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一年生-5

「リナ! リリー! 大変だ!」


夕暮れ時。平民寮の部屋のドアを勢いよく開けて、ゲイルが飛び込んできた。いつもはヘラヘラしている彼が、髪を振り乱し、息を切らせている。

部屋のベッドに座っていた私とリリーは、驚いて顔を見合わせた。


「ゲイル、遅かったじゃない」

「いや、まじで、やばい話があるんだって」


ゲイルはシーツの上にドサリと座り込むと、声を潜めて自身の掴んだ情報を打ち明けた。

今年の私たちがいる組は、国の上層部が直接指名した『魔力特化枠』の教室であること。ロゼ様やガイルのような最高峰の魔力を持つ貴族と並べられ、私の氷型とリリーの花型という前例のない魔力を、国が観察しようとしている可能性が高いこと。


「国の上層部が、私たちの魔法型を……?」


自分の手のひらを見つめた。

ただの普通の平民だと思っていた。けれど、私の持つ氷型は、国が放っておけないほどの危険なものだということなのだろうか。


「冗談じゃないわ!」

リリーがぎゅっと拳を握りしめ、ベッドから立ち上がった。その度胸に満ちた瞳には、怯えなど微塵もない。


「平民だからって別の檻に閉じ込めるのも、珍しいからって化け物たちと同じ部屋に入れて観察するのも、全部あいつらの勝手じゃない!」

「ハハ、相変わらずリリーは男前だな。でもさ、相手は学校のいじめっ子じゃなくて、この国そのものだぜ? 逆らえば人権を奪われて、最悪、村にすら帰れなくなるかもしれない」


ゲイルは少し困ったように笑ったが、その目は逃げることを諦めていなかった。


「リナ。お前はどうする? 怖ければ、今からでも頭を下げて、他の教室に移してくれって頼み込む方法もある。……お前らの型が珍しい以上、認められるかは分からないけどさ」


二人の視線が私に集まる。


窓の外はすっかり暗くなり、遠くに見える白亜の本校舎が、冷たく聳え立っていた。

確かに怖い。相手は王子や、貴族たちを従える、この国そのものなのだから。

けれど、でも。


「ううん、逃げない。……だって、逃げたら私の将来は誰かに決められたままだもん。私はこの学校で、自分で自分の将来を見つけたい。たとえ国が相手でも足掻いてみせる!」


 私の言葉に、リリーがパッと顔を輝かせた。


「そうよ、あいつらが観察したいって言うなら、目を剥くようなすごい魔法を見せつけてやりましょう!」

「やれやれ、可愛い女の子二人にそこまで言われちゃ、俺が逃げ出すわけにはいかないよなぁ」


ゲイルが肩をすくめ、いつものお調子者な笑みを取り戻す。


「よし、それじゃああいつらの度肝を抜いて、俺たちの人権を自分たちで勝ち取ってやろうぜ!」

「「お一っ!!」」


小さな寮の部屋で、私たち誰にも聞こえないように声を合わせ、固く拳を突き合わせた。

国が用意した残酷な舞台の上で、平民三人の本当の反逆が今、静かに動き出したのだった。

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