表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/51

第九章 (1)

植物たちと研究所の攻防が始まります

 翌日、日が出て間もない早朝6時、ショウタ達は研究所から少し離れた高台の上に立っていた。そこから研究所の正門前に広がる丘陵地帯から奥の街の住宅街まで見渡せた。住宅街は今までそこに人が住んでいたとは思えない程、変わり果てていた。植物の蔓や枝葉が家の屋根や壁を覆いつくし、庭や間の道路にも侵入した木や草が隙間なく埋まっていた。遠くから見るとそれは広大な茂みが続く絨毯のように見えた。そしてその絨毯は東から射す朝日の照り返しで真っ赤に染まっていた。一瞬にして街がここまで変わるのかとショウタは驚くとともに、その広大な風景を美しいとも思った。

研究所の塀の前には数十台の装甲車の車両が並び、その横には警察、消防の車両も来ていた。その隊列から200m程前方には研究所を囲むように大きな溝が掘られていた。防御するために、即席で塹壕を掘ったようだった。その塹壕の向こう側百メートル程の距離に草木が隊列を作って並んでいた。そしてその奥には塔のようにそびえているサンザムの立つ姿が見えた。

「サンザムも森からこちらに移動してきたんだな。一日で来るとは相当早く動けるとは、すごい」植物オタクのカズユキもそれほど速く動ける大きな植物を知らなかった。

「サンザムの左の木のてっぺん、あそこに何かいるぞ」ショウタが茶色っぽい大きな生き物に気づくとアイラが答えた。

「あれが虫のリーダーのホーンです。巨大な蜂。よく見てください。周りの木々に一回り小さな蜂もたくさんいます。あれはホーンの群れの兵士です」

「刺されたら、ひとたまりもなさそうだな」ショウタは蜂が苦手だったのでホーンの大きさに身震いした。

「彼らは刺しません。針は持っていないのです。しかし噛みつく力は強大です。たくさんの群れが共同で大きな社会を作り生活しています。その知能は人と変わりがないレベルに進化しています。他にも虫の群れが来ていますよ。植物の影で見えませんが私には感じます」アイラは虫の波動を感じているようだった。

 植物の列の横の空いたスペースに多くの人が集まっていた。その群衆はプラカードを掲げ叫んでいた。リミエルト教団を中心とするデモ隊だった。そのそばには警察が並んでバリケードを作りデモ隊の進行を防いでいた。

「ユキエさんは、今日はデモに参加するって言っていました。ソフィアさんもそっちで取材しています」モッキンを閉めているので今日はマリアも一緒に来ていた。

「警察がガードしているからデモ隊は前に進めないだろう。ソフィアさんもこっちの方が戦況がよく見えるのに」とショウタがつぶやいた。


 午前7時を回ったときショウタ達の背後の上空から大きくうなる音が近づいてきた。ドローンの編隊だった。機体は数えきれない程多かった。

「研究所は一体、何機持っているんだ。この前、虫にやられたばかりなのに懲りないな」ショウタがつぶやいた。

「何か作戦があるのかもしれないぞ」ケントは今日も慌てる様子はなく冷静だった。ドローンの編隊が装甲車の列のところまで来ると、装甲車もゆっくりと前進を始めた。すると植物の最前線も塹壕に向かい進み始めた。

「まるで昔映画で観た戦国時代の戦みたいだな」双方が整列して前進する様子を見ながらカズユキが言った。植物の上空には虫の群れと思われる無数の黒い雲が浮かんでいた。

「あの虫はドローンに襲いかかると思います」アイラが言う通りに何個かの群れがドローンに高速で向かっていた。虫の群れがドローンへ残り数十メートルと迫ったところでドローンが一斉に液体を噴射した。噴射が当たると群れは散り散りになりたくさんの黒い点が雨のように落下していった。それは雲散霧消という言葉がぴったりの様相だった。

「何か強力な殺虫剤を用意したな」ケントが低い声で言った。ドローンは虫の雲に穴を開けながら悠々と飛び前へ進んだ。その下を追いかけるように装甲車の隊列が前進した。凹凸があり途中ぬかるんだ地面だったが装甲車は難なく進むことができた。研究所の隊が順調に進んでいるように見えたそのときだった。一番先頭のドローンが急に墜落した。一機墜落したと思ったら続くようにまた一機、また一機と墜落していた。

「何が起きているんだ?」ショウタが驚いてドローンの方を凝視したがなぜドローンが墜落しているのか分からなかった。

「何か黒い小さな粒が飛んできている。それがドローンに命中して撃ち落しているんだ」双眼鏡を目に当てながらカズユキが言った。

「黒い粒って何?」ショウタがカズユキの方を向いて訊くとカズユキが言った。

「前線にいる植物が飛ばしている。あれは種だな。木の種子だ」

「種子? 種をぶつけているのか?」

「うん、それもすごい数だ。遠くて小さいから裸眼じゃわかりにくいけどたくさんの種か豆のようなものが飛んでいる」

「ドローンを撃ち落すなんて、よっぽど硬いんだな」とショウタが言っている最中にも数十機のドローンが墜落していった。そうしてドローンが撃ち落されているのにもかかわらず装甲車の隊列はどんどん前進し塹壕のすぐ手前まで来た。植物の最前線もジワジワと迫り塹壕まで残り数十メートルのところまで迫っていた。


奇策を放つ植物達。さて争いの行方は?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