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入学式

馬車が動きを止める。降りろとのことらしい。

荷物を抱えて馬車から飛び降りる。

周りには煌びやかなドレスを着た女の子や、木の荷台から飛び降りる元気そうな男の子など、ここに入学するであろう様々な生徒がいた。

近くに貴族の女の子がいたのでよろしくと挨拶をすると、鋭い目で睨みつけられ少々びっくりした。

通り過ぎる間際、汚らしいと小さく呟かれる。持ってる服の中で一番綺麗なんだけどなこれ。

やはり同い年といえど貴族は貴族。差別は何歳でもあるらしい。



それは、圧倒されるような身分差を五感で見せつけられる式典だった。


魔法学校の白亜の大講堂。


中央の特等席に座るのは、仕立ての良い絹の服を着た貴族の生徒たちだ。その周りの席には小金持ちの街出身の平民が座っている。

貴族の席にはご丁寧に名札が立っている。どれどれ、その顔を拝んでやろうじゃないか。


公爵家のフィン・ヴェルメ・ロゼ。はちみつの髪と赤い瞳。あ、今こいつ欠伸したぞ。

一際目立つ装飾をされた王族席には黒髪黒眼が綺麗なこの国の第二王子、ガイル王子が座っていた。


一方、私たち村出身の平民は、講堂の端の冷たい石床の上に、すし詰めにされて立たされていた。


『これより、ロスカ王国魔法学校の入学式を行う。国民は国の礎であり、魔法型という人権を賜る歯車であるーー』


国の大臣? の冷徹な祝辞を聞いていると、椅子に座っている人間が時折にやにや笑いながらこちらを見てくる。なんだこいつら。


「なによあのハゲ、平民を歯車扱いして。私たちは自分の意志でここに学びに来たのよ。ねえ、絶対に負けないでいようね」


芯の通った声が左からした。見ると赤髪の女の子が教壇に立っている大臣に啖呵を切っていた。

貴族たちの威圧感に一歩も引かない強い緑の瞳。周囲で不安そうな顔をしていた平民の生徒が、彼女を勇者を見るように見ていた。

おうよ、と後ろでも声がする。癖毛の男の子が「平民の底力あいつらに見せてやろうぜ」と好戦的に笑っていた。

それに私はホッとする。……ん? ホッとする?

今気づいた。私は緊張していたんだ。

今まで村から出てこなかった世間知らずの私が、今初めて自分の住んでいた世界がどれくらい小さかったかを実感して怖かったんだ。


「? そこの子、大丈夫?」


女の子が心配そうに私の顔を覗き込む。


「うん、大丈夫。一緒に頑張ろうね」


ひどい祝辞でも入学式は入学式。声を抑えつつ、でもしっかり返事をした。

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