9:帝国からの刺客ですわ!
私達から溢れ出したとんでもない量の聖氣が何かしらの作用を引き起こしたのだと思いますが、気が付いたら魔法か何かで姿を消していた女の子がいきなり目の前に現れて……状況を理解すると共に私とアンジェリカさんの恥ずかしいところを見られていたのだという事実に気が付いてしまい、あまりの恥ずかしさに意識が飛びかけてしまいました。
(もう、こうなったら…殺すしかありませんわ!!)
そういう恥ずかしさが通り過ぎるととんでもない殺意が押し寄せて来たのですが、戦おうにもインペールは脱衣場に置いて来ておりますし、そもそも足腰が蕩けて戦うどころではなくて……相手からしたら聖氣を絞り出して弱体化した瞬間を狙って来たのだと思いますが、こんな瞬間を狙って来るなんて卑怯どころの話ではないですわ!
「くっ…あ、アリシア様!?キッツ、あっ、出ます、出…てぇええ!?」
「ま、待ってください、こんな状態で出された…ぁっ、お゙っ、おぉおおっ!?」
そういうのっぴきならない状態ではあったのですが、締め付けているからこその締まらない状況になっているといいますか、とにかくこんな状態でもガチガチでギンギンの異物感が凄いアンジェリカさんの精力が凄まじすぎまして……。
(ご、立派っ、すぎます…わぁああ!?)
引き抜く瞬間にゴリゴリっと良い所に当たって恥ずかしい潮を噴きながらビクンビクンと痙攣してしまったのですが、そんな私達の大きすぎる隙に乗じて大鎌を振るう女の子を迎撃するアンジェリカさんがどこからともなく取り出した巨大な盾剣……ランプデトネイターというアンジェリカさん専用の鉄板のような大剣なのですが、ご自身の得物を収納魔法で取り出したアンジェリカさんが間に入ってガキンと攻撃を防いでくれました。
「流石竜滅の騎士っていうところっスね!へばっている間にどちらか1人くらいは…やっておきたかったんっすけど!」
大鎌を振り払うような動作で飛びずさる正体不明の敵は闇を固めたような衣装を翻らせながら距離を取り……裾の先がぼやけているのでどうにも実体を掴みづらいのですが、上半身は腋の開いている長手甲とちっぱいに張り付けられたニップレという変態的な服装をしておりますし、足先まで覆っているスカートは動くと千切れて素足が露わになっていたりと……この人もこの人でエッチな格好をしているのですよね。
「闇を纏うような衣装に巨大な大鎌、それに薄藤色の髪に緋色の釣り目…と、なると…帝国一の暗殺者と呼び声が高い影使いのノアですか?」
「うん?僕の事を知っているんっスね…可笑しいなぁ…バレないように立ち回っているっすけど…まあ、どうでもいいっスよね…すぐにこの大鎌…シュザルツの一部にしてあげるんで!」
「やらせは…しません!」
なんて事を考えていたらどうやら襲って来た女の子は有名人だったようで……私が状況についていけないまま2人の戦闘が始まっていたのですが、ノアさんが動けば動くほど衣装が薄れて見えてはいけない所がチラリチラリと見えてしまっていますし、腹掛けだけのアンジェリカさんもお尻とかそそり立つおチ〇チ〇が丸見えだったりと色々な意味で大変な事になっていますわ!
(とか言っている場合ではないですね)
中学生くらいに見える右目を完全に覆った薄紫のロブカットの可愛いと綺麗の中間といった感じの釣り目ツルペタボディーの女の子はアンジェリカさんよりやや低いくらいの身長で……こちらの世界だと色々な種族が居るようですし筋力強化の魔法もあるので断定しづらいのですが、どうやら攻撃自体は体格に応じた軽さのようで……数発の打ち合いでその事に気が付いたアンジェリカさんが盾剣を前面に押し立ててシールドチャージのように突っ込みゴリ押し戦法に切り替えるのですが、その途中で何かに気が付いたように警告を飛ばしてきました。
「アリシア様、影にご注意を!」
「へ?っとぉおおっ!?」
警告されたタイミングで聖氣マシマシの水風呂を避けて回り込んで来ていた影が首筋を狙って襲い掛かって来て……咄嗟に頭を庇いながら身を捩るのですが、おもいっきり反応が間に合っていなかったので顎あたりにナイフを押し当てられたような衝撃があって、神骸の防御力がなければ即死でしたわよ!?
