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格付けされた子どもたち

入学式が終わった後、私たちは礼拝堂に案内された。

大理石の部屋の真ん中に、水晶が佇んでいる。


「まずは魔法型の判別だ。人権を表す7つの魔法型があるのを知っているな? お前たちの体に流れている血が魔力そのものだ。血が流れている限り魔法を使うことができる。火・水・風・雷・土・花・氷のどれかがお前たちの属性だ。例えば火型だったら火型の攻守魔法を使うことができる」


血かー。

手のひらを天井の明かりにかざす。


「まずはゲイル・ダンテ・ルッサーレ」

「はーい」


先ほど後ろにいた癖毛の男の子ーールッサーレが前に出る。

クスクスと笑う声が聞こえた。


「水晶に手をかざせ。まだ魔力についてはわからないと思うが、自分の中にある力を水晶に注ぎ込む意識でやってみろ」

「わかりました」


ルッサーレが手をかざすと、水晶から風が吹き上がった。

バサバサと照明を揺らし、本のページをめくっていく。


「ルッサーレは風だな。魔法の基礎を学んでから魔法型に合わせた勉強をしていく」

「へー」


ルッサーレが手を何度も握り元の場所へ戻っていく。


順調に魔法型が判別されていく。

貴族が魔法型を判別するときは拍手が湧くのに、平民の時は誰も何もしやしない。その分平民たちが声を出したりすると、平民が必死になっちゃって、とこれまたイラつく反応を返してきた。


「次、リナ・ベル・セレネーレ」


いつのまにか私の番になっていた。

水晶まで歩いていると、貴族は品定めするような視線を送ってくる。

うーむ、ここまで見られると緊張する。胸の鼓動を感じながら中央に置かれた大きな水晶へと進み出た。


先ほど声をかけてくれた、女の子が遠くから力強く手を振ってくれている。

その隣では、ルッサーレがハラハラした顔で私を見守っていた。


息を呑み、水晶にそっと両手を触れる。

その瞬間、部屋全体の温度が肌寒いくらいにスッと下がった。


パキパキパキーー!


清らかな音を立てて、水晶の足元から美しい氷の結晶が広がっていく。

まばゆい青白い光が私を包み込んだ。


「氷型。それも、極めて純度が高い」


教師の驚きを孕んだ声に、礼拝堂がザワめく。

 

え? なに?

貴族から出た予想以上の反応に、私はパチパチとまばたきをする。


退屈そうに儀式を見ていた、ロゼ様がはちみつ色の髪の隙間から赤い目を細めて私を凝視する。何その反応。やめてよ恥ずかしいよ。

その隣に座るガイル王子も、黒髪の奥にある黒い瞳で、じっと氷の結晶を見つめていた。

身分の高い者たちの視線が一斉に集まり、私は思わず身を固くする。

儀式を終えて席に戻ると、みんなが「すごかったよ!」と小声で抱きついてきた。

しかし、周囲の貴族の生徒たちからの視線は、決して歓迎するものばかりではないのは確かだった。


「リリー・ベリー・ラズベリー」


ラズベリーが微笑みながら水晶に手をかざすと、水晶の周囲の大地から、色鮮やかな見たこともない美しい花々が一斉に咲き誇った。


「花型、これもまた、珍しい魔法型だな」


礼拝堂がどよめく中、ラズベリーは席へ戻っていく。



「これで全員の型が確定したな」


教壇に立つ教師の声が、礼拝堂の空気を締め上げる。

この国において、魔法型はただの属性ではない。それは生涯の地位、すなわち『人権』そのものを決定づける絶対的な物差しだった。


「フィン様、さすがは公爵家。凄まじい火型でしたわ!」

「ガイル殿下の雷型こそ至高。やはり王族の血筋は絶対だ……」


周囲の貴族の生徒たちが、ロゼ様と、ガイル王子を崇めるように見つめている。

当の本人たちは退屈そうに髪を払い、ガイル王子は微動だにせず、ただその圧倒的な存在感で周囲を威圧していた。

そんな上位層の輝きとは裏腹に、礼拝堂の端に集まった平民たちの顔は青い。

風型のルッサーレは、自分の『人権』がそこそこの位置に留まったことに、ホッとしたような、どこか悔しいような複雑な表情だった。


「……ねえ、セレネーレ。私たち、どうなるのかしらね」


ラズベリーが顔をしかめ私の袖をぎゅっと握りしめる。

ラズベリーの土型から派生した『花型』。そして私の『氷型』。

先生や生徒たちが口にする言葉を聞くにどちらも歴史的に数例しか確認されていない、極めて珍しい魔法型だった。

前例がないということは、国が定める『人権の序列』から外れることを意味する。


「そこのあなたたち」


ツカツカと足音を響かせて歩み寄ってきたのは、火型を発現させたフランメ・アリア・リュミヌーだった。

隣には、美しい水型の魔力を自慢げに纏ったリンダ・プロメッサ・クオーレも冷ややかな笑みを浮かべて控えている。


「氷に花、ですって? 聞いたこともない不気味な型ね。村人の分際で、一体どんな汚い血を混ぜたらそんな異常な型が生まれるわけ?」


リュミヌーのトゲのある言葉が突き刺さる。

周囲の生徒たちも、珍しい型を持つ私たちを「化け物を見る目」で遠巻きに囁き合い始めた。

ほのぼのとした学校生活を夢見ていた胸に、冷たい現実が押し寄せる。


「一一騒がしいね。よくそんなに喋れるものだ」


不意に、私たちを取り巻く雰囲気に合わない気品に満ちた声が響いた。

振り返ると、ロゼ様が赤い目をきらめかせながら、こちらへ歩いてくるところだった。

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