第五章ハイエナとの戦いと生命の誕生
綺麗なサバンナの夜明けは、物凄く幻想的で美しい。
麗な夜明けと共に緑豊かなサバンナの大地が照らされる。
小鳥と虫の鳴き声。
気持ちの良い風。
まさに大自然の神秘を感じさせる。
しかし、村尾にとっては、生きるか死ぬかの瀬戸際。
サバンナの草を食べて、水を飲み、ひたすら走る。そして、シマウマの争いやヌーの争いにも巻き込まれる事がある。ハイエナに追い掛けられたら逃げるしかない…。
そう、この自然の厳しさに耐える日々を送っている。
しかし、村尾もヤクザだった頃の血は、残っている。
シマウマにも立ち向かって戦うハングリー精神もある。
小狡いジャッカルは、ツノで突き刺して殺す。
卑怯なハゲワシもツノで突き刺して殺す。
しかし、いつまでこんな殺風景なサバンナの大地を走らないといけないのだろうか。
つまらない。何か刺激が欲しい。
村尾は、ふとそう思った。
すると、群れに腹部が大きく振れ上がった一頭のヌーがいた。
そのヌーは、妊娠しているメスのヌーで出産しようとしていた。
体を震わせていて、動けない様子だった。
周りにいるヌー達も出産するヌーに気に留めている様子は、なく草を歯で千切って、咀嚼したり、うろうろ歩いたり、走ったりしていた。
すると、いつのまにか三頭のハイエナが群れのいる少し離れた所に迫ってきていた。
三頭のハイエナを見ると、無防備な出産しようとしているヌーに狙いを定めて襲いかかりに行きそうな気配を感じた。
ハイエナの群れから孤立したオスのハイエナのようだった。
ハイエナは、メスが群れの序列が上なのでオスのハイエナは、序列から一番下の方だ。
この三頭のオスのハイエナは、群れから追い出されたで孤立して、孤高者同士で動いている様だった。
村尾は、それを見て出産をしようとしているヌーが危ないと思った。
助けないと…。
村尾は、ふとそう思った。
何故、突然助けたくなったのか分からないが出産するヌーが無防備な状況でハイエナに襲われるのは、あまりにも残酷で可哀想だからと思ったからだろう…。
もし、襲われたら母子共に死ぬのは、確実だ。
助けられるのは、村尾だけ…。
見殺しには、出来ない…。
しかし、どうすれば…。
ヌーには、群れの仲間意識はない。
他のヌーも出産するヌーを守ろうとはしない。
しかし、相手は、ハイエナ。
ジャッカルやハゲワシとは、違い曲者だ。
一歩間違えれば死ぬ事もある。
そんな相手を倒していけるのだろうか。
だけど、出産をする一頭のヌーは、今新しい命を誕生させようとしている。
その産まれてくるヌーは、大自然のサバンナを駆け抜けるたくましいヌーに成長するかもしれない。
村尾は、出産するヌーに対していつのまにか感情移入してしまった。
助けないと…。
今、逃げても出産しようとするヌーだけじゃなくて、群れのヌーがハイエナに追い掛けられて、混乱してしまう。
自分が戦って食い止めないと…。
逃げてはいけない…。
逃げてはいけない…。
そうだ、自分は、ヤクザの組長だった。だからハイエナくらい倒せるだろうが…。ハイエナごときに怯えていてどうする。逃げてばかりいてもいずれまた追いかけられる。ここで自分の力を見せつけて倒してやる…。これら先サバンナで生き抜く為には、ハイエナを追っ払わないと…。
三頭のハイエナなら勝てるかもしれない…。
村尾は、そう心の中で強く決心するように呟いた。
そして、村尾は、群れから少し離れた所にいるハイエナに向かった。
三頭のハイエナは、一頭だけで向かって来たヌーに少し驚いていたが平気な素振りをして村尾を取り囲んだ。
“キャン!キャン!”
甲高い鳴き声を上げた。
そして、村尾は、ツノを向けてハイエナに突進した。
しかし、ハイエナは、素早く交わした。
ハイエナは、強靭で太い牙を向けて村尾に噛み付こうとした。
一瞬だけハイエナの大きく開いた口の太くて鋭い牙が足に当たった。
もの凄く尖った感触で噛まれたら足の骨は、噛み砕かれると思った。
しかし、村尾は、俊敏に避けてツノでハイエナの背中を突き刺そうとした。
鋭いツノが背中を掠めた。
ハイエナの背中部分の皮膚が裂かれて、血が吹き出た。
“キャウゥゥーン!”
