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不完全選択(ダメ出し未来予報)  作者: シエスタ


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2/15

第2話 教室は、失敗予定地です

遅刻カードを提出した瞬間、

俺の高校生活は、今日も平和に崩壊した。


「はい、席ついてー」


担任の声が、やけに優しい。

こういうときの優しさは、だいたい信用できない。


俺は教室のドアを開けた。


――ガラッ。


全視線、集中。


この一瞬の静寂。

人類が最初に恐怖を覚えたのは、たぶんこれだ。


「おはようございまーす」


言い切る前に、脳内が鳴った。


――ピロン。


【失敗予報:今の声量だと、教室が微妙な空気になります】


……もうなってる。


席に向かって歩き出す。


――ピロン。


【失敗予報:その歩き方、若干イキって見えます】


……普通だろ。


一歩、ぎこちなくなる。


――ピロン。


【失敗予報:今度は不審者です】


……どう歩けって言うんだ。


内心キレながら、なんとか席に到着する。


俺の前の席が、

幼なじみの――朝倉 ひなた。


こいつは、

朝から元気でうるさいタイプの人間だ。


「こういち! また遅刻?」


振り返りざま、満面の笑み。


――ピロン。


【失敗予報:正直に話すと、話が長引きます】


……詰んだ。


「いや、別に」


ひなたは目を細めた。


「その言い方、絶対なんかあるじゃん」


……ほら来た。


「ないない」


――ピロン。


【失敗予報:その否定、信じてもらえません】


……知ってる。


「ちょっと寝坊しただけだよ」


これなら無難だろ。


――ピロン。


【失敗予報:三割嘘。後で突っ込まれます】


……細かすぎる。


ひなたは、さらに身を乗り出してくる。


「え、寝坊以外にも理由あんの?」


「ないって」


――ピロン。


【失敗予報:声が裏返ります】


「裏返ってない」


「裏返ってたよ」


……もうダメだ。


俺は机に突っ伏した。

今日は何も喋らない。

そう決める。


――ピロン。


【失敗予報:無言キャラは似合いません】


……人格否定やめろ。


そのとき、横から声がした。


「朝から騒がしいですね」


落ち着いた声。

後ろの席。


白石 しおり。


美人。

知的。

クラスの空気清浄機。


――ピロン。


【失敗予報:ここで変な返しをすると、一生ネタにされます】


「おはよう」


無難中の無難。


――ピロン。


【失敗予報:特になし】


……よし。


俺は小さく頷いた。


しおりは首を傾げる。


「今、少し安心しました?」


「気のせいだ」


――ピロン。


【失敗予報:否定が早すぎ】


……くそ。


ひなたが、面白そうに割り込んでくる。


「ねえ、こういちさー」


嫌な予感がした。


「今日なんか変じゃない?」


変なのは世界だ。


「そんなことない」


――ピロン。


【失敗予報:説得力ゼロ】


……自覚はある。


チャイムが鳴る。

授業開始。


先生が板書を始めた瞬間、

俺は嫌な予感を覚えた。


……これ、授業中も鳴るのか?


――ピロン。


【失敗予報:今それを考えると、集中できません】


……もう遅い。


案の定、ノートが進まない。


シャーペンを持つ。


――ピロン。


【失敗予報:芯が折れます】


少し力を抜く。


――ピロン。


【失敗予報:今度は薄すぎて見えません】


……適量って概念はないのか。


消しゴムを落とす。


――ピロン。


【失敗予報:拾うとき、前屈みすぎ】


……誰に何を見せる気だ。


限界だった。


これ、日常で使う能力じゃない。

拷問だ。


でも――

ふと、気づく。


失敗は、全部

“選ぶ前”に通知されている。


つまり。


俺が選ばなければ、

失敗は起きない。


……選ばなければ。




俺はノートを閉じた。


今日は、

考えるのはやめだ。


失敗を避けて、

最低限、生き延びる。


それだけでいい。


そう決めた瞬間。


――ピロン。


【失敗予報:その生き方、後で後悔します】


……知るか。


俺は、天井を見上げた。


成功は分からない。

正解も分からない。


でも、

選ばないという選択だけは――


どうやら、

一番ダメらしい。


――――――――――

第2話 了

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