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25:雨宮硝子さんの事情と第三勢力ですわ

 色々あって自己紹介から始める事になったのですが、タマという名前の垢嘗めスライムを連れた女性は雨宮(あまみや)硝子(しょうこ)さんと名乗りまして、比較的最近この大陸に渡って来たばかりの旅人なのだそうです。


「母国では色々とありまして…訳あって武者修行の旅に出る事になりましたの」

 なんて濁されたのですが、簡単に話してくれた事情によると主家で飼われていたポチという瑞獣(ずいじゅう)が死ぬ時に渡してくれた(神躯)が原因で国元を追われてしまい、だからといって折角貰った力を無下にするのも悪いような気がしてという感じで人助けの旅を始めたのだそうです。


 そういう流れで最近とんと良い噂を聞かないこの大陸でも何かしらの厄介ごとがあるのではないかと思って渡って来たのですが、モーストーンという大陸南端にある港町を目指している途中の船旅で嵐にあってしまい……ノーンという漁村に流れ着いてから色々あって今に至るのだそうです。


「そう…んっ、いう…町が、ありますの?」


「どう、でしょう?モーストーンという港町は塩の産地として有名ですが、ノーンという名前は…口ぶりからして小さな漁村のようですし、そのレベルとなると私が知らないだけかもしれません…というよりそろそろ放してくれませんか?アリシアが嫌がっているのが見えないのですか?」


「そ、そう…んんっ、です!あの、そろそろ…?」

 アンジェリカが言うにはモーストーンというのは貿易都市として発展してきた歴史のある港町で、他国との交流が滞ってからは海産物や塩の産地として有名になっているのだそうです。


 そしてノーンという漁村についてはよくわかっていなかったのですが、雨宮さんが言うには掘っ立て小屋が立っているだけの小さな漁村のようでして……。


「荒れ狂う海を泳いで来たので証明する物をと言われても困りますし、目印となるような物も少ない場所なのであちらの方角と言う事しか出来ませんが…あまり母に対していけずな事を言うものではありませんよ?悲しくて涙が出て来てしまいます」


「待ってください、わかり、わかりましたからぁああ!乳首をコリコリと弾くのはおやめっ…やめっ、ひぃっ、んんんっ!!?」

 (わたくし)を抱きしめたまま撫でまわしてきている雨宮さんに対して抗議の声を上げていましたし、気の弱い人間なら竦み上がってしまいそうな殺意のこもったアンジェリカの斬撃すらヒョイっと躱しながらニコニコと笑っていられる雨宮さんの胆力が凄まじいですわ。


(力の差があり過ぎて、振りほどく事も出来ませ…んっ、し…ひっ、んんっ、こと…断ればっ、いい…のっ、ですが!決して、気持ち良いからとかではありま…んっひぃ、そんな所をカリカリするのは駄目ですわぁあああ!?)

 雨宮さんのお母様はこうしてワシャワシャと撫でまわしてくる人だったようですし、こういうスキンシップが当たり前の世界だと諦め撫で回されていたのですが、紐のような下着の上から気持ちの良い所(クリ〇リス)をカリカリとされると強張ったように力が入ってしまい……雨宮さんからしたら私を気持ちよくさせてあげたいという愛情のこもったスキンシップ(愛撫)なのかもしれませんが「ここで消しておくか?」なんて視線で睨みつけて来ているアンジェリカの視線が痛すぎますし、このままでは血で血を洗う壮絶な殺し合いが始まってしまうのかもしれません。


(だか、らっ、振り、振りほどいて…あんっ、あっ、だめっ、タマも駄目ですわ…そんな所に吸い付いては!?おぉおおんっ!?)

 溢れた聖乳に触発されたのだと思いますが「みぃー」っと飛びついて来たタマが私の(弱点)に吸い付いて来ると一気に押し寄せて来た絶頂感に頭の奥が弾けて真っ白になってしまい……。


藤倭皇国(とうわこうこく)…でしたか?そちらの国では嫌がる人にも無理やり迫るという野蛮な風習がある…って?」

 アンジェリカが吸い付くタマを引き剥がしてくれたのですが、引き剥がしたタマを速攻で雨宮さんが奪い返していたりとやり取りが忙しいですわ!