ハイエナが悲鳴のような甲高い鳴き声を上げた。
それを見た二頭のハイエナが困惑した様子を見せた。
そして、村尾は、二頭のハイエナを蹄で激しく叩くように踏み付けた。
凶暴なハイエナに攻撃をしている事に直視すると、激しい恐怖心に駆り立てられて心臓が早鐘を打っていたが出産するヌーを守りたい思いが強く、その思いが恐怖心を打ち消した。
“モゥォォォォ!”
村尾は、ハイエナ達を威嚇するような鳴き声を上げて、激しく蹄で踏み付けていた。
そして、村尾の攻撃により、三頭のハイエナは、背を向けてヌーの群れから離れていった。
村尾は、安堵して、出産をしようとしているヌーの元に駆け寄った。
駆け寄ると、ヌーは、立ったまま体を震わせていた。
そして、羊膜に包まれた子ヌーが産まれた。
子ヌーは、産まれた途端に身動きが取れず動けないでいた。
必死に母ヌーが舐めて子ヌーが立ち上がれるように助けた。
村尾は、その様子を呆然と見ていた。
母ヌーは、子ヌーに包まれている羊膜を舐め取り、剥がしていった。
子ヌーは、母ヌーの助けを借りて懸命に立ち上がった。
最初は、立ち上がって、ふらついてこけたが、何度も、何度も懸命に立ち上がっていった。
もし、歩けるのが遅れたらハイエナやリカオンやジャッカルの餌食になる。
そう思うと、村尾は、子ヌーが心配になった。
村尾は、何故だか子ヌーを助けたくなり、子ヌーが上手く歩けるように肩で支えた。
そして、子ヌーは、村尾の助けと母ヌーの助けもあり、ふらつきながらも立ち上がり、いつのまにか直ぐに母ヌーと一緒に走れる事が出来た。
ヌーの親子は、群れに混じって行動を共にする事が出来た。
村尾は、その様子を安堵して見ていた。
新しい生命の誕生…。そして、新たなる生命がサバンナの大地を駆け抜ける。
これほど感動的な情景は他になかった
良かった…。
村尾は、安堵して呟いた。
何だろう…こんな微笑ましく感動する光景を見たのは、久しぶりだった。
自然に村尾の目から涙が溢れていた。
すると、村尾は、ある出来事を思い出してしまった。
それは、ヤクザの組長の時に借金の取り立てに行った時の事だった。
借金を踏み倒す男の家に押し掛けた時、金目の物がないか探していた時に寝室のベッドで男の病気の妻が療養していた。
妻が療養しているベッドの側では、小学生くらいの娘が床に座っていた。
男の妻が嵌めている指輪を借金の代わりとして奪った事があった。
その妻の小学生くらいの娘が恐怖で怯えた眼差しを村尾に向けていた。
妻の娘と男が指輪を持っていかないでと涙ながらに懇願した。
しかし、村尾は、借金を返さないお前らが悪いと言って指輪を奪って冷蔵庫にある食料品を奪って出て行ってしまった。
その指輪は、通い詰めているキャバクラ店のお気に入りの嬢に渡した。
あの時の自分は、人間として愚かだった。
いくら借金を返さないからといって、そんな酷い事をして良いのだろうか…。
男と娘さんからしたらその指輪は、大事な宝物だったかもしれない…。
そんな大切な物を奪ってお気に入りのキャバ嬢にあげる何て、仁義のないヤクザだったな…。
村尾は、そう思うと、その借金をしていた家族とヌーの親子が重なってしまい深い悲しみに落ちた。
“ビュゥゥゥ…”
すると、一瞬だけ穏やかな風が吹いていた。
それは、村尾に対しての賛美のような表現に感じた。
すると、村尾の側に出産したヌーと子ヌーが擦り寄ってきた。
それは、村尾に礼を言う仕草に見えた。
ヌーの親子は、村尾に擦り寄ると、直様にサバンナの大地を駆け抜けた。
村尾は、その様子を微笑ましそうに見ていた。
村尾は、穏やかな風が吹いた事に一瞬気になったが気にせずヌーの群れと共に前へと前進した。
いつのまにか村尾のヤクザだった時の刺々しい心が徐々に穏やかになってきていた。
綺麗なサバンナの夜明けは、物凄く幻想的で美しい。
麗な夜明けと共に緑豊かなサバンナの大地が照らされる。
小鳥と虫の鳴き声。
気持ちの良い風。
