第七章 (2)
研究所へ
産業技術研究所の会議室のインテリアは洗練されていた。ダークグレーを基調とし、ところどころに配置された半光沢の金属がアクセントになりクールで落ち着いた印象を与えていた。自然の風合いが好みのショウタにとっては無機質すぎたが、悪くはないと思った。インテリアのセンスでは市役所と産業技術研究所の間には雲泥の差があった。コの字型に配置された机の窓際側に市長とショウタ達が座った。市からは市長以外に警察署長、消防署長も同席した。
「市長に警察署長、消防署長もお揃いでわざわざおいでくださりありがとうございます」部屋に入ってきた研究所長の顔は笑っていたが眼つきには訪問を歓迎していない気持ちが現れていた。研究所長と一緒にリキヤと総務部長も参加した。研究所長が向かい側の席に着くとすぐに市長が口火を切った。
「短刀直入に申し上げます。ここにいるエミリーさんが植物を率いるリーダーのサンザムと交渉し、今、植物は侵攻を止めています。猶予は1週間だそうです。植物の要求は、産業技術研究所が開発しているといわれる宇宙船に同乗し地球から脱出することです。その要求に応えていただくことは可能でしょうか?」
「おやおや、市長、あなたはエミリーさん達の言うことを信じるのですか? 宇宙船の開発などは私どもは知らないのですが」
「彼女が言うように植物の侵攻は止まっています。また市役所への侵攻も森の公園の木々や鳥の協力で防いでくれている。エミリーさんが街の防衛に協力してくれているのはまぎれもない事実です。植物が研究所の宇宙船に乗せてくれと言っているというのです。私はエミリーさんの言うことに耳を傾けたいと思います」市長の言葉に続きソフィアが付け加えた。
「研究所が地球から脱出するために宇宙船を開発しているということは私たちも証拠をつかんでいます。確かな筋から二人の人の証言をもらい、証拠となる書類や図面もある。これ以上、隠さないで事実としてお認めになってはいかがでしょうか?」
「相変わらずジャーナリストのお方はセンセーショナルなことがお好きですね。まあそれで脚光を浴びて読者を増やすのがご商売だからしょうがないのでしょうが。でもいい加減なことは言わないでいただきたいですね」研究所長の言葉は輪をかけて嫌味な口調になった。
「市としては植物に占領されている地を早く元に戻し、住民が安心して暮らせるようにしたい。そのためには植物の侵攻を止める必要があります。植物の目的が研究所であるのはその行動からも明らかです。ここは研究所の理解と協力が不可欠です」
「はい、それは分かっていますよ。何が原因なのかはわかりませんが、植物はこちらへ向かっている。そのため我々も防御に協力すると先日、市長にお約束をしたばかりです。ちょうど防御の準備が整ったところで明日にでも市役所に出向く予定でいました。我々の用意したもので植物は撃退できますよ。家や建物を壊さずに植物を退ける方法を用意しました」研究所長の言葉は自信に溢れていた。
「何を用意されたのですか?」とケントが訊いた。
「それは後程、市長にお見せしますよ」研究所長はケントを相手にしていないという態度を取ったのでショウタにムッと怒りが沸いた。
「ご準備をありがとうございます。ただ衝突はできるなら避けたいと私は思っています。1週間の猶予の間に一度植物と話し合いを持つというのではいかがでしょうか?」と市長が提案した。
「それは構いせんよ。エミリーさんはご存じですが、エミリーさんのお父様、お兄様が我々に協力してくれています。二人も植物と会話ができます。二人をサンザムの元に派遣しますよ」
「ご理解をありがとうございます。それでは明日の朝、早速サンザムのところに行きませんか。私たちも同行します」研究所長の同意に安心したのか市長の顔が少し明るくなった。
「わかりました」と研究所長が答えたとき、警察署長が端末を見て驚いた様子で市長に耳打ちをした。市長の顔色が変わった。
「植物の侵攻がまた始まったようです」と市長が言った。
「え?そんなはずは……」とエミリーが驚くと研究所長がにやけながら言った。
「植物に騙されましたね」
「ちょっと話を聞きに行ってきます」エミリーは会議室を飛び出した。すかさずケントとショウタも後を追った。
サンザムは約束を破ったのか?




