52:爆破解体とその結果ですわ
ノアさんを救済する道筋が見えてきたのは良い事なのですが、ドラゴンゾンビが残した黄色の結晶が今にも爆発しそうになっておりまして……。
「どこまで押さえ込めるのかがわかりませんが…やれるだけの事をやってみますわ、アンとルルさんは…」
「離れておいてって言われてもお断りやで?ウチがデータを取らんかったら誰が取るんやっていう感じやし」
「そうですよ、アリシアを残して逃げ出すなんて…もちろん私もお供させていただきます」
わざわざ爆心地に留まる必要もないと思って撤退を勧めてみようとしたのですが、当然のように残ってくれるという2人に対して胸の奥が温かくなってしまいますわ。
「2人とも…よろしいのですか?」
ルルさんの場合は研究目的とか結晶の変化を調べたいだけなのかもしれませんが……それでも2人の心の熱さに涙ぐんでいますと、1人だけ冷めた目をしていたノアさんが「やれやれっす」みたいな感じのオーバーリアクションで溜め息を吐いていました。
「行き当たりばったりでどうにかなるようなもんでもないっすけど…お気楽な人達は頭の中までお花畑なんっすね」
「ノアさん、いくらなんでも言って良い事と悪い事がありますわ」
私の事だけなら良いのですが、命を懸けてなんとかしようとしている2人の心意気を無下にする事は許さないと睨みつけますと……ノアさんは苦笑いみたいな表情を浮かべていました。
「そうじゃなくて…アリシアが吹き飛んだら僕まで一蓮托生っすからね、だから…今回だけっすよ?」
なんてノアさんまで協力を申し出てくれたのですが、なんでも気配とか魔力を遮断する影の力を使えば結晶を異相次元にどうのこうのする事が出来るようで……ようするにアイテムボックスの中で結晶を爆発させるくらいの遮断効果が得られる魔法が使えるのだそうです。
「そういう手が…って、普通の収納魔法では仕舞い込む事ができませんのね」
「流石にこれだけの物を仕舞い込むのは…魔力自体が吸収されてしまいますし、神躯とも反発が…なので通常の方法では難しいかと」
私達の中で一番収納魔法が得意なアンジェリカでも仕舞い込めないようですし、ここは大人しくノアさんの影魔法に頼った方がいいのかもしれません。
「僕の魔法はちょっとだけ特殊っすからね、まあ…ここまで魔力を蓄えている物だったら連鎖爆発を阻止できるかどうかっていうくらいの効果しかないっすけど、そのまま爆発させるよりかは幾分マシになるんじゃないっすか?」
「ありがとうございます、そういうお手伝いだったら大歓迎ですわ!です…が、よろしいのですか?」
私が身に着けている首輪の方にも魂の一部を移しているのですが、影の力というのはノアさんの体を作り出している物質でもあるようですし、そんなモノで結晶を覆って遮断すると一緒に吹き飛ばされる事になるのですが……。
「大丈夫…とは一概には言えないんっすけど、まあ…一緒に消し飛ぶよりかはマシっすから」
あっけらかんと言ってのけるノアさんなのですが、最悪の場合は二度と依り代から出て来れないくらい消耗しきってしまう可能性があるのだそうです。
『あー…繋がっているっていうのはこういう事もわかってしまうんっすね…まあ、大丈夫っすよ、僕もこんなところで死にたくはないんで』
なんて呟いていたのですが、たぶん「死にたくない」というのがノアさんの嘘偽りのない本心でして……確かにこんな所で死ぬわけにもいかないので頑張らないといけませんわ。
「わかりました、そうと決まったらさっそく…と、言いたいのですが、増幅器を使ってみるというのはどうでしょう?上手くいけばノアさんの影魔法を強化する事ができますし、爆発に耐えられる可能性がぐっと上がるのではありませんか?」
そう思ってルルさんの方に視線を向けてみるのですが、一瞬「何の事だろう?」みたいに首を傾げていたルルさんが「ああ、ビキニアーマーの事か」みたいにポンと手を打っていました。
「かまへんけど…そっちのちびっ子いのが使うんやろ?アリシアの聖氣で調整しているから他の人が使ったら効率が半減やで?」
「少しでも効果があればオールオッケーですわ、それに私の影響を受けているので大丈夫だと思いますし…ドラゴンゾンビとの戦いで消耗している私よりノアさんの方が増幅の反動に耐えられると思いますわ」
そんな感じの持論を展開してみるのですが、ノアさんの強化をしておけば消耗したボディー部分の再構築がしやすくなるのかもしれません。
「え~っと、何の事だかよくわからないんっすけど…出し惜しみをしている余裕もないんで、強化アイテムがあるのなら…って、なんっすか…これ?三角形のペンダント…じゃ、ないっすよね?」
ノアさんも「仕方なし」といった感じで了承してくれたのですが、ルルさんが取り出したビキニアーマーを見たら腰が引けてしまい……。
「って、ちょっと待ってください、本当にこんな物を身に着けるんっすか!?」
常時裸マントに近いノアさんなのですが、プルプルと震える装備を敏感な場所に押し付けるのは恥ずかしいようでして……とはいえ大爆発しそうな結晶の前ではノアさんの羞恥心なんていうものは些細な問題ですし、その辺りの苦情は後回しにさせてもらいましょう。