まさに大自然の神秘を感じさせる。
しかし、村尾にとっては、生きるか死ぬかの瀬戸際。
サバンナの草を食べて、水を飲み、ひたすら走る。そして、シマウマの争いやヌーの争いにも巻き込まれる事がある。ハイエナに追い掛けられたら逃げるしかない…。
そう、この自然の厳しさに耐える日々を送っている。
しかし、村尾もヤクザだった頃の血は、残っている。
シマウマにも立ち向かって戦うハングリー精神もある。
小狡いジャッカルは、ツノで突き刺して殺す。
卑怯なハゲワシもツノで突き刺して殺す。
しかし、いつまでこんな殺風景なサバンナの大地を走らないといけないのだろうか。
つまらない。何か刺激が欲しい。
村尾は、ふとそう思った。
すると、群れに腹部が大きく振れ上がった一頭のヌーがいた。
そのヌーは、妊娠しているメスのヌーで出産しようとしていた。
体を震わせていて、動けない様子だった。
周りにいるヌー達も出産するヌーに気に留めている様子は、なく草を歯で千切って、咀嚼したり、うろうろ歩いたり、走ったりしていた。
すると、いつのまにか三頭のハイエナが群れのいる少し離れた所に迫ってきていた。
三頭のハイエナを見ると、無防備な出産しようとしているヌーに狙いを定めて襲いかかりに行きそうな気配を感じた。
ハイエナの群れから孤立したオスのハイエナのようだった。
ハイエナは、メスが群れの序列が上なのでオスのハイエナは、序列から一番下の方だ。
この三頭のオスのハイエナは、群れから追い出されたで孤立して、孤高者同士で動いている様だった。
村尾は、それを見て出産をしようとしているヌーが危ないと思った。
助けないと…。
村尾は、ふとそう思った。
何故、突然助けたくなったのか分からないが出産するヌーが無防備な状況でハイエナに襲われるのは、あまりにも残酷で可哀想だからと思ったからだろう…。
もし、襲われたら母子共に死ぬのは、確実だ。
助けられるのは、村尾だけ…。
見殺しには、出来ない…。
しかし、どうすれば…。
ヌーには、群れの仲間意識はない。
他のヌーも出産するヌーを守ろうとはしない。
しかし、相手は、ハイエナ。
ジャッカルやハゲワシとは、違い曲者だ。
一歩間違えれば死ぬ事もある。
そんな相手を倒していけるのだろうか。
だけど、出産をする一頭のヌーは、今新しい命を誕生させようとしている。
その産まれてくるヌーは、大自然のサバンナを駆け抜けるたくましいヌーに成長するかもしれない。
村尾は、出産するヌーに対していつのまにか感情移入してしまった。
助けないと…。
今、逃げても出産しようとするヌーだけじゃなくて、群れのヌーがハイエナに追い掛けられて、混乱してしまう。
自分が戦って食い止めないと…。
逃げてはいけない…。
逃げてはいけない…。
そうだ、自分は、ヤクザの組長だった。だからハイエナくらい倒せるだろうが…。ハイエナごときに怯えていてどうする。逃げてばかりいてもいずれまた追いかけられる。ここで自分の力を見せつけて倒してやる…。これら先サバンナで生き抜く為には、ハイエナを追っ払わないと…。
三頭のハイエナなら勝てるかもしれない…。
村尾は、そう心の中で強く決心するように呟いた。
そして、村尾は、群れから少し離れた所にいるハイエナに向かった。
三頭のハイエナは、一頭だけで向かって来たヌーに少し驚いていたが平気な素振りをして村尾を取り囲んだ。
“キャン!キャン!”
甲高い鳴き声を上げた。
そして、村尾は、ツノを向けてハイエナに突進した。
しかし、ハイエナは、素早く交わした。
ハイエナは、強靭で太い牙を向けて村尾に噛み付こうとした。
一瞬だけハイエナの大きく開いた口の太くて鋭い牙が足に当たった。
もの凄く尖った感触で噛まれたら足の骨は、噛み砕かれると思った。
しかし、村尾は、俊敏に避けてツノでハイエナの背中を突き刺そうとした。
鋭いツノが背中を掠めた。
ハイエナの背中部分の皮膚が裂かれて、血が吹き出た。
“キャウゥゥーン!”