「うふふ、無理やりなんて…神躯持ちなら適度に抜いておかないと暴走してしまいますし、どこからどう見ても母と子の仲睦まじいスキンシップではありませんか…こうして母の手で気持ちよく蕩けて…あぁ、ああ…母は舐め回したいという欲情を押し込めるのに必死だというのに」


「みーぷっ!」

 なんてポヨンポヨンと揺れているタマも合わせると4人でイチャイチャとしているのがよほど嬉しいのか頬を染めながら満面の笑みを浮かべている雨宮さんは聞く耳を持たずという感じですし……というより国元を離れすぎて人肌が恋しすぎるのかもしれませんが、スキンシップが色々とバグり散らかしていますわ!


(雨宮さ…んっ、の、国、では…こ、う…いう、のが…普通、なのかもしれませんが)

 藤倭皇国だと性別的なものは些末な問題と捉えている節がありますし、雨宮さんが力を引き継いだという母性が強すぎる瑞獣の影響を受けすぎている(アンのチ〇ポと同じ)のかもしれませんが、とにかくナデナデが止まらないのが困りものです。


「それに…先程から母だとか家族だとか言っているのも無理やりのこじつけでは?」

 口答えをする度に気持ち良すぎるお仕置きを受けてしまうのでただただ我慢する事しか出来なかったのですが、アンジェリカは雨宮さんの魔の手から私を助け出そうと取っ組み合いの力比べをしていまして……。


「あら~?娘の彼氏というのならそれはもう家族も同然ではありませんか?」


「べ、別に彼氏でも…!というより私は女で…いえ、その…えーっと、とにかく!話をはぐらかさないでください!!」

 手玉に取られているアンジェリカが可愛らしいといえば可愛らしいのですが、雨宮さんと話していると本当に色々な感覚がバグってしまいそうですわ。


(と、とにかく…あ…悪人でなければヨシですわ!)

 汗とか色々なモノが噴き出し逆上(のぼ)せあがった頭では結論を出す事が出来ませんし、旅は道連れ世は情けとか長い物には巻かれろの精神でナデナデされる事を受け入れながら話を合わせていた方が無難でして……そんな雨宮さんの身の上話で一番驚いたのが37歳という年齢だったのですが、どう見ても20代前半にしか見えないので本気で驚いてしまい……神躯持ちは聖氣が溢れて若々しさを保っているので実年齢とかけ離れた見た目をしている事がよくあるのだそうです。


「2人も神躯持ちなのでしょ?じきにわかりますよ」

 とか年長者らしいアドバイスをしてくれる雨宮さんなのですが、ニコニコと笑う笑顔がアラフォーとは思えないのは朗報でもありますのよね。


 とにかく雨宮さんの生い立ちとかこの国に来た理由はわかったのですが、なんでこんな林の中に居るのかと申しますと……。


「つい先ほど話しをしましたが、不覚にも海に落ちて(難破して)しまいまして…刀の整備とか調整をしたいと思い旅をしていたのです」

 なんて言いながら見せてくれたのは紫雲斬鉄(しうんざんてつ)という全長3メートルのシンプルな造りの大太刀でして……かなり特殊な製法で作られた紫色の刀身を持つ刀には黒縞の入った白いリボンで拳大の鈴がつけられていました。


「別に錆びるとかいう物でもありませんが、こういうのは気持ちの問題ですし…丁度ガルガナークさん達も腕利きの鍛冶師(ドワーフ達)が住むという場所(不帰の森)に向かう事になりましたので、それならご一緒にという事になったのですが…何故かその途中でこの国の同心達(兵士達)に追いかけ回される事になって困っておりましたの」

 なんて頬に手を当てている雨宮さんが言うとあまり困っているようには思えないのですが、とにかく途中で帝国兵に見つかり色々あった結果追いかけ回される事になったのだそうです。


「押し通ってもよかったのですが、少々厄介なのが混じっていまして…ほら、人を連れていますでしょ?流石に大暴れするというのも大人げないかと悩んでおりまして」


「ちょっと待ってください、少々厄介な相手というのも気になるのですが…連れが…いるの、ですが?もしかしてそれは…今こちらに()()()()()()()()連中と関係していたりしますか?」

 なんて何気ない様子でペラペラと喋っていた雨宮さんなのですが、不意に出て来た人名に対してアンジェリカが反応していたのですが……え、誰か来ますの?


