第五章 (7)
さて研究所の秘密をどうやってあばいていくのでしょうか?
「市長が研究所長と直接話をした結果の連絡が市からきたわ。やはり研究所長は、植物の侵入が産業技術研究所を目的としていることを認めず、宇宙船の開発も認めなかったそうよ。植物の侵入の原因もわからないと言っていたって」ソフィアが皆に報告をした。昼過ぎ、開店前のモッキン。植物が街の中心に迫り出してからというもの、お昼からここに常連が集まってお互いの情報交換をするようになっていた。
「まったく、相変わらず研究所はとぼける気だな」研究所長の薄気味悪くにやけた表情がショウタの頭に浮かんだ。
「ただ市長の要請もあって研究所も植物の防御に協力するそうよ」ソフィアが付け加えるとエミリーが心配そうな顔になった。
「父と兄も駆り出されるのでしょうか?」
「どうかしらね。植物と話せることは有用だから前線に出るよう指示される可能性はあるわね」とエミリーが言った。
北西部の住宅街から始まった植物の侵入は南東方向に進み、既に街の中心部にある市庁舎に残り2キロメートルのところまで迫っていた。街の北西部を埋め尽くした植物は、そこに暮らしていた住民を追い出し避難民が増大、2万人を超える人々が南部の避難所に押し寄せていた。学校などの公共施設だけでは場所が足りなくなり民間の宿泊施設が部屋を提供したり民間企業がオフィスの空きスペースを解放したりしていた。しかしこのまま侵入が進めばそれらの場所も不足するのは時間の問題だった。企業も営業を止めるところが出てきており街の機能が麻痺し始めていた。住民は疲労困憊するとともに植物の来襲の恐怖におののいていた。幸いモッキンは街の南西にあり、ショウタも南部に住んでいたので難を逃れていた。植物は更に南東方向に進んでおり街の中心を越えてその先の丘にある産業技術研究所を目指しているのは明らかだった。
ショウタがソフィアやケントとこれからどうするべきかなどの話をしているとトウヤが飛び込んできた。
「遂に見つけたぞ!産業技術研究所が宇宙船を開発していることを認める人を」走ってきたのかトウヤの息は上がっていた。
「え?誰が認めたんです?」ソフィアがトウヤに詰め寄った。
「エンジニアだ。以前の商社時代の受注業務で関わりをもった研究所のエンジニアにコンタクトしたんだ。十人以上に連絡をとったがほとんどの人は、何も知らない、話せないと答えてくれなかった。しかし今さっき一人のエンジニアが認めた。『産業技術研究所は宇宙船を開発している』って」トウヤはカウンターに座りケントに注いでもらったコップの水をあおった。少し息が落ち着いたようだった。
「何でそのエンジニアの方は認めたんですか?守秘義務があるんでしょ?」とショウタがトウヤに訊いた。
「どうも産業技術研究所の開発方針が気に食わないみたいだ。上司ともぶつかってうまくいっていないらしい。このまま開発を進めるなら研究所を辞めたいと言っていた」
「あれだけ大きい組織だと合わない人は出るよな。俺はとても勤められない」トウヤの言うことに納得したようにケントがつぶやいた。
「今の植物の侵入の原因が宇宙船計画のせいだと気づいて、街を守るためにも告白することを決心したみたいだ」
「詳しく話を聞きたいです。その人に会えますか?」とソフィアが訊くとトウヤがすぐに答えた。
「ああ、明日、時間を取ってくれる」
少しずつほころび始めた研究所の秘密