ハイエナが悲鳴のような甲高い鳴き声を上げた。
それを見た二頭のハイエナが困惑した様子を見せた。
そして、村尾は、二頭のハイエナを蹄で激しく叩くように踏み付けた。
凶暴なハイエナに攻撃をしている事に直視すると、激しい恐怖心に駆り立てられて心臓が早鐘を打っていたが出産するヌーを守りたい思いが強く、その思いが恐怖心を打ち消した。
“モゥォォォォ!”
村尾は、ハイエナ達を威嚇するような鳴き声を上げて、激しく蹄で踏み付けていた。
そして、村尾の攻撃により、三頭のハイエナは、背を向けてヌーの群れから離れていった。
村尾は、安堵して、出産をしようとしているヌーの元に駆け寄った。
駆け寄ると、ヌーは、立ったまま体を震わせていた。
そして、羊膜に包まれた子ヌーが産まれた。
子ヌーは、産まれた途端に身動きが取れず動けないでいた。
必死に母ヌーが舐めて子ヌーが立ち上がれるように助けた。
村尾は、その様子を呆然と見ていた。
母ヌーは、子ヌーに包まれている羊膜を舐め取り、剥がしていった。
子ヌーは、母ヌーの助けを借りて懸命に立ち上がった。
最初は、立ち上がって、ふらついてこけたが、何度も、何度も懸命に立ち上がっていった。
もし、歩けるのが遅れたらハイエナやリカオンやジャッカルの餌食になる。
そう思うと、村尾は、子ヌーが心配になった。
村尾は、何故だか子ヌーを助けたくなり、子ヌーが上手く歩けるように肩で支えた。
そして、子ヌーは、村尾の助けと母ヌーの助けもあり、ふらつきながらも立ち上がり、いつのまにか直ぐに母ヌーと一緒に走れる事が出来た。
ヌーの親子は、群れに混じって行動を共にする事が出来た。
村尾は、その様子を安堵して見ていた。
新しい生命の誕生…。そして、新たなる生命がサバンナの大地を駆け抜ける。
これほど感動的な情景は他になかった
良かった…。
村尾は、安堵して呟いた。
何だろう…こんな微笑ましく感動する光景を見たのは、久しぶりだった。
自然に村尾の目から涙が溢れていた。
すると、村尾は、ある出来事を思い出してしまった。
それは、ヤクザの組長の時に借金の取り立てに行った時の事だった。
借金を踏み倒す男の家に押し掛けた時、金目の物がないか探していた時に寝室のベッドで男の病気の妻が療養していた。
妻が療養しているベッドの側では、小学生くらいの娘が床に座っていた。
男の妻が嵌めている指輪を借金の代わりとして奪った事があった。
その妻の小学生くらいの娘が恐怖で怯えた眼差しを村尾に向けていた。
妻の娘と男が指輪を持っていかないでと涙ながらに懇願した。
しかし、村尾は、借金を返さないお前らが悪いと言って指輪を奪って冷蔵庫にある食料品を奪って出て行ってしまった。
その指輪は、通い詰めているキャバクラ店のお気に入りの嬢に渡した。
あの時の自分は、人間として愚かだった。
いくら借金を返さないからといって、そんな酷い事をして良いのだろうか…。
男と娘さんからしたらその指輪は、大事な宝物だったかもしれない…。
そんな大切な物を奪ってお気に入りのキャバ嬢にあげる何て、仁義のないヤクザだったな…。
村尾は、そう思うと、その借金をしていた家族とヌーの親子が重なってしまい深い悲しみに落ちた。
“ビュゥゥゥ…”
すると、一瞬だけ穏やかな風が吹いていた。
それは、村尾に対しての賛美のような表現に感じた。
すると、村尾の側に出産したヌーと子ヌーが擦り寄ってきた。
それは、村尾に礼を言う仕草に見えた。
ヌーの親子は、村尾に擦り寄ると、直様にサバンナの大地を駆け抜けた。
村尾は、その様子を微笑ましそうに見ていた。
村尾は、穏やかな風が吹いた事に一瞬気になったが気にせずヌーの群れと共に前へと前進した。
いつのまにか村尾のヤクザだった時の刺々しい心が徐々に穏やかになってきていた。
綺麗なサバンナの夜明けは、物凄く幻想的で美しい。
麗な夜明けと共に緑豊かなサバンナの大地が照らされる。
小鳥と虫の鳴き声。
気持ちの良い風。
