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二年生-2

授業では基礎呪文の過程を終え、魔法型別の授業以外は貴族の生徒たちと同じ空間で授業を受けている。

三人で隅っこに固まって授業を受け、毎回貴族たちの馬鹿にしたような笑いを聞きながら魔法の取得に勤しんでいた。


そんなある日のこと。



「二週間後に三人一組で実技試験を行う。学年でくじで誰と競うかを決めるから、お前らは誰と組むかを決めて、決まったらこの紙に名前を書いておいてくれ」


ロウガルド先生が指を振ると、紙が滑らかに飛んでくる。

私は迷うことなくリリーとゲイルの名を書き込んだ。


「フィン様! わたくしと組んでくださいませ!」

「わたくしの水でフィン様の炎を手助けいたしますわ!」

「あなたは火を消すだけじゃない。わたくしの風の方がもっとお役に立てますわ」

「あなた、何ですって!?」


ロゼ様のいる周辺が一気に騒がしくなった。不幸にもその近くにいたゲイルが耳を塞いで子鹿のようにプルプル震えている。ああ可哀想に。


貴族と授業を受けるようになって知ったことがある。ロゼ様は異常なほどにモテるということだ。毎朝彼の席の周りにはご令嬢が集い愛の言葉を口にする。彼も彼でで女の子にものすごく優しいので、それが余計拍車をかけていた。

私は他の教室の子から五回ほど彼への愛をしたためた手紙の配達を頼まれたことがある。渡しに行くのはとてつもなく恐ろしいが気持ちを無碍にもできないので、これ他教室の子からと渡すとあぁクロエか。どうもありがとうと砂糖菓子のような微笑みで対応された。

その笑顔を見たご令嬢は悲鳴をあげて倒れていた。ていうかなぜ字体や便箋を見ただけで誰が書いたか分かったのだろうか。私はそのことが恐ろしくてたまらない。


ご令嬢たちの争いが白熱している。

先生は何も言っていないが、そろそろ止めた方がいいんじゃないだろうか。

不躾ながら私が口を開こうとすると、ロゼ様が先に言葉を発した。


「みんなごめんね。君たちの誘いはとても嬉しいのだけれど、僕は王子と組むから君たちとは組めないんだ」


本当にごめんね。と長いまつ毛を悲しそうに伏せる。

その男子とは思えないほどの麗しさにその場にいた全員の顔が赤くなっていた。


「もっ、もちろんですわフィン様!」

「わたくしたちもワガママを言ってしまい申し訳ありません!」

「お二方の勇姿をお祈りしていますわ!」


おー、すごいすごい。

ロゼ様の影響力の高さに改めて慄くのだった。





今日は珍しく誰にも居残り部屋に入れられなかった。

三人で廊下を歩いていると、学年掲示板に人集りができていた。


「実技試験の順番じゃない?」

「見てみよーぜ」


私たちもその人集いに加わる。

あ、みっけ。


セレネーレ班対リュミヌー班


ーーえ。リュミヌーって。


「何ですって!?」


一際甲高い声が響く。


「何で私たちの相手があんたたちなのよ!」

「信じられない、今からでも変えてほしいわ」


後ろにはフランメ・リュミヌーとリンダ・クオーレとその取り巻きが立っていた。


「そんなのしらねぇよばーか」


ゲイルが舌を出す。


「でもあんたたちも可哀想ね。私たちと戦ったらすぐ負けちゃうもの」

「退学するのも時間の問題かもね」


すぐいつもの調子を取り戻し、フランメたちは去っていった。




「うおぉおおぉお! 絶対あいつらに勝つぞ!」


放課後の大食堂。ゲイルが今日の日替わり料理である鳥の丸焼きを齧りながら闘志を燃やす。

他の生徒がまた平民たちが騒いでら。とシラケた視線を寄越すがもう慣れたものだ。

リリーもとてつもなく顔を顰めて唸っていた。




あっという間に二週間が経った。

大きな鉄製の扉をくぐると、ひんやりとした空気の広大な競技場が広がっていた。

すでに集まっていたフランメたちが、私たちが入ってきた瞬間に一斉に視線を向けてくる。その目は、獲物を待つ肉食獣のようだった。


「あら、田舎のネズミたちがやっと来たわね」


腕を組んで、フンと鼻で笑ったのはクオーレだった。金髪を麗に巻き上げ、美しい水の魔力を指先にまとわせて、わざとらしく見せつけている。

その隣には、燃えるような赤髪のリュミヌーが、退屈そうに爪を眺めながら立っていた。


「もう二年生にもなったんだし。少しは魔法の出し方くらい覚えたかしら? 泣いて逃げ出さないでね」


彼女たちの後ろに控える下級貴族の取り巻きたちが、クスクスと意地の悪い笑い声をあげる。彼らの目は「どうやってこいつらを罵ろうか」という思いでギラギラしていた。


「いやー、クオーレ! そんなに俺たちのこと待っててくれたなんて光栄だなぁ!」


ゲイルがひょっこりと前に出て、笑顔で手を振った。


「もしかして、西のイケメンに一目惚れしちゃった? 悪いけど、俺、高飛車な女の子はちょっと苦手なんだよねー。あ、でもその綺麗な水魔法で冷たいお茶でも淹れてくれるなら、お詰くらい聞いてあげてもいいぜ?」

「なっ……! 誰があなたなんか……!」


予想外の軽いノリで煽り返され、クオーレの綺麗な顔が引きつる。取り巻きたちも「な、生意気な平民が……!」と一瞬でピキついた。

ゲイル特有の空気の読めなさというか、誰にも態度を変えないところが私は好ましい。


「ゲイル、あんまり変なものに懐かれたら、ジャガイモの芽の毒でも盛られるわよ。気をつけなさい」


リリーがふんぞり返り、度胸たっぷりの涼しい顔で追撃する。緑の瞳で取り巻きたちをまっすぐに睨み据え、一歩も引かない構えだ。


「……チッ。相変わらず口の減らない連中ね。まあいいわ、その余裕がいつまで持つかしら」


リュミヌーが冷たい声を出し、じっと睨みつける。


「自分のその態度がどれだけ身の程知らずなものか、たっぷり思い知るといいわ」


リュミヌーの合図で、取り巻きの一人の男子生徒がにやりと笑いながら前へ出た。この実技試験は一対一で行う。その援助を残りの二人がするというやり方だ。


先生が魔法で大きな砂時計を出した。


私たちの試験が始まった。

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