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第四章 (2)

また飲み屋 モッキンです。

「おいおいツタだけじゃなかった。スイカズラがいたよ」開店間際のモッキンに興奮したカズユキが飛び込んできた。

「スイカズラって何よ?」聞いたことがない名前だったのでショウタが訊いた。

「古来からいる甘い蜜を出す蔓性の植物だよ。だけど今日見たのは南の島に生息する変わった種類だった。根元が強靭で自ら歩いて移動することができる。僕も初めて見たよ。この国には自生していないから」

「へぇ。それがどこにいたの?」

「北東の街の外れ。住宅街に押し寄せて来ている。スイカズラ以外にもいろんな種類がいてさ、楽しくて色々回ったよ」

「お前、皆が困っているときに呑気だな」ショウタはカズユキの満面の笑顔をした陽気さに少し呆れた。

「楽しんでいるだけじゃないよ。どんな種類がどういう風に来ているか調査も兼ねているんだから。皆のためになると思ってさ。車を持ってないからほとんど歩いて回って疲れたけど。二日間歩き通しで脚が棒みたいだ」

「それはご苦労様でした」

「植物たちは北の山にある原生林から来ているな。海の半島から山を越えて来ているんだと思う。北東の住宅街には既に相当入り込んでいて、街の中心の市庁舎までは、もう残り10km位のところまで迫っている。バリケードなんか簡単に突破していた。警察もだいぶ手を焼いている」

「草木のスピードも上がっているな。このままだとエミリーちゃんの言うように街が占領されるかもしれない」ケントが心配した渋い表情でつぶやくとユキエが怖がった。

「そうなるとどうなるの?私たちが街に住めなくなるっていうこと?」

「あの子たちは今、人間不信になっています。人が住めなくなることなんてどうでもいいと考えています。だからこのままだと街の住居にもどんどん侵入してくると思います」と言うエミリーは困った顔をしていた。

「もうこの世の終りね。神に祈らないと」

「だから神に祈ってもどうにもなりませんよ」最後は神頼みを唱えるユキエにショウタは呆れていた。


 研究所長に会ってから二日が経っていた。エミリーには父兄からのメールはまだ届いていなかった。植物の街への侵入が進んでいたが、モッキンの仲間の中では何も次の一手が思い浮かばず足踏み状態だった。

来店してすぐに生ビールをあおったソフィアが口を開いた。

「今日の昼の市長の会見を聞きました?私は現場で聞いたけど、産業技術研究所のことは一言も出てこなかったわ。植物の侵入状況の説明の中でも植物が研究所を目指しているという言葉もなかった。ただ警察と消防と協力して防御、対策を行っている、原因は不明、現在調査中と言うだけだった。調査は大学の植物学者にも依頼しているらしいけど原因は何もわかってないって」ケントもショウタもその記者会見をテレビで見ていたが、ソフィアの言う通り産業技術研究所という言葉は一言もなかった。

「研究所長は市とも連絡を取り合っていると言っていたけど、あれは嘘だったということですかね?」ショウタがソフィアに訊いた。

「嘘をついているのか、市が隠しているのかのどちらかね。研究所が関係していて、研究所が原因だと疑われると追及の手が研究所に及ぶから、市に公表しないように要求している可能性はあると思うわ。研究所は市の産業に大きく貢献しているから、もし要求があれば市も無下にはできない」

「でも今の市長は革新系リベラルだ。そういうしがらみを一番嫌うと思うな」ソフィアの言う二つのケースに対しトウヤが意見した。

「ということはやっぱり産業技術研究所は、自分達のところにも侵入していることを報告していないことになりますね。市に話に行った方がいいんじゃないですか?」ショウタはどうにか扉をこじ開ける方法はないかとイライラしていた。

「ただ闇雲に市や警察に行っても相手にされないわよ。植物は研究所を目指していて、来襲の原因は研究所であることをエミリーちゃんが植物に聞いたと言ってもなかなか信じてくれないわ。まずエミリーちゃんが植物と会話できることから説明、証明しないといけない。でもそれは簡単じゃないし、時間もかかる。研究所長はしらばっくれているから、所長に会って聞いた話も役には立たない。市に行っても担当者に門前払いされるのがオチよ」確かにただ市に行っても無駄だなとショウタは思った。

「産業技術研究所は絶対、何か悪だくみをしているわ。どうにか暴いてやりたい」ソフィアが生ビールのジョッキを机に叩きつけた。その大きな音にジョッキが割れるんじゃないかとショウタは思った。

「私、草木に会いに行きたいです。もっと彼らと話をすればなぜ産業技術研究所を目指しているのか?どうしたら街への侵入を止めてくれるのか?を教えてくれると思うんです」エミリーが訴えた。

「研究所を目指しているのは、そこにある物を欲しいからだ。それはおそらく開発している物だ」ケントはカウンター越しにエミリーを見つめていた。

「そうなんです。草木は産業技術研究所の秘密を既に知っていると思うんです」

「警察が手薄なところを知っているよ。そこに行けば比較的ゆっくり植物と接することができると思う」とカズユキが提案した。


エミリーを連れて草木に会いにいくことに

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