まさに大自然の神秘を感じさせる。
しかし、村尾にとっては、生きるか死ぬかの瀬戸際。
サバンナの草を食べて、水を飲み、ひたすら走る。そして、シマウマの争いやヌーの争いにも巻き込まれる事がある。ハイエナに追い掛けられたら逃げるしかない…。
そう、この自然の厳しさに耐える日々を送っている。
しかし、村尾もヤクザだった頃の血は、残っている。
シマウマにも立ち向かって戦うハングリー精神もある。
小狡いジャッカルは、ツノで突き刺して殺す。
卑怯なハゲワシもツノで突き刺して殺す。
しかし、いつまでこんな殺風景なサバンナの大地を走らないといけないのだろうか。
つまらない。何か刺激が欲しい。
村尾は、ふとそう思った。
すると、群れに腹部が大きく振れ上がった一頭のヌーがいた。
そのヌーは、妊娠しているメスのヌーで出産しようとしていた。
体を震わせていて、動けない様子だった。
周りにいるヌー達も出産するヌーに気に留めている様子は、なく草を歯で千切って、咀嚼したり、うろうろ歩いたり、走ったりしていた。
すると、いつのまにか三頭のハイエナが群れのいる少し離れた所に迫ってきていた。
三頭のハイエナを見ると、無防備な出産しようとしているヌーに狙いを定めて襲いかかりに行きそうな気配を感じた。
ハイエナの群れから孤立したオスのハイエナのようだった。
ハイエナは、メスが群れの序列が上なのでオスのハイエナは、序列から一番下の方だ。
この三頭のオスのハイエナは、群れから追い出されたで孤立して、孤高者同士で動いている様だった。
村尾は、それを見て出産をしようとしているヌーが危ないと思った。
助けないと…。
村尾は、ふとそう思った。
何故、突然助けたくなったのか分からないが出産するヌーが無防備な状況でハイエナに襲われるのは、あまりにも残酷で可哀想だからと思ったからだろう…。
もし、襲われたら母子共に死ぬのは、確実だ。
助けられるのは、村尾だけ…。
見殺しには、出来ない…。
しかし、どうすれば…。
ヌーには、群れの仲間意識はない。
他のヌーも出産するヌーを守ろうとはしない。
しかし、相手は、ハイエナ。
ジャッカルやハゲワシとは、違い曲者だ。
一歩間違えれば死ぬ事もある。
そんな相手を倒していけるのだろうか。
だけど、出産をする一頭のヌーは、今新しい命を誕生させようとしている。
その産まれてくるヌーは、大自然のサバンナを駆け抜けるたくましいヌーに成長するかもしれない。
村尾は、出産するヌーに対していつのまにか感情移入してしまった。
助けないと…。
今、逃げても出産しようとするヌーだけじゃなくて、群れのヌーがハイエナに追い掛けられて、混乱してしまう。
自分が戦って食い止めないと…。
逃げてはいけない…。
逃げてはいけない…。
そうだ、自分は、ヤクザの組長だった。だからハイエナくらい倒せるだろうが…。ハイエナごときに怯えていてどうする。逃げてばかりいてもいずれまた追いかけられる。ここで自分の力を見せつけて倒してやる…。これら先サバンナで生き抜く為には、ハイエナを追っ払わないと…。
三頭のハイエナなら勝てるかもしれない…。
村尾は、そう心の中で強く決心するように呟いた。
そして、村尾は、群れから少し離れた所にいるハイエナに向かった。
三頭のハイエナは、一頭だけで向かって来たヌーに少し驚いていたが平気な素振りをして村尾を取り囲んだ。
“キャン!キャン!”
甲高い鳴き声を上げた。
そして、村尾は、ツノを向けてハイエナに突進した。
しかし、ハイエナは、素早く交わした。
ハイエナは、強靭で太い牙を向けて村尾に噛み付こうとした。
一瞬だけハイエナの大きく開いた口の太くて鋭い牙が足に当たった。
もの凄く尖った感触で噛まれたら足の骨は、噛み砕かれると思った。
しかし、村尾は、俊敏に避けてツノでハイエナの背中を突き刺そうとした。
鋭いツノが背中を掠めた。
ハイエナの背中部分の皮膚が裂かれて、血が吹き出た。
“キャウゥゥーン!”
