三年生-9
私たちは今手分けをして調査にあたっている。
私とフランメはアンドレさんや鉱夫の人に話を聞いて、ゲイルとリンダとリリーは近所に住んでいる人に聞き込みをしている。
「最近ウチの鉱山に来た人か……」
「誰でもいいんです。いや誰でもいいわけじゃないけど、滅多に来ない人とか」
「ちょっと待ってくれよ」
アンドレさんの書斎には家族写真がたくさん飾られている。フランメも笑顔満点で写真に写っている。いい家族だなぁ。
「何見てるのよセレネーレ」
「ううん。何にも」
「あぁ、あったあった」
フランメに肘で小突かれた直後に棚でゴソゴソやってたアンドレさんが顔を上げる。
これを見たらわかるはずだと開かれた手帳には、何日何時何分に誰が鉱山に訪れたかを事細かく書かれていた。
「うーん、最近だと新しい取引相手のドルトレイン夫人が来たくらいだな」
「あの、このアルベルト・フォーン伯爵っていうのは……」
「この人か? この人はこの土地の領主様だよ」
「へー……」
貴族にしては特殊で、この土地の平民たちにもいつも優しくて、税を減免してくれたり、病気の労働者にお見舞いの品をくれたりする、聖人のようなお方なのだと語られる。
よくこの鉱山に来ているようで、月に二、三回は彼の名前が記されていた。
「最近は休暇を取る奴が多かったんだ。けどそのまま休職する事が頻発していて、原因を見つけるために色々してたんだが、こんなことになるなんて……」
アンドレさんは笑っているがどこか元気がない。話を聞く分には鉱夫さんの休職率が増加しており、回していくのも精一杯だという。
その時もゲホゲホと咳き込みながら言うので心配でならない。
「そうだ、紙があるならその筆跡と合わせてみたらどうだ?」
アンドレさんが机に手帳を置いた。
*
「どうです? 何かわかります?」
「素人目じゃなんともな……」
ただでさえ焦げていて文字の判別も難しいのに、さらに筆跡を当てはめるとなるとなかなか難しい。
魔法で修復したいところだがここまでボロボロだと直すどころか余計酷い状態になるだろう。
これを貸すから若者たちの目で確認してみてくれ。と手帳を一日だけ預かることになった。
*
私たち、リリーとリンダとゲイルは、今洗濯をしている。
街の少し離れた場所にある井戸をぐるっと囲んで。
「そういえば聞いた? 隣の家のソフィアのことなんだけどーー」
「私が聞いた話だとレルニアはビアに気があるって……」
「最近の肉屋の肉は全部筋が硬くてやんなっちゃうわ」
「酒とか入れて漬けたらなんとかなるわよ」
ーー奥様方と一緒に。
「井戸端会議ってほんとに井戸でやるのね」
「何で俺スカート着てんの?」
「似合ってるよ」
「嬉しくねえ」
だけど本当に、何でこんなことをしているんだろう私たちは。
実習をするでもなく事件の調査をするでもなく洗濯て。
三人で顔を見合わせてため息をついた。




