間

・出世したのが平城のあの方の時代であり、あの方と近しい

・藤原真夏と親しい間柄

・恒貞が即位したら外戚となった真夏と一緒に恒貞の側近候補


マイナス500点(配点自由)

はやなりくん アウトー である。


問題は、橘逸勢がそういう人間であることより

“状況でそうなる可能性がある”ことなのだ。



【伴健岑】のこと


ついでに、あの方に近い恒貞の側近である

伴氏の人間・伴健岑(とものこわみね)である。


伴氏はいまの京の中心にいる

藤原・皇家以外の勢力であり

もともと物部氏の流れをくむ部門の家柄──つまり武装勢力である。


伴氏は武門。

皇族の外側に武力を持つ勢力──嵯峨が最も恐れた存在だ。


そしてやはり薬子の変で問題になったあの方に近しい人物である。


そもそもだ、すべてに問題視されるのが薬子の変なのである。

あれが兄の政治的構想の原初であり最大の問題なのである。


だからあの方はおとなしくしていなければならなかった。

だから空海をつかっておとなしくさせていた。


だけど空海の死後、おとなしくしていると信頼出来なかった兄は

こういう考えになるわけだ。



平城の残り香──兄(嵯峨)が一度許したが、

心の底では決して許していない勢力。



こうして兄の構造は完成した。

あとは、この構造が“人を殺し始める”だけだ。




番外編その⑨ 答え合わせ 真実の一端  おわり



真実とは 誰の目から見たものなのか

いや 見えてしまったものなのか


実行したから犯罪なのではない

実行できる可能性があるから犯罪なのだ


正しさとは 誰が決めるのか

巻き込まれることは 悪なのか



次回 

番外編その⑩    粛清


残酷な構造は 静かに動き出す


この次もさーびすさーびすー



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