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3:初っ端から大変な事になっていますわ!

※大いなる力には大いなる面倒臭さが付き纏います。

 ()()()()()()白亜の神殿都市、魔法の光や宗教的なシンボルを除けば中世ヨーロッパ風の城塞都市である……ファティエラ。


 弧の字に曲がった山脈と自然豊かな森林に囲まれている城塞都市は敬虔なマリエラ教徒の不断の努力によって静穏が保たれ帝国の圧政を跳ね除け続けていたのですが、今まさに数万匹のザコモンスター達(雑多な魔物の集団)に纏わりつかれて陥落寸前のピンチを迎えておりました。


 しかも魔物達の後ろには帝国旗を掲げた騎士団の姿が見えていますし、中にはかなりの大物も紛れ込んでいるようで……。


(ワラワラとしていて気持ちが悪いですわ)

 そんな景色を()()()()から見下ろしていた(わたくし)はホールケーキに群がる蟻の大群を見つけてしまったような気持ちになってしまったのですが、それ以上に身体がムズムズとしてしまい落ち着きませんわ。


(それにしても、こう…慣れませんわね)

 神躯を取り込むのと同時に生えて来た純白の翼……いきなり背中から生えて来た時はどうしたものかと慌ててしまいましたし溢れ出る聖氣(せいき)と翼のせいで着ていた衣類が弾け飛んでしまったのですが、ターナー神官長が言うには神躯を取り込むと肉体的な変化が起こる場合もあるのだそうです。


 なんて「よくある事」みたいなノリで気軽に流せるような変化ではないのですが、神躯の力で空間認識能力や色々なモノがブーストされているので問題なく空を飛ぶ事が出来るのですよね。


 因みに聖氣というのは純化した魔法力とか不思議パワーの源なのですが、そんなモノを纏っているせいで聖勇者用の特別仕様以外を身に着ける事が出来なくなっていて……。


(だからといって…いくらなんでも破廉恥すぎますわ!)

 頭部を守るような天使の羽飾りや不思議金属で補強されているロンググローブは百歩譲って良いとして、聖銀(せいぎん)と呼ばれるプラチナにも似た魔法金属が縫い付けられている純白のウエディングドレス風の衣装……にも見えなくもないエッチなドレスが問題で、首を覆うシースルーのチョーカーから伸びた前垂れ(乳暖簾)は胸の大きさに比例してしまっている大きめの乳輪を隠し切れていないような気がいたしますし、下は下で襞々が揺れるラッフルタイプのオーバースカートが腰の辺りまでしか無かったりと……つまり前面が丸出しというとてつもなくヤバイ構造なのですが、下着が丸見えになっているのはどう考えても由々しき事態だと思います。


 しかも下着というのもギリギリの布面積があるだけの紐パンですし、繊細なレースが施されたガーターベルトでストッキングブーツを止めているだけというどこからどう見ても変態チックな格好で……ソシャゲの高レアキャラみたいな恰好といえばとても良い装備に見えるのかもしれませんが、そんなドレスを着る方の身にもなって欲しいものですわ!


(本当に…ターナー神官長がいうような性能がありますのよね?)

 いくら自分のスタイルに自信を持ちすぎているといっても恥ずかしいものは恥ずかしいですし、ここまで露出が多いと防具としての役割を担っていないような気がしてしまうのですが……ターナー神官長が言うには女神の七色(魔法の力)を纏っているから大丈夫なのだそうです。


 むしろ鋼鉄製の全身鎧を楽々と上回る防御力を誇っているので安心して欲しいと太鼓判を押されてしまったのですが、こんな破廉恥なドレスを着たまま人前に出ていかなければいけないのは防御力以前にただの罰ゲームでしかなくて……。


(それに…んっ、この感覚には慣れませんわ)

 神躯を使っている状態で力むと胸の奥くの方(神躯のある場所)から甘く痺れるような感覚が広がり汗ばんでしまうのですが、極限まで研ぎ澄まされている状態なので汗が流れ落ちるだけで変な声が出そうになってしまい……ゾワゾワとした感触に顔から火が出そうですし、都市内で防衛戦を繰り広げている人達が見上げる(下から覗かれる)だけで見えてはいけない場所が丸見えになってしまうのではないかという奇妙な緊張感がありました。