ハイエナが悲鳴のような甲高い鳴き声を上げた。
それを見た二頭のハイエナが困惑した様子を見せた。
そして、村尾は、二頭のハイエナを蹄で激しく叩くように踏み付けた。
凶暴なハイエナに攻撃をしている事に直視すると、激しい恐怖心に駆り立てられて心臓が早鐘を打っていたが出産するヌーを守りたい思いが強く、その思いが恐怖心を打ち消した。
“モゥォォォォ!”
村尾は、ハイエナ達を威嚇するような鳴き声を上げて、激しく蹄で踏み付けていた。
そして、村尾の攻撃により、三頭のハイエナは、背を向けてヌーの群れから離れていった。
村尾は、安堵して、出産をしようとしているヌーの元に駆け寄った。
駆け寄ると、ヌーは、立ったまま体を震わせていた。
そして、羊膜に包まれた子ヌーが産まれた。
子ヌーは、産まれた途端に身動きが取れず動けないでいた。
必死に母ヌーが舐めて子ヌーが立ち上がれるように助けた。
村尾は、その様子を呆然と見ていた。
母ヌーは、子ヌーに包まれている羊膜を舐め取り、剥がしていった。
子ヌーは、母ヌーの助けを借りて懸命に立ち上がった。
最初は、立ち上がって、ふらついてこけたが、何度も、何度も懸命に立ち上がっていった。
もし、歩けるのが遅れたらハイエナやリカオンやジャッカルの餌食になる。
そう思うと、村尾は、子ヌーが心配になった。
村尾は、何故だか子ヌーを助けたくなり、子ヌーが上手く歩けるように肩で支えた。
そして、子ヌーは、村尾の助けと母ヌーの助けもあり、ふらつきながらも立ち上がり、いつのまにか直ぐに母ヌーと一緒に走れる事が出来た。
ヌーの親子は、群れに混じって行動を共にする事が出来た。
村尾は、その様子を安堵して見ていた。
新しい生命の誕生…。そして、新たなる生命がサバンナの大地を駆け抜ける。
これほど感動的な情景は他になかった
良かった…。
村尾は、安堵して呟いた。
何だろう…こんな微笑ましく感動する光景を見たのは、久しぶりだった。
自然に村尾の目から涙が溢れていた。
すると、村尾は、ある出来事を思い出してしまった。
それは、ヤクザの組長の時に借金の取り立てに行った時の事だった。
借金を踏み倒す男の家に押し掛けた時、金目の物がないか探していた時に寝室のベッドで男の病気の妻が療養していた。
妻が療養しているベッドの側では、小学生くらいの娘が床に座っていた。
男の妻が嵌めている指輪を借金の代わりとして奪った事があった。
その妻の小学生くらいの娘が恐怖で怯えた眼差しを村尾に向けていた。
妻の娘と男が指輪を持っていかないでと涙ながらに懇願した。
しかし、村尾は、借金を返さないお前らが悪いと言って指輪を奪って冷蔵庫にある食料品を奪って出て行ってしまった。
その指輪は、通い詰めているキャバクラ店のお気に入りの嬢に渡した。
あの時の自分は、人間として愚かだった。
いくら借金を返さないからといって、そんな酷い事をして良いのだろうか…。
男と娘さんからしたらその指輪は、大事な宝物だったかもしれない…。
そんな大切な物を奪ってお気に入りのキャバ嬢にあげる何て、仁義のないヤクザだったな…。
村尾は、そう思うと、その借金をしていた家族とヌーの親子が重なってしまい深い悲しみに落ちた。
“ビュゥゥゥ…”
すると、一瞬だけ穏やかな風が吹いていた。
それは、村尾に対しての賛美のような表現に感じた。
すると、村尾の側に出産したヌーと子ヌーが擦り寄ってきた。
それは、村尾に礼を言う仕草に見えた。
ヌーの親子は、村尾に擦り寄ると、直様にサバンナの大地を駆け抜けた。
村尾は、その様子を微笑ましそうに見ていた。
村尾は、穏やかな風が吹いた事に一瞬気になったが気にせずヌーの群れと共に前へと前進した。
いつのまにか村尾のヤクザだった時の刺々しい心が徐々に穏やかになってきていた。




