76 傭兵 VS 騎士団
前回のあらすじ
`Д´)オレエライ、オマエラダイテヤル
( ゜▽゜)わらかしよる
( ゜▽゜)ほんまやで
仲間を傷付けられ、怒りに燃えたバラフィの火炎が二人を襲う。
フローラに切り付けた張本人ゼッセルと―――そのゼッセルを止めようと、羽交い絞めにしているカラレイドの二人を。
「え!ちょっちょっとまてぇえええい!」
カラレイドの制止も空しく、炎は彼等の上半身を包むと巨大な松明を作りだした。
「がぁぁあぁあぁあぁ!」
「ゼッセル隊長!」
悲鳴を上げ、燃え盛る炎を消そうとゴロゴロ地面を転がるゼッセルと、無言で火を叩き消すカラレイド。
それを見た騎士達は気色ばんだ声を発すると、次々と腰の剣を引き抜いていく。
「おのれっ下等な傭兵めが!」
「騎士に手を出すとは、もはや許せん!」
騎士達が剣を手にバラフィへ詰め寄ると、傭兵側の女達もバラフィを守ろうと立ち塞がる。
「そっちこそフローラになんて事を!」
「これだから男は最低だってのよ!」
「お姉様に近づかないで!」
両者口々に怒声を上げると、叫ぶ勢いのままにぶつり、掲げた武器が打ち合わせた。
「貴様等も歯向かう積りか、愚かな奴らめ!」
「仲間がやられるのを、黙って見てる訳にはいかないわ!」
「は、安っぽい友情ごっこか。我々に逆らった事を後悔させてやる、この下郎どもが!」
「ここで何もしない方が後悔するに決まってるでしょ、このスカタン!」
言葉と言葉、凶器と凶器が鎬を削り、巻き起こった男女の争いは、いよいよその苛烈さを増していった。
「やっ止めんか!バカ者ども!」
髪先をチリチリと焦がしたカラレイドが大声で叫ぶが、興奮した騎士達は止まらず、武器を振るう傭兵達も聞く耳を持たない。
彼が炎を叩き消し、部下達へ制止の声を上げたのは極短い時間である。
しかしその僅かな間に闘争の炎は燃え広がり、そこかしこで傭兵と騎士に因る衝突が起こっている。
既に状況は、言葉に因る干渉を受け付けない段階へと及んでいたのだ。
「くそ、このままでは此方に被害が出かねんな・・・」
そう眉を顰めるカラレイドの一番の懸念は、騎士団員の損失にあった。
傭兵と揉めようがギルドと揉めようが、所詮は貴族で有る自分達が大きな罰を受けるなど有り得ない。
どれだけ此方に非が有ろうが、社会制度がそれを認めない。常に貴族の言い分こそが正しいのだ。
状況に因っては内々で叱責を受け、肩身の狭い思いをする事に成りかねないのだが、逆に言えばそこで終わる。
だが騎士団に損害が出るとなれば話が変わる、一山いくらの市民と違い騎士の単価はとても高い。
任務中ならば兎も角、息抜きに出かけて団員を失ったとなれば、その責がどこまで及ぶかなど想像もしたく無い程であった。
「・・・止むを得ん、一旦傭兵共を制圧するしかないか」
最早、穏便と言う、彼の望む決着は到底望めそうも無い状況の下、カラレイドは最悪の事態を避ける為に傭兵達の無力化を決めた。
「お前達、無闇に前に出るんじゃない。先ずは隊列を―――聞かんか貴様等!」
カラレイドはドスドス足を進めると、そこかしこで切り結んでいる部下を大声で、時には拳で付き従えると場の掌握を進めていった。
騎士達はクズだが、その実力は本物であった。
一時は乱戦により拮抗した両者の戦いであったが、カラレイドの指示で隊列を組み始めた騎士達は、女達を瞬く間に包囲した。
在る者は強かに殴り飛ばし、在る者は致命傷に成らない程度に切り付けると、一人また一人と叩き伏せていく。
「間違って殺すなよ、死体じゃ楽しめないからな」
「わかってるよ、貴族に逆らった事をキッチリ反省させてやらんとな」
「ひひひ、一人も逃がしゃしねーぜ」
