三年生-19
みんなが目を覚ましたのは、エレーナさんたちが帰ったすぐ後だった。
薬屋の人が元王宮付きの薬師だったことや公爵の騎士が助けてくれたことを伝えると、みんなアゴが外れんばかりに大きく口を開けて驚愕していた。
そしてその翌日、私たちは書斎に呼び出された。
「君たちの機転には救われた。君たちがいなかったらこの鉱山もどうなっていたからわからない。本当にありがとう」
フランメに安心して鉱山を任せられるよ。と頭を撫でられ、彼女は嬉しそうだった。
アンドレさんのその言葉と同時に、来客用のベルが鳴り響いた。
「鉱山長ー!!」
「ーーカウルス、お前ら!」
何と玄関に倒れていたはずの鉱夫たちが集まっていた。
「みんな、どうしてーー」
「ナファサのおやっさんが薬を持ってきてくれたんです!」
「それを飲んだら体調がみるみる良くなって」
「明日からまた働きますよ!」
病み上がりだというのに全員元気そうだ。
シリウス鉱山が復興することに、私たちは嬉しさを隠せなかった。
そして数日後。私たちは実習最終日を迎えていた。
シリウス鉱山には明るさが戻り、鉱山の中の見学もさせてもらった。
小さな石炭を掘らせてくれて張り切ってツルハシを振ったら重みに負けて後ろに引っ張られて転けてみんなに笑われた。
絶対帰ったら腹筋を毎日すると心に決めた。
夜、部屋でそれぞれの時間を過ごしていると、アンドレさんに呼ばれた。
書斎にやってきた私たち五人に良い物をあげようと手に置いてくれたのは、透明の宝石だった。
「それに息を吹きかけてごらん」
「息?」
「それは天使の息吹という宝石なんだ。その宝石に息を吹きかけると、心の色が現れる。心の美しい者は鮮やかで、心の汚い者は黒く染まるんだ」
やってみてくれと手で促される。
黒くなったらどうしよう。
恐る恐る息を吹きかけると、まるで持ち主を見つけたかのように宝石がキラキラと輝き出した。
私の宝石は雪のような水色のアクアマリン。
リリーは森のような深い緑のエメラルド。
ゲイルは風の気まぐれさを表すようなフローライト。
フランメは炎のように赤いルビー。
リンダは海のように青いサファイアに変わった。
「……うん。みんな綺麗な色だ。それを加工して君たちにあげるよ」
「いいんですか?」
「ぜひ受け取ってくれ。私からの感謝の印と、君たちの友情に証にな」
友情の証。私は四人の目を合わせる。
そして、同じ瞬間に笑い合った。
学校に戻った私たちを待っていたのは、戻る前に提出した実習報告書の返却だった。
「みんな、見て!」
フランメが掲げた羊皮紙の一番上には、それはそれは大きくて立派な花丸が描かれていた。ロウガルド先生からは「未熟ながらも完璧な連携と、卓越した推理力。実習の枠を超えた見事な成果である」と、大絶賛のお言葉まで添えられている。
「やったね!」
「私たちの大活躍だったじゃん!」
五人で顔を見合わせ、ハイタッチを交わす。最悪の始まりだった私たちの実習は、こうして最高の形で幕を閉じたのだった。
「――で? お前ら。悪魔相手によくやったことは認めるが、なぜ学生の身でそんな危ないことを? 一歩間違えれば全員命がなかったんだぞ!」
「ひえっ」
「だ、だって物音がしたから……」
私たちは一斉に縮こまった。リリーにいたっては、そっとゲイルの背後に隠れている。
ロウガルド先生に呼び出しを喰らった。理由はまあ……悩む余地もないだろう。
あんなに褒めてくれたのに。ひどい、騙された。
「まあ、伯爵を救った功績は偉大だ。特別に反省文を原稿用紙十枚で許してやる」
「「「えええええーっ!?」」」
職員室で私たちの情けない大合唱が響き渡る。
私たちが反省文の内容に頭を悩ませるのは、また別の話。




