第三章 (5)
再び、モッキンに集うみんな。
その夜もモッキンではいつものメンバーがカウンターを囲んでいた。今日はエミリーもカウンターの隅に座りウーロン茶を飲みながら皆の話の輪に入っていた。
「やっぱり産業技術研究所は怪しいわよ。たとえお金を持っていたとしても、個人があんな莫大のお金を出すなんておかしい。隠しているけど、どうせろくなもんを造っていないわよ」ソフィアはイラつきながら生ビールの入った大きなジョッキを一気に飲み干した。
「冷たかったですよね。エミリーちゃんみたいなかわいい女の子が困っているのにあの冷静さはなんなんでしょうね。だから偉い人って嫌いなんですよ」隣でショウタも一緒に生ビールをあおった。
「あれが世間のオトナなんだよ」刺身を皿に盛りつけながらケントが諦めた口調で言った。
「元、世間のオトナだった俺から言わせてもらうと、この壁は高いぞ。なかなか越えらないと思う。ただ闇雲に迫っても駄目だ。何か糸口を見つけないと」そのトウヤの言葉をリョウヘイは嫌がった。
「あんまり、波風立てないでよ。俺の仕事がなくなっちゃうよ」
「リョウヘイさんはもういいですよ。無理しないで。俺たちでどうにかしますから」ショウタがきっぱり言い放った。
「兄がこだわっているからいけないんです。一体、何しているんだろう。教えてくれてもいいのに……」エミリーが前を見つめながら独り言のようにつぶやいた。
「僕は政治的なことはよくわかんないけど、植物が気になります。やっぱり街に来ている木は産業技術研究所に関係あるんじゃないかなあ。植物をもっと調べたらどうだろう」カズユキは植物オタクらしく木にこだわっていた。
「あの木は怖いわよ。世界の終末の始まりよ。神にお祈りしましょ」ユキエが両手を合わせ拝むポーズをしていた。そのとき入口の扉が開いて隣の老人が飛び込んできた。
「ケントさん、また木が北の方に襲って来てるって」
「え? また」
「私、また行ってみたいです」驚くケントに向かいエミリーが懇願した。
「よし。爺さん、また車貸してくれ」
「俺も行きます」エプロンを脱ごうとしているケントにショウタが呼応した。他の客も俺も、俺もと外に出る支度をした。
「私は行かないわよ。怖いもん」ユキエは出て行こうとしている皆に信じられないという顔で大きく声を上げた。
「マリアちゃん、店番を頼む!」そう言ってケントは外に飛び出し、他の皆も後ろについて出て行った。モッキンに残ったのはマリアとユキエだけだった。
また植物の来襲?




