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第八章 (1)

新興宗教 リミエルト教団が動き出したようです

 翌朝、テレビのニュース番組が早速、リミエルト教団のデモの様子を伝えていた。1万人規模の信者と見られる群衆が市内の公園に集合していた。これから産業技術研究所に向けてデモ行進をすると息巻いていた。

「コンフォス財団って金持ちだけの集まりですよね。そこが密かに宇宙船を開発して自分達だけ地球から逃げようとしているんですよ。それが許せますか?皆がこれからどうなるんだろうと不安になっているときに、こっそり自分達だけで行こうとしているんですよ!全く富豪って勝手で傲慢ですよね」インタビューに応じた中年の女性信者が金切り声で叫んでいた。掲げられプラカードには『勝手に行くな』『隠しているなんて卑怯だ』『私たちも連れていけ』などの字が書かれていた。一晩で作ったのであろう、どのプラカードも手で殴り書いたような字が躍っていた。

 デモがあるにもかかわらず産業技術研究所は植物や虫への攻撃を止めなかった。昨日の最前線から更に装甲車やドローンが薬剤散布を進めジワジワと植物たちは後退していった。巻き返すと言っていた植物や虫はおとなしく、新たな動きはなかった。ネットの騒ぎやデモが発生しているにもかかわらずコンフォス財団と研究所は声明などは何も出さず、報道陣の取材にも一切応じなかった。


 ショウタ達は研究所への侵入をその日の夜に決行した。トウヤを通じて産業技術研究所の秘密を打ち明けてくれたエンジニアに所内の案内をお願いした。エンジニアは名前をタケヒコと言い年齢は35歳でショウタより10歳年上だった。タケヒコとは研究所内で落ち合うことにし、ショウタとケント、カズユキの3人は目立たないよう黒のスウェットの上下にキャップを被り産業技術研究所に向かった。時は夜6時過ぎ、既に日が暮れて周囲は真っ暗になり、灯りを照らさなければ足元は見えなかった。タケヒコに言われた通りに研究所の北東側の裏手に行くとそこの塀には小さな隙間があり難なく研究所内に侵入できた。産業技術研究所は、植物と虫の来襲やデモへの対応に追われているため裏側の警備は手薄になっているとタケヒコが言っていた。建物に近づくと手筈通りタケヒコが待っていてくれた。タケヒコは背が165cm程度と小柄で手入れをしていない感じのぼさぼさな髪形をして、いかにも真面目なエンジニアという風体をしていた。

「こっちに車両の整備場があります。そこに大きなタンクがあり、その中に薬剤が貯蔵されていると思います」出会うとタケヒコはすぐに道案内をしてくれた。建物に沿って南側に進むと100mほど先に平屋建ての別の建物があった。灯りを当てると黒い油の染みの付いた壁とシャッターが下りた幅広い口が見えた。シャッターの横にある扉には鍵がかかっておらず建物の中にすんなり入ることができた。中には整備中なのか数台の装甲車が並んでいた。

「こっちです。誰もいないと思いますが、念のため壁沿いを目立たないように歩きましょう」タケヒコに案内されるまま3人は身をかがめて速足で建物の奥へ歩を進めた。装甲車3台の横を通りすぎると背の高い円柱状の大きなタンクが目に入った。ステンレスでできているのかタンクの表面は金属色に輝いていた。タンクの側面には大きく『危険物』の表示があった。

「このタンクです。1年位前にできた新しいタンクです」とタケヒコが言った。

「エミリーちゃんのご父兄を雇った時期に重なるな。その頃から植物への対策を準備していたんだな」ケントがタンクを見上げながら言った。

「あそこが排出口ですね。あそこを壊しちゃいましょう」ショウタがパイプの繋がれたコックの付いた蛇口を指さした。

「後、タンクにも穴を開けて薬剤を出して、これ以上貯められないようにした方がいいな」

「ここには廃油口があるのでそこに薬剤を流せばいいと思います」ケントの言葉にタケヒコがアドバイスした。早速、3人は準備した工具類を取り出し作業に取り掛かった。工具は工務店も経営しているリョウヘイが用意してくれた。リョウヘイはあれほど研究所に嫌われたくないと言っていたくせに最近はだいぶ姿勢が前向きになっていた。内情が暴かれるにつれ産業技術研究所が嫌いになってきたようだった。用意された工具は優秀で音も少なく金属に穴を開けることができた。タケヒコを含めた4人はその工具で片っ端からパイプやコック、タンクに穴を開けた。穴からは薬剤の液体が噴出しドクドクと地面に沿って廃油口に流れて行った。エンジニアで工作作業の得意なショウタやタケヒコの作業は手際がよかった。しかし植物オタクのカズユキの作業は遅くショウタの半分くらいのスピードでしか作業が進まなかった。それでも4人で手分けすればタンクを使用不能にするくらいの作業は30分程で終了した。

「長居は無用だ。早く引き上げよう」作業に目途が立ったところでケントが皆に言い、工具を片付けて4人は来た道を引き返した。

「宇宙船を見て行きますか?」整備場を出たところでタケヒコが3人に提案した。

「え?見られるの」ショウタが驚いて問うとタケヒコが自信ありげに答えた。

「はい、入れます。私が鍵を開けられるので」

「見てみたいな」とカズユキは行きたがった。

「あまり長くいない方がいいが、見たい気持ちもある」少し躊躇したケントだったがその言葉を聞いてショウタは言った。

「決まりだな、行こう」



宇宙船が見られる?

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