31:不帰の森の異変ですわ!
不帰の森に到着して早々謎の爆発騒ぎがおきまして、荒事の気配を感じ取った私とアンジェリカは装備を整えてから爆心地に向かう事にしたのですが……。
(早くレスリーナちゃん達と合流しないといけないのですが…っとうに、森の中だと動きづらいですわ!)
様子を見て来ると駆け出してしまったレスリーナちゃん達と心配性なマリーちゃんが先に行ってしまったというのにエッチなウェディングドレス風の聖衣は鬱蒼とした森の中では問題がありまくりまして、あちらこちらに引っかかって動きづらい事この上ないですわ!
(った、スカートが…もう、とにかく走りづらすぎますわ!)
飛んでいけたら一瞬なのですが、魔法攻撃をしてくるような相手が居る場所に向かっているので下手に飛んで向かうと狙い撃ちにされる可能性がありますし……勿論並大抵の魔法なら耐えられるとは思うのですが、状況もわからず飛び込んでいくのは危険すぎるという事で気合と根性で全力疾走中ですわ!
(んっ…っと、しかも久しぶりに着ると…色々な所が擦れたり食い込んで…)
流石に邪魔なので翼は出していないのですが、ブルンブルンと胸が揺れる度に乳暖簾状態の前垂れに乳首が擦れてしまいますし、紐のような下着がキュッキュと割れ目に食い込む度に突き上げて来る奇妙なムズ痒さが集中力を奪っていきました。
(それに、ただでさえムズムズしておりますのに…この子達が)
小さぎる小妖精ちゃん達は安全な場所に避難してもらったのですが、どうしてもついて来ると駄々をこねた妖精達が色々な場所を掴んで引っ付いて来ておりまして……比較的しっかり者の妖精さん達に「マリーお姉ちゃんが頑張っているから私達も頑張る!」なんて言われたら連れて行ってあげるのが人情というものですわ。
「走り辛そうですが…大丈夫ですか?ペースを落としましょうか?」
「問題…ありませんわ、それよりレスリーナちゃん達は大丈夫でしょうか?危なくなる前に戻って来てくれたらよいのですが」
そんな風に走り辛そうにしておりますと、並走してくれているアンジェリカが心配してくれていたのですが……今は先行しているレスリーナちゃん達の方が心配ですわ。
「大丈夫ですよ、あの2人には肉人形との戦い方を教えておきましたので…レスリーナもしっかりしていますから、よほど事がなければ問題はないかと」
「だと…いいのですが」
私を安心させる為に微笑んでくれているアンジェリカは色々と考え動いてくれているのですが、だからといって心配なものは心配ですし……。
(面倒な事になる前に安全な場所に避難してくれていると良いのですが)
特に戦闘能力が皆無のマリーちゃんが心配なのですが、道案内の為について行くと譲りませんでしたし……そんな事を考えながらアンジェリカと一緒に爆発音のした方向に進んでおりますと、灰色の枯れた植物がチラホラと見えてきました。
(これでただのボヤ騒ぎ…という感じでもなくなってしまいましたわ)
変な奴が来ているというマリーちゃんの言葉と魔法攻撃による爆発音という事で小競り合いが起きている可能性が高かったのですが、ワンチャンただのボヤ騒ぎだったという可能性もあった訳で……そんな私の楽観的な予想を嘲笑うように木々の間からやや赤みを増したブヨブヨの肉人形と戦っているレスリーナちゃん達と飛び回って牽制をおこなっているマリーちゃんの姿が見えてきました。
「ねえ、もしかして…向こう側に倒れているのって?」
そしてレスリーナちゃん達や肉人形達の向こう側には耳の長い人達や小柄でずんぐりむっくりしている人達が蹲っていたのですが……彼らが不帰の森に棲んでいるというエルフやドワーフとか呼ばれている人達なのでしょうか?