「あらあらうふふ…ええ、ええ…どうやら母の帰りが遅いと迎えが来たようですね」

 なんて雨宮さんが笑っていたのですが、撫で回されて蕩け切っていた私には寝耳に水すぎますわ!


(ま、まだ近くにはいないようですが、と、とにかく放して…ってぇええ!?)


「っと…大丈夫ですか?」

 流石にお迎えが来たという事で雨宮さんも解放してくれたのですが、いきなり放されたのでつんのめるように転倒しかけてしまい……アンジェリカがすかさず支えてくれなければ顔面から落下していましたわ。


「え、ええ…ありがとうございます、それで周囲に…ひっ!?」

 そうして若干獣臭さが増したような気がして顔を上げると薄暗い木々の間からギラギラとした視線が覗いていまして……雨宮さんの話では敵ではないみたいなのですが、敵意剥き出しの視線やら口元から覗く鋭い牙とかが鋭すぎてビックリしてしまいます。


(じゅ、獣人とかいう人達でしょうか?)

 見た目は二足歩行をしている動物という感じで愛らしさが……いえやっぱり獣っぽすぎて全然可愛くなかったのですが、その数は十人前後くらいでしょうか?石の槍や石の斧といった原始的な武器を構えておりまして、その集団の中から毛皮の腰巻だけを身に着けた鈍色(濃い灰色)の毛並みを持つ狼っぽい人?が出て来ました。


「貴方が来たのですか…出来たらもう少し話の分かる人に来て欲しかったのですが」


「うるせぇよ!つーかてめぇ…見に行くっつったっきり帰ってこねぇったあどういう了見だ?まさか毛無し共が集まって俺達を嵌めようっていうんじゃねーだろうなぁ!」

 やや猫背の直立した狼という見た目に反して発音がちゃんとしていたので会話が成り立ちそうなのですが、言われている内容は物騒すぎてツッコミどころがありすぎますわ。


(アンジェリカも驚いているようですし…獣人って珍しいのかしら?)

 その辺りの一般常識がよくわからなかったのですが、コソコソとアンジェリカが教えてくれた話によると獣人というのは脳筋寄りな性格をしている人が多いせいで他種族と衝突する事が多く、独自のコミュニティーを築いて勝手気ままな狩猟生活を送っている人達なのだそうです。


 因みにそういう種族だという事を彼ら自身が認識しているので他種族との交流も進まず……というより何かしらのトラブルがあったら腕っぷしで白黒をつければ(解決をすれば)良いなんていう人達なので代金の踏み倒しは当たり前、勝者が敗者の獲物を持っていくのは当然の権利なんていう考えでは馴染めないというのもしょうがない事なのかもしれません。


「ゴロ、控えろ!梢子、帰りが遅いから迎えに来た…が、そいつらは何者だ?」

 とにかくそういう人達が私達を囲んでいたのですが、一触即発の空気を破るように出てきたのはやや背の低い……というより年齢が若いのでしょうか?11歳から12歳くらいのトラかライオンっぽい見た目の女の子が出てきたのですが、この子は獣と人間の部分が半々くらいですし、獣人によって獣と人間の比率はまちまちといった感じなのでしょう。


「へい、お嬢…例の毛無しと怪しげな奴らがおりまして」


「ふむ…確かに怪しいが、良い匂いだ!」

 女の子は金茶色のツリ目ながら可愛らしい顔立ちをしておりまして、お日様の匂いがする琥珀色の髪を石や木材で作った飾り紐で編んで後ろに垂らしていますし、ピクピクと動いている小さな耳や房の付いた尻尾が少女らしい好奇心に揺れていました。


 たぶんこの女の子が群れのリーダーをしているのだと思いますが、鼻をフンフンと引くつかせながら近づいて来たかと思うとよくわからない理由で合格点(良い匂い)を貰えたようで……それは良いのですが、こんな状態で匂いを嗅がれると顔が火照ってしまいますわ。


「確かに良い匂いをしていますし良い乳を出しそうな奴ではありますが…所詮毛無しですぜ?いつオレ達を裏切るかわかりやせん!」

 初対面である事を考えると少しばかり失礼な物言いをされてしまったのですが、折角小さな女の子が良い感じに纏めてくれそうな雰囲気なのにこの人は何を言っているのでしょう?


