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不完全選択(ダメ出し未来予報)  作者: シエスタ


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3/15

第3話 その能力、見えてませんよね?

昼休み。


俺は、静かにパンを食べていた。


静かに、だ。

とても静かに。


なぜなら――


――ピロン。


【失敗予報:今立ち上がると、机に膝を強打します】


……だから立たない。


――ピロン。


【失敗予報:今パンを落とすと、ひなたに拾われます】


……それは失敗じゃなくないか?


――ピロン。


【失敗予報:その考え方は危険です】


……何基準だよ。


俺はパンを机に置いた。


この能力、

もはや俺の行動を逐一レビューしてくる

超うるさい未来上司だ。


「こういち、今日購買行かないの?」


朝倉ひなたが、いつもの調子で聞いてくる。


――ピロン。


【失敗予報:一緒に行くと、アイスを奢らされます】


「行かない」


即答。


「え!? 珍し!」


――ピロン。


【失敗予報:理由を聞かれます】


「聞くな」


「聞くよ!?」


……もうダメだ。


「混んでるから」


――ピロン。


【失敗予報:嘘ではありませんが、印象は薄いです】


……印象とか今どうでもいい。


ひなたは不満そうに頬を膨らませた。


「今日のこういち、ほんと変」


「今日は“今日の俺”が変なんだ」


「なにそれ哲学?」


――ピロン。


【失敗予報:その返し、理解されません】


……知ってた。


俺は視線を逸らし、

教室の隅で本を読んでいる白石しおりを見た。


落ち着いている。

いつも通り。


……だが。


――ピロン。


【失敗予報:今、目が合います】


……え。


一拍遅れて、目が合った。


しおりは、少し首を傾げる。


「何かありました?」


「な、何も」


――ピロン。


【失敗予報:その否定、三秒遅いです】


……三秒も考えてない。


しおりは、じっと俺を見た。


笑わない。

茶化さない。


ただ、観察する目。


「早坂くん」


「はい」


反射で返事をした。


――ピロン。


【失敗予報:敬語は距離を生みます】


……しまった。


「どうした?」


言い直す。


しおりは、少し考えてから言った。


「さっきから、行動が……

選択肢を確認しているみたいに見えます」


……心臓が一拍、止まった。


「例えば?」


俺は慎重に聞き返す。


しおりは指を折った。


「立ち上がろうとして、やめた」

「パンを持ち上げて、戻した」

「ひなたさんの誘いを、異様に即断で断った」


――ピロン。


【失敗予報:ここで動揺すると、バレます】


……落ち着け。


「・・・そんなわけないだろ」


笑おうとした。


――ピロン。


【失敗予報:その笑い、引きつります】


……やめた。


結果、無表情。


「……」


「……」


しおりの視線が、さらに鋭くなる。


「否定しないんですね」


「否定しただろ」


「言葉では。でも、動きが否定してません」


――ピロン。


【失敗予報:この人、鋭いです】


……評価ありがとう。


そのとき。


――ガタン!


クラス後方で、誰かが椅子を倒した。


男子が、転びそうになっている。


――ピロン。


【失敗予報:助けに行くと、一緒に転びます】


「待て!!」


俺は思わず叫んだ。


次の瞬間、

その男子は一人で盛大に転んだ。


「うわっ!」


教室がざわつく。


「何今の!?」


視線が、俺に集まる。


「・・・なんで止めた?」


誰かが言った。


俺は、口を開き――


――ピロン。


【失敗予報:正直に話すと、日常が終わります】


……それは困る。


「勘」


短く答えた。


沈黙。


しおりが、静かに息を吐いた。


「・・・やっぱり」


「やっぱりって何だよ」


彼女は、はっきり言った。


「早坂くん。

あなた、

“失敗する未来”だけ見えてませんか?」


教室の空気が、

一段、静かになった。


……ああ。


これは――


――ピロン。


【失敗予報:一人で抱えるのは、もう無理です】


……だろうな。


俺は、苦笑した。


――――――――――

第3話 了

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