「はい、たぶん…その通りかと…先程の爆発は彼らが魔物と戦っている時のものだと思うのですが…待ってください、アレは…トレントの亜種でしょうか?」
なんてやや速度を落としたアンジェリカが油断なくランプデトネイターを構えながら訝し気に眺めていたのは巨大な大木のような化け物でして……高さは10階建てのビルくらいで横幅は高さの1.5倍程度とやや太った印象を受ける巨木なのですが、根っこがガサガサと動いて移動をしているのが気持ち悪すぎますわ!
(それに、あれは…なんですの?)
葉っぱの代わりに生い茂っているのは10センチくらいの目玉が生えている巨大な芋虫ですし、ボロボロの樹皮の内側でカサカサと蠢き羽音を立てているのは巨大な蚊とか羽虫に似た何かでして……そんな生理的な嫌悪感がMAXなビジュアルをしている巨大な虫食いトレントに鳥肌が立って顔を顰めてしまいました。
「オーホッホッホッ!なんでこんな所に毛むくじゃらがいるのかはわからないけど、駄目よ駄目駄目、そんなんじゃあ飛んで火に居るなんとやらよー!ほーら、気を抜いているとやられちゃうわよ~」
ただその見た目のオドロオドロしさの割りには口調が軽いといいますか、何とも言えない脱力感に包まれてしまいそうになる喋り方をしていたのですが……とにかくそんな虫食いトレントの額ともいえるような場所にこびり付いている赤黒い結晶をビカビカと光らせながらスピードやパワーが3倍くらいに跳ね上がっている赤色肉人形を操っていたり無数の蟲達を生み出したりしながらレスリーナちゃん達を追い詰めていました。
「ああ、ああああ…結界の事を調べに来たら新しい玩具を見つけちゃったし…前回やられた雪辱は…ほら…あれよあれ、手加減をしてあげていたっていうのを思い知らせてあげるわ~!」
なんて虫食いトレントがべらべらと喋りながら根っこをウネウネと動かし蟲達を放って来ていたのですが、本当に口調の割りに凶悪な攻撃と物量ですわ!
「チッ、べらべらと喋くりやがって…根っことブヨブヨが邪魔で近づく事もできねぇ!」
「無駄口を叩くな!このブヨブヨしたのも前回戦った奴らとは違うぞ!」
「つーてもよ!」
そんな悪態をついているゴロさんとシンデさんが虫食いトレントの根っこを回避しながら赤色肉人形と戦っていたのですが、2人の火力では肉盾代わりの赤色肉人形を突破する事が出来ませんし……とかいうタイミングで私達が到着しまして、真っ先に気が付いたレスリーナちゃんが歓喜の声をあげました。
「アリシア、来てくれたか!」
「ええ、お待たせしました!アンジェリカはあちらで倒れている人達をお願いしますわ!レスリーナちゃん達も怪我人の救助を!」
エルフやドワーフの人達の中には何とか自力で動ける人達もいるのですが、傷つき膝をついている人達の方が多いですし……このままほうっておけば敵の物量に呑み込まれてしまうのかもしれません。
「わかった、任せろ!」
「…わかりました!」
レスリーナちゃんは即応してくれましたし、私から離れる事を躊躇ったアンジェリカもこのまま見捨てる訳にはいかないと救助に向かってくれまして……私は私で虫食いトレントの気を引くために攻撃を仕掛けてみる事にしましょう。
「ぐ、何故戦士である俺が毛無しの命令を…」
「ゴチャゴチャうるさいですわ!今は言い争っている時間がありませんの!それに…いくらアンジェリカでも全員を守り切れるかがわかりませんし、無駄に力が有り余っているお2人には怪我人の運搬をお願いしますわ!」
いくら強くても1人では運べる怪我人の数には上限がありますし、正直に言ってしまうとゴロさんとシンデさんが前線に居るだけで巻き添えを気にしないといけないので邪魔すぎますわ。
「シンデ、ゴロ!あいつらがやられたらまとまる交渉もまとまらなくなる、今はアリシアの指示に従ってくれ!それに我に秘策ありだ!」
