三年生-7
心地よい音を立てて回る魔道具。
淀んでいた空気がみるみるうちに薄まり、肺をピリピリと刺していた魔鉱石の粉塵が外へと吸い出されていく。
「みんな、見て。魔道具の裏側に、何か落ちてる……」
リリーが炭化した結晶の隙間を指さした。近づいてランタンの光を当ててみると、そこには魔道具の基盤に、無理やり「何か」を括り付けたような、不自然にちぎれた革製のベルトが残されていた。さらにそのすぐ近く、岩の隙間に、一通の小さな紙切れが落ちているのを見つけた。
「これ……紙?」
私はそれを拾い上げ、広げた。そこには、殴り書きのような文字で、こう記されていた。
『計画は順調だ。シリウス鉱山に黒絶華の種子を仕込んだ。間もなく換気は完全に停止し、山には粉塵が充満する。労働者どもは全員、呼吸を奪われて使い物にならなくなるだろう。この鉱山を潰し、彼らの財政を破綻させるのは容易い――』
「な、何よこれ……っ!?」
紙を横から覗き込んでいたフランメが、驚愕のあまり声を震わせた。
「誰かがうちの鉱山を、意図的に狙ったってこと……!? カウルスたちを病気にして、お父さんをおとしめるために……!?」
リンダも顔を真っ青にして口元を押さえている。これは単なる自然災害でも、魔道具の故障でもなかった。フランメの実家を破滅させるため、そして罪のない労働者たちの命を魔鉱肺という恐ろしい病気で奪うために仕組まれた、悪質な犯罪行為だったのだ。
……絶対に許せない。
手紙を強く握りしめた。鉱夫は元々命の危険度が高い職業だ。そんな命をかけて仕事をしている人たちにこんな病気を、あえて人為的に広めようとするなんて。
私たちを出迎えてくれたアンドレさんの優しい笑顔を思い出し、激しい怒りがふつふつと湧き上がってくる。
「フランメ、すぐに報告しよう。この紙も証拠になるはず」
「ーーええ! もちろんよ!」
かつての敵はいつかの友。班決めの抗議をしに行ったときにロウガルド先生に言われた言葉だ。
かつて私たちをいじめていたフランメは、今は私の言葉に強く頷いた。私たちは固い絆で結ばれたかのように目配せをし、焼け焦げた紙切れを手に、急いで坑道を駆け戻り始めた。