(痛っ…いですわ!ああでも…水風呂の効果でしょうか?傷はついていないようで助かりましたわ!)
自動回復するのでただただ痛いだけという拷問のような状況になっているのですが、そういう訳の分からない状況に呆れているのは相手側も同じようで……。
「何でヒュドラが倒されたんだろうって思っていたんっすけど、この感触…聖勇者っていうのも伊達ではないっていう事っすかね?出来たらサクっと消しておきたかったんっすけど、ポーション風呂に浸かりながらなんて相性が…どう考えてもアウェーすぎるんっすよね~」
なんて言いながら一足飛びに後退するノアさんは広げていた影を引っ込めていくのですが、そういう魔法?なのか特殊能力なのかはわかりませんが、影を操る能力を利用して侵入して来たのは称賛に値する蛮勇なのですが、攻撃力が低すぎて決め手に欠けているのかもしれません。
(と、いうより…つい先ほどシュザルツで攻撃をするって言っていませんでした?それなのに影で攻撃をしてくるなんて…ズルい、ズルすぎますわ!)
そういう作戦なのかもしれませんが、正々堂々の正の字もない相手に憤慨してしまって……。
「お怪我は?」
なんて1人で勝手に盛り上がっていると盾剣を構えたアンジェリカさんがフォローの為に戻って来てくれるのですが、アンジェリカさんはアンジェリカさんで足が震えていますし、私も始めてすぎる行為の後遺症で立ち上がるどころではありませんでした。
「だ、大丈夫ですわ!です、が…その…」
心配をさせたくない一心で威勢のいい事を言っておいたのですが、私達は私達で本調子ではありませんし、相手からするといまいち決め手に欠けている状態で……というのは、いったいどういう事なのでしょう?
(ここまで侵入して来た割には出たとこ任せといいますか、つい先ほど召喚された私ならともかく上級保持者のアンジェリカさんがいる事がわかりきっておりますのに、対策が…妙にやる気を感じさせないっていうのもどういう事なのでしょう?)
実力的には切り札の一つや二つくらい隠し持っていてもおかしくはないのですが、そういう力を振るえない状況なのかそれとも……実は戦う気が無かったりするのでしょうか?
「どうやらこのまま戦っていても埒が明かないようですし、どうして私達の命を狙っているのかを聞いてもよろしくて?」
会話が成立している相手を問答無用でぶちのめすというのも何か違うような気がいたしますし、何かしらの理由があるのならと思って話しかけてみたのですが……まずは話し合いからなんていう甘い考えを断ち切るように大鎌を横一文字に振ると、ノアさんは私達に向かって嘲笑してみせました。
「どうして…って、そりゃあ帝国からしたら邪魔者だし、そーいう時間稼ぎには付き合わない主義でして…それに今更話し合って何になるっていうんすか?敵は敵っすよ?」
「くっ!?」
言いながら影を圧縮したような投げナイフを数発投げつけて来るノアさんなのですが、立ち塞がるアンジェリカさんが盾剣で防いでくれて……。
「仲良しこよし、良いっすよね、話せばわかるなんていうのが理想っすよね…理不尽な暴力や悪意に曝されてもそういう事が言えるんっすか?」
そうして盾剣を構えて視界が塞がったアンジェリカさんの死角を縫うように飛び込んで来たノアさんが私目掛けて大鎌を振るうのですが、反応できない私の代わりにアンジェリカさんが横合いから蹴りを叩き込んでくれて……その突進して来たノアさんは影分身的な何かだったのでしょう、ブレて影も形もなくなった瞬間盾剣を地面に突き刺して起点としたアンジェリカさんが反対側から飛び込んで来ていたノアさんに向けて回転飛び蹴りを入れてくれたりと……スピーディーすぎる戦闘にまったくついていけませんわ!
