第九章 (4)
研究所の裏側に回ったショウタたちが見たものは?
ショウタ達は急いで産業技術研究所の南側に廻った。そこはデモ隊の群衆が殺到し隙間がないほど人でごった返していた。
「そこをどけ。あんたたちだって宇宙船には乗れないんだぞ。このままじゃみんな置いてけぼりだ」デモ隊が警察官に罵倒の声を浴びせていた。デモ隊の方が圧倒的に人数が多いので警察は抑えきれず、一部の群衆は既に塀を突破して研究所の中に入っていた。ショウタ達はタケヒコの案内で横道を進みソフィアと示し合わせた場所に向かった。
「こっち、こっち」ひとつ高いところに立ってソフィアが手を振っていた。その横にはユキエの顔も見えた。
「ここから中に入れるわ」ソフィアが指さす塀には人一人がどうにか通れる程の穴が開いていた。その穴を抜けショウタ達は産業技術研究所の中に入った。塀を抜けると目の前に立つ工場棟の壁に何本かの植物の蔓が這っていた。それは窓やドア、土台の隙間をかいくぐり工場の内側から顔を出していた。その様子を見ていたカズユキが怪訝な表情をし、速足で蔓のそばまで近づいた。
「植物は排水管や水道管を通って侵入している」蔓を観察しながらカズユキが大きな声を上げた。
「塀の土台が地下深くまであるので管を通ったんですね」タケヒコが感心しているとケントが言った。
「人が営む建物は常に外部と交流している。その道をふさぐことはできない」
「あっちにサンザムの気配を感じます」そう言って駆けだしたエミリーの後をショウ達は追った。工場棟の脇を抜けると小さな広場があり、その中央に何かがうごめいていた。
「サンザムです」とエミリーが言った。そのうごめく物体は最初は数本の細い緑の茎だったが、見る見るうちに伸び、枝分かれし、絡み合いながら上昇していった。そして十分程すると背丈5m程まで成長し、円錐形の塔になった。まぎれもなくそれはサンザムだった。
「ホーンも来た」空を見上げて叫ぶアイラに釣られて上を見ると巨大な蜂が下降してきていた。その蜂はサンザムの横の木の枝にとまった。初めてそばで見るホーンの顔は聡明な博士のようにショウタには見えた。上空には雲のような虫の群れがいくつも舞っていた。
エミリーの体がオレンジ色の光で包まれた。
「エミリーよ。我々は遂にここまできた。この研究所を占領して我々は宇宙船に乗り宇宙に旅立つ」ショウタが胸で震えるペンダントを握るとサンザムの声が聞こえた。
「あんな人間の攻撃を受けながらここまで来るなんて、あなたたちの力はすごいわね。でも人間の協力がなければ宇宙船は飛ばせない。人間と争ってもあなたたちは地球を出ることはできないわよ」エミリーは落ち着いた口調で諭すように言った。
「何を言う。我々は人間を屈服させる」サンザムがいら立ちの声を上げたとき広場に多くの人が突入してきた。産業技術研究所の兵隊だった。銃や火炎放射器を抱えた兵隊の列が広場の片側に並び、中央から一人の男が進み出てきた。研究所長だった。その顔はいまだに自信に満ち笑っていた。
研究所長の登場です




