第八章 (5)
再びモッキンに
「形勢は逆転したな。植物や虫の方が押している。既に街を抜けて研究所まで残り少しだ」とカズユキが言うと横でルミコが嘆いた。
「うちも飲まれちゃいましたよ」
「ルミコちゃん、大丈夫?」とマリアが心配すると、意外とルミコは元気よく言った。
「大丈夫です。今は南の方にある親戚の家に避難しています。あれからお父さんも宇宙船のことを遂に私に話してくれました。私の将来のために宇宙に旅立つべきだって説得されました。でも私は宇宙になんて行きたくないですよ。ここでハヤトと二人で暮らせれば私はいいんです」
「そのためにはハヤトが売れないとな」とリョウヘイが突っ込んでもルミコはへこたれなかった。
「売れますよ、絶対。次のお笑いコンテストでは絶対上位に食い込みます」
「売れたとしてもお父さんが許してくれないんじゃない」
「もうリョウヘイさんっていじわるですね。どうにか説得しますよ。もしダメだとしても振り切ります」
「そういうお父さんは今どうされているの?」とソフィアが訊いた。
「今日はコンフォス財団の会合に行っています。産業技術研究所への攻撃をどうするか相談しているんだと思います」
「コンフォス財団が歩み寄って落としどころが見つかればいいが」とケントがつぶやくとエミリーが席から立ち上がった。
「植物、虫と産業技術研究所の話し合いが行われるようです。私、行ってきます」
「行くって、どこへ?」
「すぐそこの木に触れれば参加できます」そう言ってエミリーはモッキンを飛び出し、ショウタとカズユキが後を追いかけた。
エミリーはまた木の肌に手を添え、俯きながら佇んだ。オレンジ色の光を放ち、ショウタの胸のペンダントも震えた。
「もう人間の攻撃は怖くない。もうすぐ我々は研究所の壁を越える。そしてその中枢部に行き宇宙船を乗っ取る。もう人間の敗北は決まった。我々植物と虫、そして全ての地球上の生命を宇宙船に乗せろ」サンザムの声だった。
「研究所長の声明を伝える。我々は負けない。貴方たちを宇宙船に乗せることはできない。宇宙船のサイズは小さい。残念ながら貴方たちを乗せるスペースはない」兄エドモンドの声だった。
「まったく人間は勝手なものだ。ずっと地球の支配者だと思っている。近年は衰退して人口も減少しているにもかかわらず」とサンザムが言うと虫のリーダーのホーンのものと思われる声が続いた。
「農作物は植物と虫の賜物であることは分かっているはずだ。なんて勝手な奴らだ」
「人間よ。地球生命の一員として他の生き物と共に次の未来を築こうとする意志はないのか?」セルジュの声はショウタの心にも響いた。
「その意志はない。宇宙へ飛び立つのは人間の技術だ。その技術は人間のために100%使う」とエドモンドが答えた。
「もしサイズが問題なのであれば、種子や子供の苗だけでも乗せられないのか?」とセルジュが提案したがエドモンドの代弁はそっけなかった。
「最初は小さくてもいずれ成長し大きくなる。それを賄うスペースはない」
「折り合わないようだな。こうなったら攻撃あるのみだ」と言うサンザムの声にエミリーが叫んだ。
「衝突、破壊は何も生まないわ。止めて」
「ここで止まったら何も変わらない 勝手な人間が改心するまで攻め続ける」ホーンの声も力強かった。
「我々は屈しない」とエドモンドが言った。会談は決裂した。
決裂した植物達と研究所、さてこれからどうなる?




