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54:獄牢の番人ですわ

「却下、却下ですわ!どう考えてもやばすぎる場所なので別の方法を模索した方がマシですわ」

 触手がウネウネとしている植物も生えない荒野のど真ん中、崩れた石造りの残骸()から続く地下道が帝都郊外にある歓楽街(スタジアム)に繋がっているらしいのですが……。


「う~ん、確かに奇妙な感じがしますし、資料を見た感じだとここまで土地が荒れているっていう話じゃなかったんっすけど…何かあったんすかね?」

 蝙蝠形態のノアさんがカシカシと地面を掻いていたのですが、地面から生えて来ている触手からは濃厚な媚毒が生成されて漂っていますし、奇妙な吸収デバフのような喪失感が重くのしかかって来ているので落ち着きませんわ!


「そう、ですね…動植物の枯れ方から考えるとマナ(自然のエネルギー)が著しく枯渇しているという感じですし…いくら辺境領といってもこの減り方は不自然かと」

 元はやせ細った木々が疎らに生えているような土地だったという事ですし、ここまで岩肌が剥き出しの荒野が広がっているのはおかしいのだそうです。


「じゃあ、嫌な予感がするから別の場所から帝都にーって言いたいんっすけど…帝都の結界って広すぎるから別のルートを探すといっても一筋縄にはいかないんっすよね」

 とかノアさんが言っていたのですが、帝都の結界と一口で言っても町の部分だけを覆っている訳ではなくて……周囲一帯を薄く広く守っているのでその外周部の侵入経路を探るとなったら数か月単位の大事業になってしまうのだそうです。


「そうなりますと…どうしましょう?」

 出来たら別の潜入ルートを探したいところなのですが、ノアさんが言うにはここ以外の出入り口を探すくらいなら帝国軍の検問を潜り抜けた方が楽だという事ですし……薄い結界なので破ろうと思えば破れるのかもしれませんが、そんな事をすれば(わたくし)達が侵入してきているという事を大々的に喧伝してしまう事になるのでしょう。


「一応…城の中から郊外くらいまでの通路なら幾つかあるんっすけど、結界の外と内側が繋がっているのはここくらいっすからね…まあ、最近の帝国はボロボロなんで綻びが出来ている可能性がありますが、望みは薄いんじゃあないっすか?」

 なんて言われてしまったのですが、検問(正規)ルートだとヴァーナル(反帝国)の人達との戦いが激化している影響で出入りが絞られておりまして、わざわざ帝都に入っていくのは帝国兵に守られた輸送隊ばかりという状況なので一見さんである私達だとまず間違いなく面倒臭い事になってしまうのだそうです。


「仕方がありませんわ、この通路には色々と気になる事がありますし…アン(アンジェリカ)もそれでよろしくて?」

 危険な通路であるという事はヒシヒシと伝わってきていたのですが、よくよく考えてみるといくら放棄されているからといってここまで見張りも何もいなさすぎるという事が不自然すぎますし……帝都から伸びている唯一の出入り口に違和感があるのなら調べておいた方が良いのかもしれません。


「そう…ですね、ゼブルスが何かしらの企みをくわだてている可能性がありますし、元はといえば邪竜の軍勢が集まり快堕(かいだ)獄牢(ごくろう)になったという話で…ゼブルス云々が無かったとしても違和感があるのなら調べておいた方が良いのかもしれません」

 移動中に教えて貰った事なのですが、大戦中に魔力タンクとして使われていた魔物達が犇めいていたのがこの場所だったようで……ようするにベルザ(南方行政都市)の地下に植えられていた肉の樹の大規模版みたいなモノが年月とともに風化して埋もれていったというのが快堕の獄牢だったのですが、そんな場所に異変があるのなら調べておいた方が良いのでしょうというのがアンジェリカの意見でした。


「そう、ですわね…それじゃあとりあえず、中を見てから考えるという事でもよろしくて?」

 怪しげな気配が漂っているだけの行き止まりだったという可能性もある訳ですし、ここで言い争っていても仕方がないので確かめに行く事にしましょう。


(通れなかったらルルさん達に地下道を掘ってもらう事になるのかもしれませんが…それはそれで難しそうなところが問題ですわ)

 ジオルドのドワーフ勢力(ルルさん達)も反帝国連合に合流する予定なので人手が不足していますし……そもそもゼブルスが封印されているとなったら地下に埋まっているというのがお約束(空中は珍しい?)というものでして、そうなってくると地中深くまで結界が伸びているという可能性があるのですよね。


 とにかくそんな話しをしながら砦の残骸付近でウニョウニョとしていた触手達を倒していく事にしたのですが、砦の残骸に近づくと媚毒が噴き出し地面が震え始めまして……。


「アリシア!」


「わかって…いますわ!」

 私はアンジェリカの警告を受けてインペールを構えながら飛び上がるのですが、砦の残骸を突き破るように人どころか建物すら飲み込めそうな巨大なワームが無数の触手を蠢かせながら飛び出して来まして……巻き上がる砂煙や隆起する地面によってアンジェリカ達の姿が見えなくなるのですが、あちらはあちらで上手く対処してくれる事を祈りながら私は私で最善を尽くすだけですわ!


