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格付けされた子どもたち-2

その後ろには、王族のガイルの鋭い視線もある。

貴族である彼らの登場に、リュミヌーとクオーレの顔が引きつった。


「ふ、フィン様……!」


さっきまで威張り散らしていたリュミヌーの顔が、一瞬で真っ青になる。

ロゼ様ははちみつ色の髪を気だるげに払うと、赤い目でリュミヌーとクオーレを冷たく見下ろした。


「せっかくの儀式なのに、格下の身分論争なんていう、くだらない雑音を僕の耳に入れないでくれるかな。反吐が出る」

「そ、それは……! 申し訳ありません!」


この言い分を聞くにとっては、平民を虐めるリュミヌーたちの俗っぽさが不快だったようだ。

リュミヌーとクオーレは屈辱に震えながらも、公爵家の権力には逆らえず、逃げるようにその場を去っていった。

嵐が去り、恐る恐るロゼ様を見る。


「あの……ありがとうございました」

「勘違いしないで。君たちを助けたわけじゃない。ただ、騒がしいのが嫌いなだけさ」


ロゼ様は冷淡に言い放つと、興味を失ったように踵を返した。その少し後ろで、ガイル王子も無言のまま彼のの後を追っていく。



「……なにあれ、気取っちゃって」


二人の姿が完全に遠ざかるや否や、ラズベリーは腰に手を当ててフンと鼻を鳴らした。

怯えるどころか、公爵家や王族を前にしても全く物怖じしていない。


「でも助かったのは確かだな。あいつらの顔面白かったな〜」

「そうよ! 伝統だか人権だか知らないけど、あんなに綺麗な氷を『不気味』だなんて、彼女たち見る目ないわ」


ラズベリーが不敵に微笑む。その堂々とした姿に、私の心から緊張が消え、自然と笑顔がこぼれた。





「それでは次は寮だ。平民と貴族で分かれているため別々に案内する。貴族の生徒は外に出ろ」


ガヤガヤとドレスの裾を引っさげて貴族が礼拝堂がら出ていく。

彼らがいなくなった礼拝堂には、先ほどの人口の三割ほどしかいなかった。


「なぁ、あいつらがいない間、俺たちだけで親睦を深めとこうぜ」

「いいね、それ賛成!」


ルッサーレとラズベリー主導で順番に自己紹介をすることになった。

街出身である程度金を持っている平民はその提案に賛同せず、自分たちだけで隅に固まって話をしていた。


「じゃあまずは言い出しっぺの俺から」


こほん、と喉を鳴らす。


「俺の名前はゲイル・ダンテ・ルッサーレ。西の村から来たんだ! まぁ今すぐ帰りたいけどな」

「私はリリー・ベリー・ラズベリー。私も西のサーノルド州から来たの。この六年間でどうあいつらの鼻をあかそうか楽しみだわ」


自己紹介がし終わり、みんなと名前で呼び合うくらい打ち解けた。


ゴーン  ゴーン。


「けっ、あいつらいつまで寮の紹介してんだよ」


窓を見ると空が橙色に染まっていた。

扉が開く。


「平民の生徒も出ろ」



ずいぶん歩いた気がする。

私たちは礼拝堂から遠く離れた薄暗い場所まで連れて行かれた。

先生が指を鳴らすと、宙に浮いていた明かりが火を灯す。

ここがお前たちが六年間過ごす寮だと言われた場所は、とてもじゃないが人が住めそうな見た目ではなかった。

虫に喰われたボロボロの木で出来た寮だ。看板には掠れた字で『木漏れ日寮』と書かれている。


「部屋割りは性別で分かれていたら好きしていい。食堂を使えるのは明日からだ。では今日はここで解散」


私たちが寮のオンボロ具合に唖然としている間に、先生はどこかへ行ってしまった。


「リリー」

「ん?」

「私と同室になろ」

「うん、なろ」





その日の真夜中。


「ちょっとゲイル! 静かにして!」

「夜中に女子の部屋忍び込むなんて犯罪なんだからね」


私たちの部屋にゲイルが忍び込み、ベッドの上に集まっていた。窓からは月明かりが差し込んでいる。今日はもう遅いため、明日にみんなで寮を探検することになっている。

ちなみに部屋割りとしては、私とリリーが同室になった。ゲイルは他の男子と四人部屋で、私たちの部屋の右隣りにいる。

フランメやリンダは最初この寮を受け入れず、散々文句を言った後この寮の最上階の部屋を独占することとなった。この寮は五階建てである。

もちろん上級生もいるのだが、この学校は敷地がとんでもなく広いため、学年ごとに寮は分かれているのだった。


「それにしても『魔法型が人権』かあ。俺たちの将来、あの儀式で結構狭まったよな」


ゲイルが枕に頭を乗せて天井を見上げる。

この国では、型によって就ける職業がほぼ決まってしまうーーらしい。ベッドの下に落ちていた法律の本にそう書かれていた。


「私は関係ないわ。国が人権を決めようがね」


リリーは拳を握り、力強く言した。さすがの度胸である。


「リナはどうする? お前の氷型、前例がない分これから何を目標にすればいいか手探りになるよな」


ゲイルに尋ねられ、私は自分の手のひらを見つめた。

じっと集中すると、小さな、でもキラキラと輝く氷の結晶がふわりと浮かび上がる。

まだ自分の将来なんて分からない。けれど、この綺麗な魔法と一緒に、ここでたくさん経験をして、自分だけの道を見つけたい。


「まあ、どうにかなるっしょ!」

「どうにかってお前な……」


癖毛の友人に呆れた目で見られる。

生まれも育ちも違うけれど、理不尽な身分差に負けたくないという気持ちは同じ。

こうして、私たちの特別な絆が始まったのだった。

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