第五章 (8)
街中に新たな動きが
「市庁舎の北で騒ぎになっているぞ」翌日、朝早くにショウタはカズユキからの電話で叩き起こされた。時計を見るとまだ午前6時を少し回ったところだった。ショウタは急いでケントとエミリーに連絡しカズユキがいる場所に急行した。
ショウタは木が歩く姿を初めて見た。市庁舎の北側を通る幅の広い道路をケヤキ、イチョウ、カエデ、ポプラなど何種類もの木々がてもそもそとゆっくり行進していた。地面に広げた根をくねらせ、背の高い幹全体を揺らしながら歩進み、根が道路と擦れ合うズゥズゥっという低音がお腹に響いた。それらの木々は長い列を作り隙間のない壁になっていった。それはあたかも街の南部を守る城壁だった。
「ありがとう、守ってくれるのね」エミリーが木々を見上げながらつぶやいた。
「え、どういうこと?」ショウタが横を向いてエミリーに訊ねた。
「あれは森の公園の木々よ。北の草木が街へ侵入することを防ごうと壁になってくれている。街の人を守ってという私の願いに応えてくれているの」
「人を攻めるものもいれば、味方になるものもいる。植物にもいろいろあるんだな」ケントが腕組をしながら木々を眺めていた。
「え、あなたたちも来てくれているの?」とエミリーが空を見上げながら驚きと嬉しさの混じった声を上げた。ショウタがエミリーの見ている方向に目を向けると遠くに複数の黒い雲のような塊が空に浮かんでいた。眺めているとその塊はどんどんこちらに近づき、見る見る大きく広がった。それは鳥の群れだった。ムクドリ、スズメなどの小鳥が群れを作り舞っているのだった。中には体の大きなカラスの群れもあった。
「あれも森の公園の鳥かい?」ショウタが訊くとエミリーが答えた。
「そうです。森の公園に暮らす鳥だけでなく、カリハの周りに暮らす鳥も街を守るために集まっているみたいです」
「エミリーちゃん、凄いな。君の想いで草木や鳥がカリハを守ることを応援している」と言うショウタの目の前で鳥の群れが急降下しだした。ビルや家に絡み付いている蔓などを嘴で突いているのだ。ツタは鳥の攻撃が辛いのか、うねりながら嘴を避けるように後退しだした。
「鳥の攻撃が効いているね」感心しているカズユキに対しケントは冷静だった。
「ああ、鳥の助けはありがたい。でも蔓はそこら中にある。あれだけ鳥がいても全部を撃退するのは難しいな」
「せめて街の中への侵入を止めることができればいいと思います。街を迂回して産業技術研究所に向かうようになれば」エミリーの分析にケントは納得した。
「そうだな。街を避けて郊外の産業技術研究所とだけぶつかってもらえばいい」
エミリーに協力的な木や鳥もいました




