表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不完全選択(ダメ出し未来予報)  作者: シエスタ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/15

第4話 その能力、共有すると死にます

放課後。


俺は、白石しおりに呼び止められていた。


教室の外。

人通り、そこそこ。

逃げ場、なし。


……嫌な予感しかしない。


「少し、話せますか」


穏やかな声。

だが、目が笑ってない。


……この人、確信してる。


「ここで立ち止まると、色々終わる気がする」


――ピロン。


【失敗予報:今逃げると、翌日もっと面倒になります】


……くそ。


「分かった」


俺は観念して、廊下の端に寄った。


沈黙。


一秒。

二秒。


……先に喋ったら負けな気がする。


――ピロン。


【失敗予報:この沈黙、相手に主導権を渡します】


……もう渡してるだろ。


しおりが口を開いた。


「確認です」


確認って言葉がもう怖い。


「あなた、“選ぶ前に失敗が分かる”んですね」


……直球すぎないか。


「そんな能力、あるわけないだろ」


――ピロン。


【失敗予報:否定が弱いです】


……知ってる。


「でも、もしあったら?」


しおりは、逃がさない。


「もし、ですよ」


「もし、ですか」


……仮定の話ならセーフ。

多分。


「仮に、ですよ」


俺は指を立てた。


「失敗だけ分かる能力があったとする」

「成功は分からない」

「正解も分からない」

「ダメな選択だけ、事前に警告される」


しおりは、黙って聞いている。


「それってさ」


俺は笑った。

つもりだった。


「めちゃくちゃ地味じゃないですか?」


――ピロン。


【失敗予報:その笑い、必死さが出ています】


……やめろ。


しおりは、少し考えてから言った。


「地味ですね。でも」




「危険です」


……来た。


「どういう意味?」


しおりは、指を折る。


「一つ。

その人は、“失敗しなかった人”になります」


「それ、良くない?」


「良くありません」


即答だった。


「失敗しない人は、

周囲から“有能”に見えます」

「でも本人は、

なぜ成功したか分からない」


……あ。


「二つ。

周囲は、その人に判断を委ね始めます」


……ああ。


「三つ。

失敗した人間は、

“なぜ止めなかった”と責められます」


……待て。


「四つ」


まだあるのか。


「その能力者は、

“言わなかった失敗”を、

全部背負うことになります」


背中が、冷えた。


……それ、もう俺じゃん。


「例えば」


しおりは、さっき転んだ男子の方を見る。


「あなたが止めなかったら?」

「もし大怪我していたら?」

「周囲は言います」


彼女は、静かに再現した。


「“知ってたんじゃないの?”」


……それは。


――ピロン。


【失敗予報:ここで黙ると、図星扱いされます】


「・・・まだ、仮定の話だろ」


声が少し、掠れた。


しおりは頷いた。


「はい。仮定です」


だが、続ける。


「でも、その能力が本物なら」

「共有した瞬間に、性質が変わります」


「変わる?」


「ええ」


しおりは、はっきり言った。


「それは“便利な能力”じゃない」

「“責任発生装置”です」


……ネーミング最悪だな。


「周囲は、

選ばなくなります」

「“あなたが止めなかった”を基準にします」


……やめろ。


「つまり」


しおりは、最後にこう言った。


「その能力、

一人で使っても地獄」

「みんなで使ったら、

もっと地獄です」


沈黙。


廊下の向こうで、

ひなたの笑い声が聞こえる。


……あいつに知られたら。


――ピロン。


【失敗予報:朝倉さんに話すと、三日以内に拡散します】


……だろうな。


「だから」


しおりは、少しだけ声を落とした。


「お願いがあります」


「何」


「誰にも言わないでください」


……おや。


「意外だな」


「え?」


「広めた方が、便利だろ」


――ピロン。


【失敗予報:ここで強がると、信用を失います】


……正直にいくか。


「・・・怖いんだ」


俺は言った。


「この能力、

使えば使うほど、

“選ばなかった責任”が増える」


しおりは、黙って聞いている。


「だからさ」


俺は苦笑した。


「今はまだ、

俺一人が失敗すればいい」


沈黙。


しおりは、少しだけ笑った。


「それが一番、危ない考え方ですね」


「知ってる」


――ピロン。


【失敗予報:でも、今はそれしか選べません】


……だよな。


そのとき。


「こーういちー!」


ひなたが、廊下を走ってきた。


最悪のタイミング。


「何してんのー?」


――ピロン。


【失敗予報:ここで変な間が空くと、怪しまれます】


「・・・雑談」


「・・・雑談」が、限界だった。


ひなたは、俺としおりを見比べる。


「へー。

珍しい組み合わせ」


――ピロン。


【失敗予報:このまま立ち話を続けると、

変な噂が立ちます】


……社会的に死ぬな、それ。


「じゃ、帰ろうぜ」


俺は即断した。


ひなたは目を丸くする。


「え、購買は?」


――ピロン。


【失敗予報:行くと寄り道します】


「今日は直帰」


「珍しっ」


しおりが、静かに言った。


「早坂くん」


「何」


「選ばない、という選択も」




「誰かを巻き込みますよ」


……それは。


――ピロン。


【失敗予報:でも、今は聞かなくていい】


俺は、歩き出した。


……分かってる。


この能力、

使えば使うほど、

“社会”が絡んでくる。


失敗を避けるだけじゃ、

済まなくなる。


それでも――


……今日も俺は、

選ばない、という選択だけは、

まだ、選べなかった。


――――――――――

第4話 了

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