なので状況を冷静に見定めていたレスリーナちゃんが虫食いトレントの赤黒い結晶を睨みつけながら指示を飛ばしてくれましたし、周りを飛んでいたマリーちゃん達も目くらましの魔法を放って攪乱役をこなしながら援護射撃を放ってくれていました。
「オーホッホッ、尻尾を巻いて逃げて行くのはいいけど~…ど~お~?ここに居るカビ臭い連中を見捨てて逃げるっていうのも一つの手よ~?貴方達の事は命令されていないから命だけは助けてあげてもいいし~?」
「くっ…言わせておけば!!」
「シンデ、下がれ!」
「わかった…が、この屈辱は必ず晴らすからな!」
「へっ、覚えてやがれ!」
そうして虫食いトレントの安い挑発を受け流しながらレスリーナちゃん達が下がっていったのですが、ようやく前が開けて準備が整いました。
「そういう訳で…貴方の相手はこの私ですわ!」
戦っていたレスリーナちゃん達が引いていった事で気兼ねなく必殺技をぶちかましてあげられる状況が整いましたし、こういう調子に乗っている相手には先手必勝で一発大きいのをぶちかましてやろうとインペールに聖氣を集めて必殺技の準備に入ります。
「あらーまた美味しそうなのが…んっん~!今日は豊作ね~今からその魔力を吸い上げるのが楽しみだわ~」
「舐めていると痛い目をみますわよ?くらいなさい!ジャッジメントォオオ…ディザスタァアアア!!」
「きゃーこのままじゃあやられちゃうわ~…なんて、そんな大振りをくらうほど間抜けじゃないのよね~」
たぶん宰相の植物でいうところの魔力を溜めるための果実か何かの代用品だと思うのですが、弱点である事を隠しきれていない赤黒い結晶目掛けて必殺技を放つと虫食いトレントが怖がるそぶりをみせていたのですが、それが演技だったというような口調でウゾウゾと蠢いている赤色肉人形や数百数千という羽虫や目玉芋虫を集めて肉の壁を作りあげまして……。
「その程度で壁で、私の必殺技が止められ…ってぇえええ!?」
押し切るつもりで出力を上げると直線状の蟲達が弾け飛んでいくのですが、聖氣の渦が命中した赤色の肉人形がパンと破裂したかと思うとネバネバとした液体が辺りに広がってしまい……絡まりついて来たネバネバにバランスが崩れてその場に引きずり倒されてしまったのですが、なんですの、この粘液は!?
「ふ~危ない危ない、思っていたより威力が高かったみたいだけど~…これくらいなら問題ないのよね~残念ね~?この結晶が弱点っていう読みは当たっているんだけど~…皆そこばっかり狙ってくるから避けやすいのよね~…どーおー?そのジャッジメントなんちゃら…だったかしら?特別製の媚毒粘液を食らっても放てるものなのかしら~?」
ガサガサと根っこを動かしながら大きく仰け反るような奇妙な体勢で聖氣の渦をやり過ごした虫食いトレントは嘲るように笑い……中途半端な不発といっても効果範囲が広いので枯れ木を覆う樹皮を吹き飛ばして大きく欠けさせる事が出来ていたのですが、植物由来の再生能力で穴を塞いでいってしまっているので致命傷には程遠い状況ですわ。
「ズ、ズルイですわ!なんでそんな巨体で仰け反ったり…と、いうより…こっの、なんですの…このネバネバしている糸は!」
しかも赤色肉人形が吹きかけて来た奇妙なネバネバはインペールでも斬る事ができませんし、聖氣で吹き飛ばそうにも奇妙な粘液には吸収能力があるのか上手くいかなくて……藻掻く事しか出来ない私に向かって津波のような赤色肉人形と蟲達の大群が押し寄せて来ました。
「アリシア!」
「ひっ!?はっ…放し…っと、うに…ヌメヌメが這い上がって…中に、入って…うひぃんッ!?」
私のピンチを察して救助に向かっていたアンジェリカが引き返して来ていたのですが、群がる羽虫や赤色肉人形達に足止めを受けておりまして……そうこうしている間に碌な抵抗が出来なかった私は群がる目玉芋虫やヌメヌメとした肉の塊に揉みくちゃにされてしまい、虫食いトレントの根っこに捕まり拘束されてしまいました。




