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19:ベルザ解放作戦ですわ!

 マリエラ様が見守ってくれているような青空の下、ヴァーナルメンバーとベルザに駐留する帝国軍が睨み合っていたのですが……こちら側の戦力は(わたくし)達が作り出したポーションによって戦線復帰を果たした人達を含めた2800人という非戦闘員の後方支援メンバーを除いたほぼ全力に近い人数で、対する相手はファティエラの近くでフラフラしていた3000人の内の一部が復帰して来た6000人近くの兵力がベルザに集結しているのだそうです。


(これだけ掻き集めても半分以下ですと…)

 状況としては数の少ない(ヴァーナル)方が大軍(帝国軍)を薄く包囲しているという包囲戦になっておりまして……夜襲や奇襲を仕掛けようにも相手側には雲霞のように犇めいている魔物達が壁として立ち塞がっておりますし、人間と魔物では暗視能力に差があるので下手をしたら一方的に不意打ちを受ける可能性があるので真昼間の決戦を選ぶしかなかったのだそうです。


(苦戦は必至ですわね)

 因みにこの時の私は純白の翼(滅茶苦茶目立つ翼)を仕舞い込んでいたのですが、本格的な戦いに備えて久しぶりにウェディングドレス風の聖衣や天使の羽を模った髪飾りを付けておりまして……多少の羞恥心や注目度より命が大事にという事でこの衣装を着ないという選択肢がありませんでしたし、前垂れだけで隠されている胸がプルンプルンと揺れたり紐パンのような下着が丸見えだったりと周囲の人達の視線を釘付けにしているような気がいたしますが、この時ばかりは曖昧な笑みを浮かべて誤魔化す事しかできませんでした。


「お前達!ここまで来たら多くは語らん!今日、この日、帝国の圧政を跳ね除けベルザを解放するぞ!!俺達の手で平和を取り戻すのだ!!」

 そういう状態から始まった戦いなのですが、相手は相手で無理やり集められて不機嫌そうな魔物達が同士討ちを始めているようで……敵側の混乱を眺めながら黒獅子の全身甲冑を着込んでいるヴォッサム将軍が激励をおこなうと「おおおおぉおおお!!」と気合の入った声が上がるのですが、将軍が率いる1500名は囮部隊として敵を引き付ける役目を担う事になっていました。


「アリシア様、ルヴァニス(アンジェリカ)殿…将軍が突入したタイミングで我々も動きます」

 気勢を上げる将軍達を眺めておりますと、ポーションで左目を治してからは少しだけ畏まった態度になってしまったゲオルグさんが話しかけてきました。


「わかりました、お願いします…が、将軍は大丈夫なのですか?」

 作戦の概要としてはヴォッサム将軍が帝国兵を引き受けつつ全体の指揮を執る事になっていて……というより実働メンバーが一気に増えすぎた(1日2日で倍以上)せいで将軍くらいしか全体の指揮を執る事が出来なくなっていたのですが、将軍達が時間を稼いでいる間に突入部隊を率いるゲオルグさん達がドゥークーさん(ベルザの悪代官)を捕らえるという手筈になっておりまして、立ち塞がる魔物が居たら私達が排除する事になるのだそうです。


「想定より戦力が増えているので状況は好転している、それに…将軍なら大丈夫だ」

 ゲオルグさん達のヴォッサム将軍に対する信頼は厚いもので……彼も上級神躯持ちですし、その辺りに居る雑兵や魔物達に後れを取る事は無いのだそうです。


「それでも将軍の事が心配だというのでしたら…我々がさっさと目的を達成すれば(代官を捕らえれば)良い」

 なんて笑うゲオルグさんなのですが、確かにその通りだと頷き返しました。


「行くぞぉぉおおお!!弓兵射撃開始、タイミングを合わせろ!魔法兵は独自の判断で発射!連射するより数を増やせ!!」

 突入部隊に所属している私達がそんな会話をしておりますと、開戦の合図となるヴォッサム将軍の号令と太鼓やラッパの音が鳴り響きまして……囮部隊の付け焼刃にも近い(移動中に練習しただけ)雑多な攻撃が始まるのですが、そんな攻撃を受けて帝国軍も動き出しておりまして……素人目に見てもその動きは無秩序に動いているように見えますし、このままでは乱戦に巻き込まれて磨り潰されてしまうのかもしれません。


