第2話 なんの誘惑ポーズですの!?
【main view 都城さやか】
早戸陽菜さんと仲良くなりたい。
あわよくば一緒に住みたい。
神様が許すのであれば一緒にお風呂に入りたい。
「(って、私は授業中になんてはしたないことを考えているのかしら!)」
ダメダメ、と首を振って授業に集中する。
あっ、早戸さんの髪が風で靡かれた。風になりたい。風になれば早戸さんの髪の匂い嗅ぎ放題。げへへ。
「——では、この問題を都城さん解いてみてください」
「eのマイナス2π乗ですわ」
「……せ、正解です。なんで途中式無しで答え分かるの?」
あっ、早戸さんがぐぬぬって悔しそうな顔をこっちに向けています! もっと見て。私を見て。
あの顔を向けてくれるから私は頑張れる。
もし私が才女じゃなければきっと早戸さんは私のことを見向きもしなかったでしょうから。
「(それにしても……早戸さん・オン・ぐぬぬフェイス可愛すぎですわ!)」
あの顔を見ると背筋がゾクゾクする。
あの子の悔しがる顔が好き、だなんて少し性格悪いでしょうか……
いえ、気になる子が拗ねる顔を見るのが好きって感情はきっと自然なもののはずですわ。普通。きっと私の感情は普通。
「では、次の問題を……都城さん解いてみて!」
「アイザック・ニュートンですわ」
「……くぅ! 正解です! よく授業聞いていますね」
クラス中から私を称える声が上がる。
ちらっと早戸さんの顔を覗き見ると、頬をぷく~と膨らませながら悔しそうにしている様子が映った。
「かわわわわわわわわわわわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「うわぁ!? 都城さん!? どうしたのですか!?」
「その表情はずるいと思いませんこと!?」
「なんのこと!?」
恐るべし早戸陽菜さん。
授業中に取り乱させるだなんて、やっぱり只者ではありませんわね。好き。
*
【main view 早戸陽菜】
都城さん、授業中ぽけ~としているように見えてちゃんと聞いているのね。
ていうか姿勢良いんだよなぁあの人。姿勢を正して授業を聞くことが才能の秘訣なのかな?
私も真似をして背筋を伸ばし、都城さんと同じように前髪を掻き上げてみたりする。
「~~~~っ」
な、なななな、なにをやっているの私。
仕草まで真似をするなんて……私が都城さんに憧れているみたいじゃない。
違う違う。そういうのじゃないの。ライバル。都城さんと私はライバル。
ライバル……と本当に思ってくれているのかな?
前回の中間テストでは1位と2位。でも点差は20点近く開いていた。ていうか全教科満点とかやめて欲しい。良くて引き分けじゃん。
運動も惨敗。残像で分身を作る人にどうやって勝てばといいというのだ。
都城さんは性格も良いし、気品あるし、誰にでも優しい。
「(……そう、誰にでも優しいんだよなぁ。あの人)」
もしかしたら私がライバル視しているから、優しさで合わせてくれているのかもしれない。
本当はライバルだなんて思われてなくて、愛玩動物のように見ている可能性だってあるかもしれない。
「(……なんてね。いくらなんでも犬猫みたいに思われてたりなんかしないでしょ)」
私が可愛いポーズをして、目をハートマークにした都城さんが悶え苦しむ。
「(ぷっ……)」
そんな都城さん想像つかないけど、もしそうだったら面白いなと考える私もどうかしている。
「(そりゃ! 可愛いポーズをくらえ!)」
こっそり女豹のポーズなんかを取ってみたり。
「……」
何をやっているの私はぁぁぁぁぁっ!
幸いにも今の恥ずかしいポーズは誰にも見られていない。
あー、はずかし。忘れよ。
頭をぶんぶん降って変な残滓を取り払う。
私も授業に集中しなきゃね。
………………
…………
……
「(ほわあああああああああああ!! なに今の!? なんですの今の!? なんの誘惑ポーズですの!?)」
一番後ろの席。
都城さやかが赤面しながらハートマークを浮かべていることなど、想像すらしていなかった私であった。