 いえ、まあ……距離があるので見えないとは思いますし見えていないと信じたいのですが、見えるかもしれないという状況に私の心臓がバックンバックンとしてしまい……胸を覆っている前垂れも所謂乳暖簾という奴ですし、固定されていないので揺れて弾む度にその下に隠れているピンク色の蕾がチラチラとしているような気がしてしまいます。


(何の罰ゲームなのですか…これは)

 神躯に耐えられる物が他になかったという理由でドレスを着ているのですが、いくらなんでも酷すぎるとターナー神官長に直談判をした結果「折角の巨乳を隠してしまわれるなんて勿体ない!」と押し切られてしまい……何でもマリエラ様が豊かなお胸をお持ちなので大きな胸には新しき生命を育む豊穣の証であるという宗教上の意味合いがあるのだそうです。なのでマリエラ教の衣装(宗教的・儀式的な衣装)は胸を強調するような物が多く……。


(わかります、巨乳が豊かさのシンボルになりやすいというのは千歩譲って理解を示しましょう…です、が!そういうのは石器時代の土偶辺りで止めておいてくださいませ!!)

 因みにマリエラ教では雄々しい胸筋(男性の雄っぱい)も信仰の対象のようですし、そういう女神様の影響なのか転移した時にしれっとバストアップもしていますし、胸の感度がとんでもない事になっているので気を抜くと……その、母乳が……いえ、ターナー神官長が言うには聖乳(せいにゅう)というとても神聖な物だというのですが、出る場所が同じならもうほとんど母乳みたいな物ですわ!


 何が違うのかがサッパリですし、このままだとヌラヌラになってしまった前垂れに擦れた私の乳首が大変な事になってしまうのですが、宗教上の理由でこの手の衣装はノーブラがデフォなのだそうです。


 というのも愛と豊穣を司るマリエラ様は裸で描かれる事が多くて……正確には(聖氣)を纏った姿でお目見えになる事が多いのですが「女神様が裸なのだから我々も肌を出すべきだ!」という根源派と「いやいや、流石に丸出しはどうかと思うぞ?」という修正主義者の間で激しい宗教戦争が起きているようで……って、本当にくだらない争いですわね!


 ただ根っこのところが女神様に対する信仰の在り方というセンシティブな話題のようでして、血で血を洗う争いの後にヴェールや前垂れなどで大事な場所を隠すという折衷案が採用される事になったのだという話を聞いた時はあまりにも低俗な争いに頭痛がしてしまいました。


 せめてニップレスのような物があれば良かったのですが、人体に優しく(かぶれず)剥がしたい時に剥がせる接着剤がこちらの世界にはなくて……敏感な所をキュっと縛り付けるかブラブラさせるかの二択だと言われてしまうとどっちもどっちのような気がしてしまいます。


 こうなったらスカートの生地(一部)を引き裂きブラの代わりにしてやろうかと思ったのですが、ドレスには自己修復能力があるので手直しする事も出来ないようで……試しに端の方を斬ってみると光の粒(聖氣)となって消えてしまい、別の場所から持ってくる事が出来ませんでした。


『アリシア様…どうですじゃ?力の制御は出来ておりますか?』

 なんていうとんでもない辱めを受けながら飛行を続けていると、ターナー神官長の声が聞こえて来て(テレパシーが届いて)……。


『問題しかないですが…大丈夫ですわ』

 律儀に念じ返してみるのですが、テレパシーというものが初めてすぎてこれで合っているのかがよくわかりません。


 こういう芸当が出来るのも女神の神躯を取り込んだ事でチャンネルが繋がったという感じで……ごくごく普通の神官達や使徒の皆さんの考えている事は『おっぱいがでけぇ!?』くらいしかわからないのですが、ターナー神官長のように修行を積んだ人の場合は考えている事を相手に伝える事が出来るのだそうです。


『ふむ…よくわかりませんが、やる気に満ち溢れているご様子…私もすぐに向かいますので、アリシア様も無理はせず…まずは神躯に委ねて慣れていくところから始めるのがよろしいかと』

 考えている事(憤っている事とか)が中途半端に伝わってしまったのかよくわからない納得の仕方をされてしまったのですが、繋がっている間は考えている事(モヤモヤしている)が伝わってしまうという事実に顔から火を吹きそうで……とにかくよくわからないアドバイスと共にテレパシーが途絶えた事に安堵の息を吐く事になりました。


(距離によって減衰するみたいですし、伝わってしまう事に対しての良しあしがあるのかもしれませんが…こうして連絡を取り合えるのはアドであると思い込むしかないですわね)