(数が数なので心配していたのですが…無用の心配だったようですわ)

 このままでは不味いのでは?と懸念したのですが、帝国軍に所属していた時に使っていた黒い竜と剣が交差しているザインブルグ帝国の紋章が入っているフィートシールドと刀身とガード()が一体化した騎士剣を振るうヴォッサム将軍が進んだ先ではダンプカーでも突っ込んで行ったのかというような勢いで魔物達が跳ね上げられていますし、赤黒い電撃(聖氣)を周囲に発しながら縦横無尽に立ち回って敵側の耳目を引き付け綻びを生じさせていました。


「そろそろ我々も…戦闘が始まっているからな、馬鹿でも無ければ兵を潜ませていると思うのでご注意を…竜滅の騎士(アンジェリカ)殿もアリシア様をお願い致します」


「言われなくてもわかっている、アリシアの事は私が命に代えてもお守りいたしますのでご安心してください」

 フフフと笑い合う2人(ゲオ・アン)のやり取りが頼もしいのですが、本当に命を賭けるような事がなければと無駄にハラハラしてしまいますわ。


「もう、2人とも!そんな事を言い合っている暇はありません!突入しますわよ!」

 私達は完全復活を遂げたゲオルグさんが率いる300名の選抜ヴァーナルメンバーと共に別動隊が押さえてくれていた地下通路を通ってベルザの市街地に突入するのですが、部隊単位で通過できる通路となってくると数が限られているので私達が侵入してくるルートは特定しやすかったのでしょう、入り込んだ先にはおっかなびっくりといった様子の帝国兵が配置されておりまして……。


「舐められたものだな」


「き、来たぞ!構…ぎゃっ!?」

 ゲオルグさんが狼狽える帝国兵を見据えながら吐き捨てたかと思うとスルリと近づき斬り殺していたのですが、あまりにもあっさりとした殺人に引いてしまいそうですわ。


(これがこちらの世界の常識といっても…なかなか厳しいものがありますわね)

 その様子に若干眉を顰めてしまいましたし、アンジェリカが心配そうな視線を向けて来ていたのですが……こんな事でしょげている場合ではないと気力を振り絞りました。


「だ、駄目だ…し、仕方がない…アレを出すぞ!」

 そうして斬り込んだゲオルグさんを皮切りにヴァーナルメンバーが突撃し……バタバタと倒れる味方(帝国兵)を見ていた指揮官と思わしき人が合図を送ると檻の中に入れられていた改造オーガ……強靭なオーガと再生持ちのトロルをかけ合わせた特殊個体なのですが、並程度の騎士では数百人単位で斬りかかっても手こずるような相手を出してきました。


「あれは私達が受け持ちます!退きなさい!ジャッジメント…ディザスターぁあああ!!」

 ここまで来たら潜むも何もありませんし、当初の役割通りに立ちふさがる魔物を受け持とうと翼を出してインペール(聖銀製の細剣)を構えるのですが、先手必勝で叩きのめしてあげますわ!


(私も…レベルが上がっておりますのよ!)

 最初は必殺技を放つだけでフラついていたのですが、あれから魔法の練習を続けて聖氣の扱いにも長けて来ておりますし……私がどれだけ聖氣を搾り取られてきたのかという事を教えて差し上げますわ!


「xotOOO…!!?」

 そうして渦巻く聖氣の槍で貫かれた改造オーガが爆散すると味方側(ヴァーナルメンバー)から歓声があがり……天使の羽の神々しさに拝みだす人までいる始末なのですが、とにかく今はそんな事より突撃あるのみですわ!