順調に女達の大半を無力化した騎士達に余裕が生まれると、数と実力で勝る騎士達は戦闘の最中にも関わらず、そこかしこで女性への暴行に勤しみ出す者まで現れ出した。
ここでもまた、今しがた武器を叩き落とし女に飛び掛かった騎士が、その身を大地へと押さえ付けると、ふくよかな胸を隠す衣類へと手を伸ばしている。
「ぐへへへ、先ずは武装解除をしないとなぁ」
「いやっやめてー!」
身を捩り腕を掴む女の抵抗など物ともせず、馬乗りになった騎士は衣類を引きちぎりると、飛び出た肌と悲鳴に下卑た笑みを浮かべる。
「うひょーいいねいいね、もっと見せてくれよ、もっと聞かせてくれよ」
「うぅ男なんか、男なんて・・・」
涙目で睨み付ける女を楽しそうに見下ろした騎士は、次はその感触を楽しもうと、その肢体へと腕を伸ばしていく。
「その汚い手を離しなさい!」
そこへ鋭い気合と共に短剣が振るわれる。
騎士は慌てて身を捻り刃を躱すと、女の上から転がり落ち、自由になった女が顔を上げた。
「バラフィお姉様!」
「下がって体制を立て直しなさい! 出来るだけ固まって孤立しない様に注意して!」
「は、はい!」
背中越しに仲間の返事を聞くバラフィの目の前で、むっくりと騎士が上体を起こす。
「ちっ、いいとこだったのによぉ。邪魔してんじゃ「燃えなさい!」ぎゃひぃいーーー!」
騎士は苛立ち気に悪態を口にするが、すかさず飛来した炎が抗議の声を悲鳴に変えた。
「ふん、ところ構わず発情するなんて、貴方達ってホントに猿ね。鉄火場を甘く見るから、火傷する事になるよの」
「ぐぅぅっあぢぃいいいーーーー!俺の腕がぁーーー!」
「どうやら炎はお気に召さないようね。なら・・・止めはこっちで刺してあげるわ!」
そう言ってバラフィは短剣を振り上げると、火傷を負った腕を庇い尻餅を着く騎士目掛けて、手にした短剣を振り下ろした。
ガツンッ!と響く金属音。
彼女の短剣は、横から割り込まれた頑強な盾によって弾かれていた。
「ばかが、がっつくからそうなるんだよ。さがって手当てを受けてろ」
「た、たすかった! コイツはスキルも厄介だが、剣筋も鋭いぞ、油断だけはするな!」
「当然だ、スキル持ちのCランク、油断するお前が迂闊なんだよ」
盾を構えた騎士は、火傷を負った仲間の前に踏み出す。
「手の空いている者は援護しろ、単独で当たらず大勢で囲むぞ!」
「コイツ、隊長を燃やした奴だな」
「炎は厄介だが、距離を取れば対処は容易いぞ」
「散開しろ、包囲して攻め立てるんだ!」
続々と騎士達の援軍が加わると、バラフィは忽ち騎士達によって周囲を取り囲まれる事になった。
Cランクのバラフィの実力は騎士のそれを上回る。
更には火炎は戦闘に特化したスキル。
顔への直撃をお見舞いすれば、皮膚を焼き眼球を炙ると、熱せられた大気で肺すら焦がす力を持っている。
だが相手が徒党を組み、極上の防具で身を固めた騎士団が相手では、火炎のスキルを持ってさえ中々付け入る隙を見出せずにいた。
「まったく、連携だけは無駄に上手いんだから」
多勢に無勢。そこかしこで戦闘が行われる中、バラフィは仲間の援護にも迎えない状況に、このままではじり貧だと歯噛みをする。
(まずいわね、流石に消耗が激しいわ。余力が有る内にみんなを逃がしたい所だけど・・・なんとか場を動かさないと・・・)
焦る気持ちで思考を巡らせていると、その思いに答える様に状況に変化が訪れる。
「邪魔だどいてろ、コイツは俺の獲物なんだよ! テメーらは他の女共を片付けた来い!」
そう怒鳴りながら騎士達を押し退け、ゼッセルが姿を現した。
「このあまぁだけは俺の手でケリを付けなきゃ、収まりがつかねぇ」
「し、しかしこの女はスキルも持っている
「うるせー! テメーらは他の女共でも片付けて来い!」
ゼッセルは忠告する部下達へそう怒鳴りつけると、剣を振り回し彼等を追い払う。