 こちらの世界にはスマホのような便利グッズがある訳ではありませんし、何かしらの代替え案があるというのは良い事なのですが……ウズウズと湧き上がって来てしまう羞恥心との戦いになるのかもしれません。


(別に、私だって…好き好んでこんな格好をしている訳ではありませんのに)

 バッサバッサと翼を動かすたびにブルンブルンと揺れてしまう形が良すぎる爆乳が小憎らしいですし、どうしても集まってくる視線のせいで身体が火照って動悸がとんでもない事になってしまうのですが、何が一番酷いかといわれると彼らが純粋に「凄ぇ!?」と思っているだけだという事でした。


(本当に…信仰の対象になっておりますのね)

 嫌らしい視線を向けて来るどころか拝み倒す勢いなのですが、彼らが純粋な信仰心を持っていれば持っているほどこの世界の常識がおかしいという事で……。


「とか、考えている場合では…ありませんわ!」

 生理的な反応で敏感な先っちょがムクムクしているのですが、急な突風に捲れた前垂れと冷たい空気に身体が跳ねてしまい……慌てて前垂れを押さえて悶えていると遠すぎるせいでよく分かっていない地上の人達から「天使様頑張れー」とか「魔物達に負けないでー」とかいう声援が飛んでくるのですが……これはこれで滅茶苦茶恥ずかしいですわ!


(くっ、とうに…物凄く気楽に言ってくれますが)

 眼下に広がる凄惨な出来事と私の身の上に起きている悲惨な出来事のギャップで(寒暖差で)風邪をひいてしまいそうなのですが、見られたからといって死ぬわけではないですし……多くの人命がかかっておりますので恥ずかしいという理由だけで逃げ帰る訳にはいきません!


(私が…なん、とか…しませんと!)

 数万人規模の神殿騎士団と言っても近隣に分散しているのでファティエラ(私達が居る都市)に駐在しているのは民兵(義勇兵や自警団)を合わせて1万程度で……ターナー神官長がある程度の準備をしていると言っていたようにごくごく普通のザコモンスターとは渡り合えていますし、遠目にもわかりやすいピンク色の鎧を着たアンジェリカさん達が奮戦しているのが見えたのですが……多勢に無勢で数を頼りに押し寄せて来るモンスター達には手を焼いているようでした。


(だからといって、慣れていない私が間に入っても仕方がありません(連携がとれません)し…ザコ敵を虱潰しにしていくのも面倒ですわ、つまり私のお相手は…アイツですわね!)

 押し寄せて来る魔物達の中で最も目立っている巨大な化け物、頭高50メートルはあろうかという5つ首のヒュドラが東門のすぐ近くで暴れているのですが、巨大すぎる怪獣が地響きを立てて動き回るだけで城壁が崩れて尋常ではない被害を出し続けていました。


「GYUAAAAAxx!!!」

 流石にそのような巨大生物に接近戦を仕掛けるようなお馬鹿さんはいないので轢き潰されていくのは魔物達だけなのですが、城壁に取りつけられている大型のバリスタや色とりどりな魔法攻撃でも碌なダメージを与えていないようで……対する5つ首のヒュドラが発する炎のブレスや雷といった攻撃で城壁に張りついている(防衛についている)騎士達が吹き飛ばされているようですし、あの化け物を倒す事が出来なければギリギリのところで保っている均衡が破られ防衛線が突破されてしまうのかもしれません。


「ああもう、ウダウダと考えていても仕方がありませんわ!やってやりますわよ!」

 怪獣の雄叫びに怖気づいてしまいそうになるのですが、帝国側の最大戦力(5つ首のヒュドラ)を倒す事が出来れば一気に形勢を逆転させる事が出来るのかもしれませんし、このような恥ずかしい衣装とはさっさとおさらばしたいという切実な想いとマリエラ様から頂いたチートパワー(女神の神躯)を信じて大ボス狙いをさせてもらいますわ!

※多少蛇足になるので欄外に載せておきますが、一応この世界にも大型の通信機(地上用)はあります。ただ設置する場合はそれなりの広さが必要になってきますし、送信するのにとんでもない魔法力が必要となります。そして送るだけ送って受信できるかは相手次第というとんでもなく効率が悪い物で、よほどの事が無ければ使用される事が無い忘れられた長物となっていたりします。

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