三年生-4
リュミヌーとクオーレに大丈夫かと声をかけたが、反応はない。
もう強行突破してやる。
リュミヌーの肩を掴んでこっちを向かせる。
彼女の大きな瞳には涙があふれていた。
女の子にはあまり泣いてほしくない。
どこの紳士だよという感じだが、嬉し泣き以外での涙は基本的に見たくない。
たとえ私たちを見下していた相手だとしてもだ。
「ねぇリュミヌー、これを見て」
私が露と唱えると、手の上に水球が現れる。
さらに流れ星と唱え指を振ると、水球の中に流星群が流れる。
リュミヌーの瞳に流れ星が映り込んだ。
「リュミヌー、僕は君が誰よりも授業を真面目に聞いているのを知っているよ」
トロイが私が冷やした頬を押さえながら笑いかけた。
「平民の中で成績も一番だし、先生のところによく質問しに行ってるよね。この前も僕がわからない問題があって困ってたら教えてくれたし」
ちょっとぶっきらぼうだったけど。と彼はさらに笑う。
「人一倍努力をしているから、人一倍いろんなことに敏感になっちゃうんだよね」
トロイのその言葉で、リュミヌーは完全に泣き出してしまった。
クオーレも涙目で彼女の背中をさすっている。
ちょうど朝の鐘がなった。やばい、朝礼に遅れてしまう。
他の生徒に彼女たちを任せ、私とリリーは廊下を走った。
「おはよーございます!」
「おーおはよう、遅刻だぞお前ら」
「まだ鐘鳴り終わってないんでー!」
くそう、何で私たちの席は一番後ろなんだ。遠いじゃないか。
私たちが席に着いた時にちょうど鐘がなり終わった。ギリギリだった。
貴族たちにくすくす笑われるのはいつものこと。ゲイルにも何でお前らこんなに遅いんだよ。とあきれた目で見られた。
「いやー、ねえ」
「色々ありまして……」
一限目は魔法生物学だ。
課題であるスペペンテの皮を入れた小瓶を持って生物教室へ向かった。
その日の放課後、リュミヌーとクオーレは図書室に来た。
少し気まずそうな顔だったけど、いつもより近い席に座ってくれた。
野良猫に懐かれているような気分だった。
翌朝、朝ごはんを食べにいこうと扉を開けたら小さなカゴが置いてあった。
「何これ、誰から?」
「見て。これ黒猫堂の焼き菓子だわ」
黒猫堂は王都で人気のあるお菓子屋の名前だ。
毎日行列があると聞く、庶民なら誰もが食べてみたいと夢見る有名店。
それを買うことができて、なおかつ木漏れ日寮に入れる人間は彼女たちしかいない。
ふふ、と思わず笑いがこぼれた。
「これなら実習も何とかなりそうだね」
「そうね、これゲイルにバレないうちに食べましょ」
「賛成」
食堂に着くと、リュミヌーとクオーレが四人がけの席に座っているのを発見した。
リリーと目を合わせニンマリと口角を上げる。考えていることは同じだ。
「フランメ、おはよ!」
「今日も素敵な服ね、リンダ」
一緒にご飯を食べようと半ば強引に席に座った。
彼女たちは目を見開いて驚いていたが、数秒遅れておはようと返してくれた。
断られなかったため同じ席でご飯を食べていると、男友達とご飯をとりにきたゲイルにお前たちいつそんなに仲良くなったんだよと驚かれた。
女の子ってそういうもんだ。