「安心してください、私の場合は色々とはみ出してしまいますが…今のノアさんの体型だったらジャスフィットですわ!それに悩んでいる時間もありませんし…皆も準備はよろしくて?」
「任せてください、アリシア…達の事は必ず守りますので、安心して魔法に集中してください」
「観測装置も取り付けたし…こっちはいつでもOKやで?ただ作戦を開始したら後戻りはできへんから…腹~括るんやで~?」
こんなところで尻込みをしていても仕方がないので捲し立てるように役割を振っていくのですが、アンジェリカが盾を構えながら私達の前に立ってくれましたし、ルルさんも結晶に集まっているエネルギーを抜いていくための準備を整えてくれまして……後はノアさんの準備が整うのを待つだけですわ。
「え、ちょっと、本当に始めるんっすか?ああもう、仕方がないっすね!」
背に腹は代えられぬという感じでツルペタボディーのノアさんがコンビニのおにぎりよりも小さい三角形の金属板を身に着けるのですが、その瞬間こちらまでピリっとした刺激が伝わってきたように身体が跳ねてしまい……。
「んぎ…ッ、なんの、これしき…っすよ!」
余裕を失った表情を浮かべているノアさんがルル結晶の振動に耐えているのですが、見た目がロリロリしくなってしまった未成熟な身体を責め立てるとトロトロとした汗以外の物が垂れて来まして……ぷっくりと膨らんだ乳首がヴィーっと刺激されればされるほどノアさんの固く閉じた唇からは喘ぎ声のような吐息が漏れてきてしまいました。
「アリシアも…大丈夫、ですか?」
「え、ええ…何のこれしき…ですわ」
ルル結晶のバフを受けたノアさんの体から黒い煙のような物が溢れて臨界点を超えそうな光を発している結晶を覆っていくのですが、プルプルと震えているノアさんの感覚が私にもフィードバックして来てしまい……触ってもいない私の乳首までプルプルと震えているような感じに汗が噴き出し足元がおぼつかなくなってしまいます。
(感覚…が、繋がっているので…変な感じですわ)
汗やら涙やらを垂らしているノアさんの限界が近いというのもあるのですが、私達がルル結晶の反動に耐えられなくなる前に作戦を決行する事にしましょう。
「ルルさん…お願いします!」
「了解や、失敗しても恨みっこなしやで!?」
私の合図でルルさんが影に覆われている結晶に筒のような物を突き刺すのですが、瞬間巨大なビームのような光が空に向かって撃ち出されていきまして……。
(なになに何ですの!?空間が…裂け…るっ!?どころの話ではないですわ!)
ルルさんが離れた瞬間を狙って結晶を覆うのですが、聖氣の盾で覆いきるか覆いきらないかというタイミングで水中で巨大な爆弾が大爆発したかのように大きく揺れまして……ビキビキと圧縮された空間の揺らぎと共に物凄い勢いで噴き出して来た衝撃波が聖氣の盾をぶち抜いて街全体を揺らしました。
(貫通!?そん…な!?)
作戦が失敗したのかと思って血の気が引いたのですが、ドグゴッゴゴゴゴ!みたいな衝撃波が抜けて行った後は空間の揺り戻しのような流れに体が引っ張られてしまい……そういうグチャグチャとした波が通り過ぎていったかと思うと徐々に辺りが落ち着いてきました。
(助かり…ましたの?)
気付けば吹き飛ばされていたので平衡感覚が失われていますし、耳鳴りが続いているような感じで実感が湧かないのですが、ぼんやりと辺りを見回してみるとあちらこちらから「何事だ?」みたいな顔をしながら覗き込んできている人達の気配がありまして……結晶と共に吹き飛んでいったノアさんからの返事がないのが心配なのですが、首輪の方にはぼんやりとした意識が残っておりまして……アンジェリカは無事ですし、衝撃波を受けてコロコロと転がっていったルルさんも無事なようですし、街の様子は……あまり無事とはいえませんが、半壊程度で踏み止まっているといった印象なので一安心ですわ。
「やった、やりましたわ!」
「みたい、ですね…っと、アリシアも無事でしたか?何か違和感が…お怪我はありませんか?」
衝撃波をモロに受けていたアンジェリカがようやくといった感じで力を抜いていたのですが、そんなアンジェリカに飛びつき抱きかかえられていると嬉しさが爆破してしまい……最終的な被害としてはジオルドの街の断層がずれて半壊する程度で収まったのだそうです。
勿論これだけ大規模な戦いだったので亡くなられた方達も居るのですが、ジオルグ山脈が吹き飛びかけていた事を考えると死傷者が少なくて……というのもリッテンベルン宰相が忽然と居なくなった事で帝国軍の指揮系統が混乱しておりまして、聖乳入りの飴玉を食べてムキムキになったドワーフさん達を組織的に迎撃するといった人達も居なかったので人間同士の戦いが発生しなかったのが大きかったのだそうです。
(そう考えると色々な幸運が重なった結果…と、言えるのかもしれませんわ)
しかも危険を察した魔物達が我先にと鉱山街から離れて行きまして……これはこれで周囲の村々に被害が出て来そうな案件なのですが、魔物という戦力を失った帝国軍は率先して降伏して来るような有様で……この占領が一時的なものになるのか長期的なものになるのかはわからないのですが、一つの山場を越えた私達は改めてこれからどうするのかという岐路に立たされる事になりました。