「BYUUUAUAAAAAAxx!!」


「くっ、とう…に!」

 そうして鎌首をもたげるように地中から顔を出した巨大なワームが雄叫びを上げると聖氣が奪われフラついてしまったのですが、辺り一帯がカラカラの荒野になっているのはこいつがエネルギーを吸収しているせいなのでしょうか?


(考察は後ですわ…今はこいつを何とかしませんと)

 最も聖氣を保有している私を狙ってカパリと口を開いて突っ込んで来ている巨大なワームを迎撃しようと身構えるのですが、その口内はグチョグチョの触手で埋め尽くされておりまして……逃げる私を捉えようと支肢の触手が伸びて来たのを聖氣の盾で防ぎながら鞭のようにしなるインペールを振るうのですが、1本目の触手を斬り裂いている間に回り込んで来た2本目の触手が私の身体を狙っていまして……。


(数が多くて…四方八方から狙われると混乱してしまいますわ!?)

 それでも気合と根性で伸びて来ている触手を斬り払っておりますと、駆けつけたアンジェリカが巨大なワームの根元の辺りに魔力を込めたランプデトネイターを叩き込んでくれました。


「HYUGUUUUUxx!!?」

 大きくブレて狙いのズレた触手が空を切っていきますし、ウネウネと蠢く数十本の触手が未練たらしく私の身体を捕えようとしていたのですが……そんな破れかぶれの攻撃に当たるような私ではありませんわ!


「助かりました、ありがとうございますですわ!」

 地上に居るアンジェリカ達には聞こえないのかもしれませんが、それでもお礼を言いながらインペールに聖氣を込めまして……巨大なワームが吐き出す媚毒ガスのせいで身体が疼いて集中力が削られていってしまうのですが、砂埃と共に広がる媚毒の海に沈んでいる2人は2人で大変な事になっているみたいなのでさっさと決着をつける事にしましょう。


(だからといって…これでは狙いがつけづらいですわ!)

 限界ギリギリまで伸び切った巨大ワームが地響きを立てながら倒れていったのですが、空を飛んでいる私の事を諦めたのか地上で戦うアンジェリカ達に狙いを変えたようでして……暴れ回られていると狙いがつけづらいですわ。


「ちょっ、今の僕は戦えないんっすから何とか…ひっ、ゃああああ!?


「だったら隠れているか離れていてください!」


「そんな事を言われたってっすよ!?」

 いくら上級神躯持ちのアンジェリカでも地形が変わる勢いで暴れ回っている巨大なワームには手こずっているようでして……。


「2人とも、今…助けますわ!」

 こうなったら一か八かだとジャッジメント・ディザスターの発射準備を進めるのですが、迸るエネルギーが拡散していくのが利点であり欠点だった(威力が低くなる)必殺技を放つと地上で戦っているアンジェリカ達まで巻き込んでしまいそうで……私は渦巻く聖氣をクルリと回した刀身で押さえ込んで狙いを定めました。


「これが…新・ジャッジメント・ディザスターですわ!」


「HYUGIxLxLL!?」

 一点集中、単体攻撃力でいえば数十倍以上という聖氣の奔流を受けた巨大なワームが両断されたかと思うと大地に深々と大きな亀裂を作っていきまして……引き裂かれた肉片はその巨体に相応しい生命力の高さでビチビチと蠢いていたのですが、有り余る聖氣を利用して斬り刻んでいくと流石に大人しくなっていきました。


(これはこれで消耗するのですが…威力としては100点満点の出来ですわ)

 女神の聖氣によって浄化された肉片がキラキラと消えていくのですが、この威力だったら赤毛のトカゲ人間(リンディ)さんにも通じるのかもしれません。


「お疲れ様です…助かりました」


「これくらいならお安い御用ですわ」

 地上に降り立った私に対してアンジェリカ達が苦笑いを浮かべていたのですが、地上組からしたら自分達まで斬り刻まれないかとヒヤヒヤしたのかもしれません。


「お安い御用…じゃないっすよね!?僕達まで斬り刻むつもりだったんすか!?」


「流石にそんな事は、何となく居場所がわかっていましたので…大丈夫かと?」

 アンジェリカの気配(聖氣)は覚えていますし、ノアさんの現在地も首輪を通して()()()把握していたので容赦なくぶっ放す事が出来たのですよね。


「何となくとか大丈夫かとって、そんな曖昧な…」


「まあまあ、アリシアのおかげで助かったのですから…に、しても、この巨大ワームもゼブルス(邪竜)の影響なのでしょうか?」


「どう…なのでしょう?詳しい事はわかりませんが…ただひとつわかっている事は…この大きなミミズが砦の地下から飛び出して来たという事ですわ」

 騒いでいるノアさんは放っておく事にしたのですが、巨大なワームが突き破って来た大穴の向こう側にはグジュグジュとした快堕の獄牢が広がっておりまして……。


「気が重いのですが…どうやら本格的な調査をしないといけないようですわ」

 巨大なワームが周囲のマナを吸い取っていたのですが、吸い取ったマナや聖氣を利用している様子がありませんでしたし……この通路が帝都(ゼブルス)に繋がっているというのでしたらそのエネルギーの流れを調べてみないといけないのかもしれません。

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