第八章 (2)
宇宙船を見に
タケヒコに案内されるままに隣に立つ大きな工場棟に入った。入口にはロックがかかっていたがタケヒコが暗証番号を入れると開き4人は中に入ることができた。まっすぐ延びた薄暗い廊下を進み左に曲がるとまたドアがあったが、タケヒコは難なく解錠し入ることができた。中には大きな空間があった。見上げても薄暗いため先がよく見えなかったが、天井までの高さが30m以上はありそうだった。扉を入って右に曲がると奥の補助灯の光を遮る真っ黒な影がそびえていた。
「あれが宇宙船です」タケヒコがささやいた。それは巨大な塊だった。蚕の繭を細長く伸ばしたような形をし、奥まで続いていた。向こう側の先端はよく見えなかったが、長さが300m以上はありそうだった。見上げるとてっぺんは天井に届く程高かった。近くに寄り表面に懐中電灯の光を当ててみたが、光を反射することはなく、底なしの奥深い黒い色をしいていた。それは港で見たことがある巨大なタンカーより大きいとショウタは思った。
「この巨大な塊を宇宙に飛ばすのか?すごいな」ショウタはエンジニアとしてその巨大さに興奮を覚えた。
「3億年前に発明されていた反物質エネルギーを利用する推進エンジンの技術をコンフォス財団が再発見し利用しています。これは約2000人の人を運ぶことができる輸送客船です。現在、火星と木星の間の小惑星に人々が暮らせる宇宙ステーションを建造する計画で、そこまで人を運びます。この輸送客船でも基本的な生活ができるように設計されています。宇宙まで飛ぶ豪華客船のような作りです」ショウタはこの宇宙船が飛び上がるところを見てみたいと思ったが、この中で暮らす気にはなれなかった。豪華客船の大きさと言っても街よりは、ましてや地球よりはよっぽど狭い。宇宙ステーションであっても狭いことには変わりなく、そこで長く暮らす気にはとてもなれなかった。
「その宇宙ステーションで宇宙の中を移動するの?」カズユキがタケヒコに訊いた。
「はい、太陽系を出て新たな生活ができる惑星を探します。候補として既に何個か惑星があり調査を続けながら最終候補地を絞りそこを目指します。一番近い候補の惑星に着くまでに1000年以上かかります」
「1000年後って孫やひ孫のずっと先の子孫の代じゃない。自分の代はずっと宇宙ステーションで暮らすんだ。それは嫌だな」カズユキも宇宙ステーションで生活をしたくないようだった。
「俺もこのまま地球で暮らしていた方がいい。妻も子供もいないしな。しかし子供を持つと気持ちが変わるのかもしれない。子孫に滅びる思いをさせたくない、宇宙に希望を見出したいんだろうな」ケントの目は宇宙船を越えて宇宙を見つめているようだった。
そのとき急に眩しい光がショウタの目を刺し、工場内が急に明るくなった。
「君達、勝手にここに入ってもらっては困るんだけどな」それはケントと昔一緒に研究していたというリキヤの声だった。声の方を向くと眩しい光の後ろに10人程の人が歩いて向かってきていた。そして先頭の中央にはリキヤの顔があった。後ろを振り向くとそこにも10人程の人が迫っていた。通路の前後をふさがれたショウタ達にはもはやどこにも逃げる道はなかった。
ショウタ達 万事休す