「なっ!?ば、馬鹿なっ、ひっ、逃げ…ぐっ、ぁああ!?」

 切り札があっさりとやられてしまった事に腰を抜かしていた帝国兵が逃げ出そうとしていたのですが、追いすがったヴァーナルメンバーが止めを刺していきまして……なかなか凄惨な光景が目の前で繰り広げられていたのですが、すかさずゲオルグさんの制止が飛びました。


「雑兵は無視しろ!先を急ぐぞ!」


「しかし!こいつらに俺の両親が…こいつらがっ!!」


「わかっている!が、今は時間が惜しい!ドゥークーの野郎に逃げられてもいいのかっ!」


「ッ!?わ、わかった」

 散々帝国兵に虐げられていた人達からしたら憎き敵が目の前で腰を抜かしていたのですが、武器を握る手から血が滴る程の憤りを押さえ込みながら庁舎に向かう事になりまして……。


「敵の指揮官は見誤りましたね、あんなのが居るのなら壁を崩して通路を塞いでおけばいいのに」

 そんな会話を聞きながら並走してくれているアンジェリカがポツリと呟いていたのですが、たぶん彼らは守るように言われている都市部を破壊するという発想がなかったのでしょう。


(もしくは通路を破壊した責任を取らされる事を嫌ったのかもしれませんが…何にしても私達にとっては都合が良いですわ)

 とにかくそのようなささやかな抵抗を排除しながらドゥークーさんの居る……見張っていた人達の報告では移動をした形跡がないという庁舎に突入するとあちらこちらから悲鳴が上がるのですが、残っているのは状況がよく分かっていない一般的な職員や帝国兵が右往左往しているだけで肝心要のドゥークーさんが不在でした。


「くそっ、どこに行きやがった!?相変わらず逃げ足の速い奴め!!」


「落ち着け!脱出用の通路は他のメンバーが押さえている、そちらからの連絡は…無い!必ずどこかに隠れている筈だ!残っている奴らから聞き出せ!拷問しても構わん!」

 なんて殺伐とした状況について行けない私もオロオロとしていたのですが、早速職員を締め上げていた人が戻って来まして……。


「ゲオルグ、大変だ!新しい通路が!ドゥークーの野郎がそこから逃げたようだ!」


「なっ!?くそっ、どこだ!!」


「こっちだ!」

 と、ヴァーナルの人達も把握していなかった新しい隠し通路が見つかってしまい……これは不味い状況ではないのでしょうか?


「誰か将軍に合図を…大丈夫だ!短期間で作った物ならそう遠くには…逃げたといってもたかが知れている!」

 ゲオルグさんが動揺している味方を静めようと声を荒げるのですが、その言葉はどこか自分自身を納得させようとしているようでして……とにかく私達は新しく作られたという通路を見に行く事になったのですが、向かった先にあったのは礼拝室の床下収納に偽装された地下通路でした。


「くそっ、礼拝堂(神々が見ている場所)に隠し通路を作るとは悪趣味な…しかも周到な事に結界で蓋を!誰か魔導士を連れて…」


「どいてください、これくらいなら破壊可能です!」

 強度のある結界ではなかったのでアンジェリカのランプデトネイター(盾剣)で叩き割る事が出来たのですが、その向こう側にあったのは最低限の補強が施されている地肌が剥き出しの地下通路でして……ご丁寧に誰かが通ったと思われる足跡が残っていたりと怪しさがプンプンと漂って来ていました。

※アリシアの目線ではよくわかっていなかったのですが、ヴァーナルの詳細な人員配置は1500の囮部隊(将軍が直率する主力と見せかけた囮部隊)先行している150の工作部隊(通路の確保や都市内での情報収集を行う)300の突入部隊(アリシアやゲオルグさん所属する本当の主力)850の封鎖係(工作部隊と協力して通路の封鎖を担当)200の後方支援要員(非戦闘員や医療や食料などの後方兵站含む)のトータル3000人が参加している事になっています。


 割合的に囮部隊の人員が多いのですが、これは復帰後まもなくすぎる人達(下手をしたら数か月寝込んだ後の決戦参加)が多かった事が関係しており、とりあえず人数が増えたら見栄えが良いだろうと配置された結果の産物です。


 ヴァーナルメンバーの精鋭(1000人)は将軍の囮部隊に500、ゲオルグさんの突入部隊に300、残りの200が各部隊の隊長や補佐役に任命されているといった感じです。

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