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第六章 (1)

また森の奥へ。解決の糸口をつかめるのか?

 エミリーがまた北の森に行ってサンザムと話をしたいと言い出したのでショウタとケント、カズユキは一緒に森に入ることにした。エミリーは『今まで秘密だった宇宙船の話が公になり一般の人が知るようになる。そうなれば植物を宇宙船に乗せることも交渉しやすくなるので、もう少し待ってくれ』とサンザムを説得するつもりでいた。

「でもやっぱりコンフォス財団は植物を乗せることには同意しないと思うな。おそらく宇宙船はそんなに大きくないと思うんです。人間を乗せるだけでもう一杯でしょう。植物や他の生物に構っている余裕はない。あいつらは根っから身勝手だからよそのことなどどうでもいいと思っているし」カズユキは諦め口調だった。

「そうかもしれませんが、まずは今の侵攻を止めて交渉の時間稼ぎをしたいんです。このままだと衝突するだけです」エミリーはまだ希望を捨てていなかった。

「そうだな。どうにか努力をしてみよう」ケントはエミリーに同意した。

北に向かい森の入口に差し掛かると以前あった茂みの垣根の列はそこにはなかった。

「既に街の方に移動したんじゃないかな。攻めてきている植物もそんなに数はいないのかもしれない」とカズユキは分析した。


 森は変わらず原生林の爽やかさを保っていた。活動的なことが苦手なショウタも森の中を歩くことが好きになっていた。

「よぉ」1時間程歩いた先でアイラが茂みを掻き分けて突然、現れた。

「何だ、またおまえか」ショウタはまた名前を思い出せなかった。

「おまえじゃない、アイラだ。そろそろ名前を覚えろ」

「悪い、悪い」ショウタは笑いながらアイラの肩を叩いて謝った。

「アイラ、今日は森で何しているの?」とカズユキが訊いた。

「いつものように虫を調べている。俺は毎日、この森に入っているんだ」

「何か変わったことはあった?」

「大陸から来ている虫が増えているな。今日は甲虫の群れを見かけた。昨日まではいなかった種類だ」

「そろそろ街にも出てくるかな?」と言うカズユキの問いにアイラが答えた。

「それはわからない。ただ少し気が立ってきているのは事実だ」

「暴れなければいいですね」とエミリーが心配した。

「もし暴れ出したら説得しても、虫を止めることはできないよ。暴れる原因を解決しないと」

「それは植物と同じか」アイラの言葉にショウタは納得した。

「やはりコンフォス財団と産業技術研究所次第だな」ケントがつぶやいた。

「俺は虫を引き続き調べてみる」

「わかった。何か変わったことがあったら教えて」カズユキがそういうとアイラは分かれて別の方向に歩いていった。


 それから1時間程歩いてサンザムまで残り少しの距離まで近づいたときエミリーが急に立ち止まった。

「ちょっと、あっちに行っていいですか?」言葉より先にエミリーは右手に曲がっていた。速足で歩くエミリーの後をショウタ達も追った。こんもりした茂みを一つ越えるとブナの大木に寄り添うように立ちエミリーを見つめる二人の人影があった。

「ライアン」人影を見つめてケントが声を上げた。エミリーは駆けだして二人に詰め寄った。

「全く!ここで何しているのよ」

「お前の心を感じてここまで来た。産業技術研究所の人がそこにいるから長居はできない」父のライアンが言った。

「研究所は宇宙船を造っているんでしょ? なんでそんなことの協力をしているの?」エミリーの問いに兄エドモンドが驚いた顔をして訊き返した。

「なんでそれを知っているんだ?」エドモンドの言葉にエミリーは少しイラっとしたようだった。

「必死に調べたわよ。父さんや兄さんを助けるためにケントさん達が協力してくれたの」

「ケントさん、ありがとう。迷惑をかけてすまない」ライアンがケントに頭を下げた。

「いや、いいんだよ、ライアン。街を守るためにも研究所を調べる必要があったんだ」

「宇宙船なんて金持ちが自分勝手に造ろうとしているんでしょ?そんなことに協力するなんて信じられない」エミリーが攻めると兄のエドモンドの目がエミリーを鋭く刺した。

「産業技術研究所は植物を止めれば俺たちを宇宙船に乗せてくれると約束してくれたんだ」

「兄さんは宇宙に行きたいの?」

「俺は宇宙に行きたい。そこにいけば何かがある。ここにこのまま居ても滅びの道を進むだけじゃないか」エドモンドは強い口調で主張した。エミリーは唖然とした表情になって父に顔を向けた。

「父さんも同じ意見なの?」

「父さんにもエドモンドの気持ちはわかる。父さんも若いときは新しいことをしたいと思ったもんだ。家出して里を抜け出そうと考えたこともある。エドモンドはベティも連れていきたいと言っている。二人で家庭を作って宇宙で新しい人生を始めたいと思っているんだ。そんなエドモンドを応援したい」

「研究所の条件は二人が一緒に協力することだった。その条件を父さんは呑んでくれた」ライアンの後にエドモンドが補足した。

「なんて兄さんは自分勝手なの!」エミリーがエドモンドに詰め寄った。

「もう宇宙船のことは外部の人が知ることになった。もうすぐこのことは公になる。そうなれば隠す必要はなくなり二人は自由になれる」とケントが説明した。

「しかし植物は止めなければならない」ライアンは眉間に皺を寄せた。

「どうにか植物も宇宙船に乗せて上げられないの?」エミリーが追及した。

「宇宙船はそんなに大きくない。草木を乗せるスペースはない」

「そこをなんとか、研究所を説得してよ」エドモンドの諦め口調に対しエミリーの声は更に悲痛な響きになった。

「今、種子だけでも乗せられないかと研究所に提案をしている。しかし研究所長はそれも駄目だと言っている。産業技術研究所は植物を屈服させるつもりだ。彼らは今、その準備をしている」ライアンの声は冷静だった。

「どうやって?」

「それは父さんたちにはわからない」エミリーの問いにライアンが答えた。

「争うのは止めて。衝突は何も生まないわ」とエミリーは叫んだ。

「産業技術研究所が植物を力で屈服させるんだったら、あなたたちにはもう用がないんじゃないですか?」とショウタが二人に迫った。

「そうだな。父さんたちはお役御免だ」ライアンの諦めた口ぶりにエドモンドが苛立ちながら叫んだ。

「それじゃ、駄目なんだよ。どうにか俺たちで解決しないと」

「でも産業技術研究所も相当自信があるようだ。衝突は避けられない」

「私、もう一度サンザムと話をしてみる。セルジュにもお願いしたの。サンザムを説得するように」ライアンの言葉にエミリーが提案した。

「セルジュに助けを求めたのか。でもセルジュでもこの動きを止めるのは難しいだろうな」エミリーの意志の強い言葉にもライアンは諦めた口調だった。

「やってみるわ。せめてもう少し時間が欲しい」エミリーの言葉は力強かった。

「父さん、そろそろ帰らないとまずい」エドモンドが後ろを気にしながらライアンを呼び寄せた。

「そうだな」

「ライアン、エミリーちゃんのために里に帰ってあげてくれ」帰ろうとするライアンにケントが強い口調で訴えた。

「わかった。どうにか道を見つけるよ」とライアンが答えると二人は足早に離れて行った。


父 ライアンは何かしてくれるのか?

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