彼は改めてバラフィへ視線をぶつけると、ギリギリと歯を噛み慣らし、手にした剣の切っ先を突き付けた。
「さっきは良くもやってくれたな、たっぷりお礼をしてやるから覚悟しやがれ!」
「あら、こっちもまだお礼がし足りなかった所なの。もっとこんがり焼いて上げるから、期待してなさい」
切られたフローラは治療を受け持ち直しているが、バラフィとしてもゼッセルへの怒りは未だに収まって居ない。
睨み合う男女はお互いへの敵意を剥き出しにすると、手にした得物を振るって駆けだした。
二人の実力は拮抗し、お互いに振るった刃は、相手の守りに弾かれる。
バラフィはゼッセルが容易くない相手だと認めると、炎を織り交ぜ攻め立てると、ゼッセルを剣の間合いから追い立てた。
ゼッセルはなんとか接近しようと試みるが、バラフィの炎に翻弄され、行動の大半を回避へと費やす事となる。
時たま隙を突き肉薄するものの、切り付けた剣は短剣で防がれ、お返しの炎でその身を焦がした。
「女の癖に小癪な野郎だぜ」
「男の癖にその程度なのね」
「けっ、減らず口を叩くんじゃねー!」
ゼッセルが背後に回した腕を振るうと、ジャラジャラと鎖が引き出され、鞭の様に伸びるとバラフィの頭部へと迫る。
咄嗟に身を伏せて頭上を掠める鎖をやり過ごすも、その隙を見越してゼッセルが駆け込んで来る。
「ちっ、セコイ男ね!」
カウンターとして炎を叩き付け牽制するが、僅かな時間で込められる魔力はそう多くない。
ゼッセルは身を焼かれながらも肉薄すると剣を振り下ろし、短剣を掲げて防ぐバラフィとガッチリと切り結んだ。
今迄の剣をぶつけ合う一瞬の攻防と違い、二人今、態勢を崩されまいとするお互いの押し合いにより、武器を使った接触を続けていた。
「へへへ、漸く捕らえたぜぇ」
噛み合った刃をギリギリと押し込みならが、ゼッセルの唇が嫌らしく歪む。
「あら、それは良かったわね。でもあまり近づかないで貰えるかしら、不愉快なのよね」
その押し込む力に鍔迫り合いでの不利を悟ったバラフィ。
間合いを取る為、背後へ飛び退こうとした瞬間、目の前で紫電が爆ぜた。
「つっ!」
掌にバチンと弾ける様な痛みが走る。
その痛みは腕を伝い、一瞬の内に全身を駆け抜けると、彼女の体から力が抜けていく。
カランと取り落とした短剣に続き、脱力した両膝が地面へと落ちる。
バラフィは全身に走る痺れに耐え、辛うじて膝立ちのまま、見開いた目で震える両手を見下ろした。
「な、なに・・・体に、ちから、が・・・」
「くくく、驚いたようだな。これが俺のスキル、雷の力だぜ」
「い・・・いか、づち?」
「しらねーか?しらねーよな。なんせ保有するのは俺様ただ一人、まさに選ばれしものが持つ最強のスキルよ!」
下品な高笑いと共に、地に膝を突くバラフィを見下ろすゼッセルの表情は、正に愉悦。
他人の無様な姿を見下す事は、彼の歪んだ欲を満たす何よりの楽しみの一つだった。
伯爵の手癖の悪さから生まれた使用人の子供、それがゼッセルである。
当然貴族家に入れる訳も無く、只の下男として育った彼だが、そのスキルの有用性が認められると、伯爵家三男の肩書が与えられた。
始めは戸惑った彼も貴族としての地位に慣れにつれ、次第に奢り高ぶると傲慢な貴族としての振舞が目立ち始める。
遂には自らを高貴なる存在として増長した彼は、実の母親にさえ自身に対し貴族への礼節を強いた。
だが所詮その地位は、彼の力を利用する為に与えられたに過ぎない、張りぼての称号。
伯爵家家人からは、使用人の子供とバカにされ、最低限の教育が終わるとすぐに、家畜の様に騎士団へと売りは払わる事となった。
「命を賭して我が伯爵家の栄達に励め」
それが父である伯爵から掛けられた、最初で最後の言葉。
