第七章 (3)
なぜ植物は侵攻してきたのか?
エミリーは研究所の建物を出ると、すぐに目の前の木に手を添えた。それはいつものように木と会話をする姿勢だった。エミリーの手がオレンジ色に光り、ショウタの胸元のペンダントも震え出した。
「サンザム、どういうこと?木々がまた進みだしたって聞いたわ」とエミリーが慌てた口調で声を上げた。
「虫だ。虫が動きだした」とサンザムの低い声が響いた。
「え?」エミリーも意外な答えに驚いているようだった。
「キナガムシだ。彼らは木に寄生し、食い尽くすことはせず木と共生する。しかしときに木を操る。枝葉に特殊な粘液を送りこみ木を催眠状態にし自分の意のままに動かす」
「虫も宇宙に行きたがっているんだよ」それはセルジュの声だった。
「セルジュ、どういうこと?」
「虫が動き出すのも、このままでは自分達の命が途絶えることを思えば無理もない。怖がっているのは人だけではないのだよ。地球全体の生命が恐怖で震えている」
「宇宙に行ったらもっと怖いことがあるかもしれないのに、なぜ皆、宇宙に行きたがっているの?」セルジュの言葉にエミリーが悲痛な叫びを上げた。
「宇宙に行きたいのではない。このまま滅びるのを待つのが嫌なのだ」サンザムが訴えた。
「今までこれだけ地球にお世話になってきたのに?」エミリーの問いにサンザムはゆっくりと答えた。
「もちろん地球には感謝をしている。しかし地球が終わろうとしているとき、新たな希望を求めて挑戦したいのだ。それは地球への感謝の気持ちに反するものではない」
「そういう若い気持ちを私は否定することができない」とセルジュも理解を示した。
「理解ができないけど、私にも否定はできないわね。しかし争わないで。研究所も攻撃の準備をしているそうよ。このままでは衝突は避けられない。お互い多くの怪我人や死者が出るわ。どうにか研究所を抑えるから話し合いをして」
「虫のせいとはいえエミリーの交渉の尽力に報えなかったことは謝る。しかし彼らが攻撃をしてきたら我々も攻撃をするだけだ。宇宙船に乗れるようになるまで」
「衝突しても何も生まれない。止めて」エミリーは金切り声を上げた。
「彼らが自分達だけで行こうとするからいけないのだ。残念ながら我々には宇宙に行く力はない。人間にはその力がある。地球が生んだ生命の一員として、他の生命に協力してくれればいいのだ。自分達だけで独占せずに」サンザムは大きな声で訴えた。
「争いは愚かだ。犠牲者も出る。歩み寄れ」セルジュが諭そうとするとサンザムが怒りの声を上げた。
「歩み寄らないのは人間の方ではないか」
争いは止められないのか?