「チッ…っとうに、厄介っすね!」
「それは、どうも!」
バランスを崩したノアさんに向かってアンジェリカさんが盾剣を叩きつけるのですが、ノアさんが翻した影のスカートに絡め取られてしまい……それ自体はすぐさま断ち斬る事が出来たのですが、一瞬の隙をついて距離を取られて振り出しに戻ってしまいます。
「はぁ~やれやれっす、せめて弱っちい方だけでもって思ったんっすけど…こっちはこっちで戦う理由があるんっすよ?そういう意見のぶつかり合いがどうしても生まれるっていうのに…じゃあなんっすか?僕の為に大人しく死んでくれるんっすか?」
たぶん暗殺者なんていう裏家業をしていて人恋しいのでしょう、なんだかんだいいながら会話に付き合ってくれるノアさんなのですが……。
「それは、出来ませんが…でも、大丈夫ですわ!」
何やら難しい事を考えているようなのですが、意見の相違とか戦う理由とか向けられてくる悪意だとか、そういう事は難しく考える必要がないと思っております。
「大丈夫って…何でそんな風に能天気な事が言えるんっすか?聖勇者っていうのは能天気な人しかなれない職業なんっすか?」
「それは、その…聖勇者についてはわかりませんが…それ以外の意見に対しては反論する事ができますし鼻で笑ってみせますわ、なんたって私が大丈夫と言っているのだから絶対に大丈夫なのですから!」
こういうのは勢いとかノリとかが大事なので胸を張って鼻息荒く断言をするとノアさんがカクンと肩を落としてしまったのですが、何とも言えない顔をしながら大鎌にもたれかかりながらスリスリと踵で反対の足を掻いていて……。
「なんっスか…それ」
色々と考えてみた結果「よくわからない」なんていう結論を出したノアさんの殺意が薄まったような気がするのですが、その辺りの私理論を詳しく説明してあげる前に『清めの間』の外からワチャワチャとした気配が伝わって来て……どうやらターナー神官長達が侵入者に気が付いたようで「アリシア様!何者かが脱出用の秘密の通路を通って来た形跡がー!」とか叫びながら駆け付けて来るところでした。
「あーあ…結局時間稼ぎに乗っかっちゃったっすね、流石に聖勇者に竜滅の騎士にマリエラ教の神官長を同時に相手取るっていうのは面倒だし…ここは引かせてもらうっすよ!」
「待て!逃がすと思っているのか!」
なんて逃走準備に入ったノアさんに向かってアンジェリカさんが駆け寄ろうとするのですが、色々と出し過ぎたアンジェリカさんの足元はガクガクで……。
「そーいう強がりは震えていない時に言った方がいいっすよ?」
そんな軽口を言いながらノアさんが影の中に溶けるように消えていき……隠れているのか転移したのかはわからないのですが、とにかく不意を突いて奇襲を仕掛けて来るような感じでもありませんし、本当に撤退してしまったのでしょう。
(何だったの…でしょう?)
刺客の準備不足とかやる気の無さとか色々な謎が残ったのですが、ノアさんの撤退が確認できた辺りでターナー神官長以下聖騎士の皆さんとか有志の方々が『清めの間』に突入して来て……。
「アリシア様…ご無事ですか!?むむ、こちらから賊の気配がいたしますぞ!?」
「って、ちょっと待ってください、もう大丈夫、大丈夫ですから!!せめて服を着るまで待ってくださいませ!」」
アンジェリカさんは布切れ一枚を纏っている状態ですし、私に至っては全裸でして……とはいえこちらの世界では混浴がデフォだったりするので私の叫び声も虚しく容赦なく突入して来たターナー神官長達にワチャワチャとした安否確認をされる事になりましたし、襲撃の驚きが色々なものに塗りつぶされて余計に疲れ果てる事になるのですが、私の存在が帝国にも知られてしまったようで……いったいこの先どうなってしまうのでしょう?
※長手甲 = もののけな姫のア〇タカさんが着物の下に着ていた手首から腕を守るための装具みたいな感じの衣装です。そしてチラリチラリと見えていたものが何なのかは明言を避けますが、ノアはノーパンです。




