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不完全選択(ダメ出し未来予報)  作者: シエスタ


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第10話 参加しない、という選択肢

放課後。


俺は、屋上にいた。


風が強い。


……今日は、誰も追ってこない。


――ピロン。


【失敗予報:今日は、相談されません】


……珍しい。


フェンスに手を置く。


金属が、少し冷たい。


……昨日まで。


俺は、答える側だった。


聞かれて。


見られて。


判断を、期待されて。


でも、


「参加しない」って、


どういう状態なんだ?


――ピロン。


【失敗予報:考えすぎると、結論が遅れます】


……急げってことか。


足音。


白石しおりが、屋上に入ってくる。


「やっぱり、ここでしたか」


「分かりやすい?」


「ええ」


しおりは、フェンスの隣に立つ。



沈黙。



――ピロン。


【失敗予報:この沈黙、悪くありません】


……初めて聞いた気がする。


「なあ、しおり」


「はい」


「“参加しない”ってさ」


「何もしない、とは違うよな?」


しおりは、少し考えてから言った。


「違います」


即答。


「“何もしない”は、期待を残します」


……残る。


「“いつかやる”」

「“必要なときは出てくる”」


「そう思わせた時点で」

「もう、参加しています」


――ピロン。


【失敗予報:耳が痛いですが、正解です】


……ですよね。


「じゃあさ」


俺は、空を見上げた。


「どうすればいい?」


しおりは、視線を前に向けたまま言う。


「役割を、消すんです」


……消す?


「能力を消す、ではありません」


「立場です」


――ピロン。


【失敗予報:ここ、重要です】


……聞いてる。


「今のあなたは、

“判断できる人”として見られている」


「だから、

使わなくても、使う前提になる」


「その前提を崩す必要があります」


……崩す。


「どうやって?」


しおりは、少しだけ口角を上げた。


「一番、単純な方法があります」


――ピロン。


【失敗予報:嫌な予感がします】


……だろうな。


「外すんです」


「外す?」


「期待から」

「評価から」

「便利さから」


「全部」


……全部。


「具体的には?」


しおりは、淡々と言った。


「間違える」


……は?


「意図的に?」


「ええ」


――ピロン。


【失敗予報:これは、かなり勇気が要ります】


……待て。


「それ、俺が一番避けてきたやつだろ」


「知っています」


しおりは、頷く。


「でもあなたは今、

失敗しない人として扱われています」


……確かに。


「なら」


しおりは、続ける。


「失敗する姿を見せるしかない」


……最悪。


「それってさ」


俺は、苦笑した。


「自分から、信用落とせってこと?」


「ええ」


即答。


「信用を落とす、ではなく」

「過信を壊す、です」


――ピロン。


【失敗予報:言い換えですが、本質は同じです】


……フォローになってない。


「でもさ」


俺は、言った。


「わざと間違えたら、

誰かが怪我するかもしれない」


しおりは、首を振る。


「重大な場面では、しません」


「日常のどうでもいい判断で、です」


……地味だな。


「でも」


「それを取り繕わない」


――ピロン。


【失敗予報:ここ、重要です】


……また。


「謝らない、ってこと?」


「違います」


「言い訳をしない、です」


……あ。


「“分かってたけど黙ってた”」

「“本当はできた”」


そう思わせない。


「ただ」


「間違えました」

「分かりませんでした」


それだけ。


――ピロン。


【失敗予報:この態度、最初は評価が下がります】


……やっぱり。


「でも」


しおりは、続ける。


「それ以上、期待が積み上がらなくなる」


……なるほど。


「選ばせる構造は、

“できる人”がいる前提で回ります」


「その前提が崩れれば、空回りします」


――ピロン。


【失敗予報:構造的に正しいです】


……初めて、救いのある説明だ。


「じゃあ」


俺は、ゆっくり言った。


「俺は」


「間違える人になる」


「ええ」


「分からない人になる」


「はい」


「役に立たない人になる」


「・・・少し違います」


しおりは、首を傾げた。


「“役に立たせない人”です」


……微妙な差。


「あなたは」

「能力を失うわけじゃない」


「ただ」

「使われない位置に移動する」


――ピロン。


【失敗予報:これは、逃げではありません】


……逃げじゃない。


俺は、息を吐いた。


……怖い。


でも。


初めて、


選択肢らしい選択肢が出てきた。


「なあ、しおり」


「はい」


「これさ」


「明日から、やるんだよな?」


しおりは、頷いた。


「ええ」


「すぐに」


――ピロン。


【失敗予報:躊躇すると、元に戻ります】


……だよな。


夕焼け。


空が、赤い。


……俺は。


失敗を避ける能力を持ってる。


でも。


それを、使わないんじゃない。


使われないようにする。


……そんな選択肢があったなんて。


俺は、フェンスから手を離した。


……明日。


俺は、間違える。


わざと。


そして、それを隠さない。


――ピロン。


【失敗予報:この選択、楽ではありません】


……知ってる。


【失敗予報:ですが】



一拍。



【失敗予報:後悔は、減ります】


……それでいい。


選ばない、という選択だけはしなかった。


これで後悔するなら、それは自分のものだ。


選ばなかった後悔だけは、残らない。


――――――――――

第10話 了

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