屋敷を後にするゼッセルは、その背に蔑む伯爵やその息子達の嘲笑交じりの視線を感じ、失望と屈辱、そしてそれを上回る怒りに打ち震えながら騎士団へと入った。
そんな彼は、必要以上に貴族の身分に固執し、必要以上に他人への嘲りの念を抱くと、貴族の悪い部分を煮詰めたような人間となったのである。
「さて、いい格好だと言いたい所だが、まだちょっと頭が高いんだ、よっと!」
「ぐぅっ!」
言葉と共に頭を蹴られたバラフィが、碌に受け身も取れず地面に俯せに倒れると、その背中をゼッセルの足が踏みつける。
「俺を焼いたお仕置きをしてやんねーとな。あっさり死ぬんじゃねーぞ」
唇の端を吊り上げニヤリと笑うと、ゼッセルの足を雷光が走り、バラフィの背中で激しくのたうった。
「がぁっ!あああぁあぁぁあぁああ!」
全身を硬直させ激しく身を震わせるバラフィから、絞り出すような悲鳴が迸る。
時間にして数秒。
僅かその程度の電撃であったが、彼女の全身を駆け捲った電気の流れは、その身から指一つ動かす程の抵抗する奪い去った。
ゼッセルはグッタリと弛緩したバラフィの頭部を、髪の毛ごと掴み取り強引に引き上げる。
「おー生きてる生きてる流石はCランクじゃねーか」
虚ろな表情で唾液すら垂れ流すその顔を覗き込み、満足げに唇を歪めると彼は視線を走らせ、周囲の状況を確認する。
既に他の女共は部下達に制圧されたようで、立っている傭兵の姿は一つも無い。
見ると何人かの気の早い騎士達が、お楽しみの為に衣類を脱ぎ始めて様子も見て取れる。
チラリとカラレイドへ視線を向けると、そんな部下達を睥睨しながら、難しい顔で腕組みをしている。
騎士団に損失が出なかったのは幸いだが、この状況自体には憤懣やるかたないといった所だろう。
まぁそんな事はどうでもいいとばかりに、掴んだバラフィを仰向けに放り投げたゼッセルは、彼女の弾んだ胸を見下ろし舌なめずりをする。
「さて、貴族への礼儀をたっぷりと教えてやるとするか」
そう呟いたゼッセルは先走った部下達に倣い、下半身に纏わりつく防具の類を外し始めた。
「ぐぅ・・・うぅぅ・・・」
地面へ投げ捨てられたバラフィは、痛みに呻きつつも、視線を動かし周囲を探る。
すると自分を見下ろす、鎧を外し、更にはズボンさえも脱ぎ捨てたゼッセルが視界に入った。
「まず裸にひん剥いて、家畜に相応しい格好にしてやるぜ」
言葉と共に胸倉を両手で掴まれると、勢いよく引かれ、それに合わせて上着が左右に裂けて散る。
「いいねぇ、傭兵にしとくには勿体無い身体をしてんじゃねーか」
「・・・・・・」
自らの服を引き千切った騎士の手を虚ろに見つめ、バラフィはここにローズが居ない事がせめてもの救いだと自分い言い聞かせた。
(・・・どんな形であれ、あの子が戻る頃には全て終わっているわね・・・)
そんな諦念のままに瞳を閉じた彼女に耳に、絶望を告げる鈴の音が届く。
「おねーちゃん!」
まさかと視線を向かた先には、此方へ真っすぐに駆けつける妹の姿。
「あ・・・あぁ・・・」
バラフィは声すら出せない喉を微かに鳴らすと、力の入らにその身で必死に首を振る。
「きては・・・だ・・・め・・・」
「くくく、なんだよ妹がいんのか。こりゃいい余興が出来そうだぜ」
嫌らしく響くゼッセルの嗤い。
その声に込められた暗い欲望の響きから、この男がどれ程の下劣な思考を巡らせているかなど、容易に想像ができる。
「おね、が・・・にげ、て・・・」
大事な妹に訪れる悲劇を予想し、ここまで必死に耐えたバラフィの瞳から涙が一筋零れ落ちた。
今の彼女には、涙で歪む視界で駆け寄るローズを絶望の想いで見つる事しか出来ない。
故にその妹の背後。
どこか気の抜けた表情で立ち尽くす男の存在に気付く余裕は、今のバラフィには残されていなかったのだった。
エロは無いんやでぇ