「ちょっと待ってください、お宅のお嬢さんも良い匂いだと言っておりますし?」


「ゴチャゴチャうるせぇよ!毛無しがナマ言ってんじゃねぇ!」

 平和的な解決方法(話し合い)で何とかできないかと思っていたのですが、喧嘩っ早すぎる鈍色獣人がいきなり殴り掛かって来てしまい……ここで格好良くカウンターでも決めたりすればいい感じに力の差を見せつけられたのかもしれませんが、あまりにもいきなりすぎて棒立ちだった私は鈍色獣人のストレートパンチを顔面で受ける事になりました。


「な、ん…だと!?」

 ただアンジェリカもスルーするくらいの攻撃では上級神躯持ちの私の顔面は抜けませんし、ここで痛がっていたらハッタリにもならないのでやせ我慢を動員して胸をはりました。


「その程度の攻撃では…効きませんわ!」

 ゴロさん的にはかなり本気で殴り掛かって来ていたのか涙目になりながら胸を張っている私に対して慄いていたのですが、拳を突き出したまま固まっていたゴロさんの肩をアンジェリカが叩きまして……。


「次は、こちらの番ですね」


「なっ、いつのま…ぎゅべらっは!!?」

 力を見せつける為といっても私が殴られるのを見逃す事になったアンジェリカの怒りがピークに達しているようで、ニッコリと笑いながらの右ストレートでゴロさんがノックアウトされていました。


「うむ、見事だ!が、ゴロー…大丈夫か?死んでないか?」

 おもいっきり吹き飛んでいったゴロさんがピクピクと痙攣していますし、周囲の獣人さん達もザワザワとしておりまして……殴られたから殴り返しただけではあるのですが、少々やり過ぎてしまったのかもしれません。

※あまり本編と絡んでこないのでサラっと流した雨宮さんの事情なのですが、雨宮家は皇国守護の任についている軍事部門のトップに君臨している家系でした。


 そういう家系に生まれた麒麟児として将来を嘱望されている子供でしたし、皇国の権威の象徴の一つであり国を守護する瑞獣(神獣)でもあるポチと親子のように育つ事になります。これは武門の家系すぎて一族郎党で魔物狩りに勤しんでいたせいで人手が足りなかったという理由もあるのですが、幼少の頃からある程度の友誼を結んでおこうと比較的親しかった天子の元に預けられていたからです。


 因みにポチという名前は瑞獣を捕まえてきた大昔の天子が冗談半分で名付けた名前なのですが、とにかく皇国とか皇室とかの権威付けの為に飼われていたポチが寿命で亡くなった時に我が子のように慈しみ育ていた梢子に力を譲る事になり、それが大問題になって「瑞獣の意思だ」とする一派と「瑞獣の力を取り込み皇室に弓引くつもりだ」とか言う一派と「もいっそのこと天子に嫁がせたらどうだ?仲が良いのだろ?」とかいう人達の争いに発展してしまい、そういうゴチャゴチャとした問題の解決策として島流しに近い形で国外追放を言いつけられたのが旅の始まりです。


 最初の数日は流石に落ち込んだのですが、折角ポチから譲り受けた力ですしと開き直って生来の大らかさもあって武者修行気分で諸国漫遊をしているといった感じです。


※事実上の鎖国みたいな状態のザインブルグに船旅でやって来たの?ってなるのかもしれませんが、近くまで乗せてってもらってみたいな感じの個人契約で『他国⇔ザインブルグ』の定期便がある訳ではありません。そして国交が保たれていた時に使われていた航路をなぞるだけの安全な船旅の筈だったのですが、何故か急な嵐にあって獣人達の拠点の一つであるノーンに漂着、それからいろいろあって現在に至るといった感じです。


※神躯の所持者と年齢の問題ですが、かなり若く見える人と神躯の制御に失敗して精気を吸い取られたように年老いて見える人の2パターンがあります。そしてアリシアとアンジェリカはほぼ確実に前者となる予定ですし、アリシアはその事を喜んでいました。

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