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【第2部開始】ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜  作者: 月森 かれん
第2部 始祖竜編

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第58話 優しさの理由

 「うーん、どれにしよう……」


 私は再び首を捻っていた。

ジャミラさんが持ってきてくれたのは、薄い黄色と濃い紫と水色の服。

ローブの中に着るものなので、生地は薄手だった。


 「どの色も好きなんだけどな〜」


 『色が違うだけだろうが……』 


 『我だったら黄色にする!砂漠っぽいし!!』


 アルゲオはさっき自分の意見が採用されたのが嬉しかったのか、また選ぶ色を口にする。

 すると、ジャミラさんが少しだけ目尻を上げて声をかけてきた。


 「それにしても、あなた本当に不思議ね。

1人でこんな所にまで来るなんて。

まだ10代前半に見えるけど、何があったの?」


 「えーっと……」


 『固まるなよ!?明らかにワケありだってバレるだろうが!?』

 

 『この女も侮れんな……。この大陸、勘鋭い人多くない?』


 だけど、ジャミラさんに嘘をつくのは申し訳無い気がした。

それに、ジェイドさんたちと同じで真剣に聞いてくれそうな気がする。

 笑われるか呆れられるのを覚悟で話すことにした。


 「あの、私、ドラゴンが大好きで。

それで、イエロードラゴンに会いに来たんです」


 ドキドキしながらジャミラさんの顔を見ると、どこか楽しそうに微笑んでいた。

 

 「へぇ〜、イエロードラゴンに?」


 「わ、笑わないんですか?それか頭のおかしい子だって思うとか……」


 「だって、あなたが嘘をついているなんて思えないもの」


 ジャミラさんは表情を変えないままキッパリと言った。

驚いて言葉を失っていると、ラディウス達がボソボソと話す。


 『こんなに簡単に信じてもらえるとちょっと怖いよな……』


 『それは我も思うー。だが、悪い人かって言われると迷う……』


 彼等の意見には賛同する。

だけど、ジャミラさんが悪い人だとは思えない。


 「ほら、さっさと決めちゃいなさい。

そしたらまた続きを話しましょう」


 ジャミラさんはそう言って素早くカーテンを閉めてしまった。

だけど、足音は聞こえないのですぐ側に立っているんだと思う。

 ラディウス達の声は私にしか聞こえない。そのため、意見を聞くことができないので、急いで服を選ぶことにした。



 結局、私は水色を選んだ。

少しでも涼しさを感じていたいからだ。

 その上から黒いローブを羽織る。

前はボタンで留められるようになっていた。それでも生地が分厚いので熱がこもる感じがする。


 「選び終わりましたー」


 荷物を持ってカーテンを開けると、近くのテーブルで書き物をしていたジャミラさんが顔を上げる。


 「水色にしたのね。よく似合っているじゃない」


 「あ、ありがとうございます。

 ところで、全部でおいくらですか?」


 「銀貨1枚よ。ローブと服、それぞれで銅貨5枚になってるから」


 私は革袋から銀貨を取り出してジャミラさんに渡した。

これで残りは銀貨3枚になる。慎重に使わないといけない。

 ジャミラさんは銀貨をテーブルの上にある小さな金庫にしまうと、私に向き直る。


 「さて、さっきの続きね。サハルには話したの?」


 「いえ、まだです……。

目的は聞かれたんですけど、観光だって嘘ついちゃいました……」


 「それなら話した方がいいわよ。

まぁ、勘づいてるとは思うけどね」


 ジャミラさんが小さく笑う。

 つくづく、サハルさんのことをよく知っているなと思った。


 「サハルさんって勘が鋭いですよね……」


 「そうよ。周りをよく見ているわ、彼」


 その言葉を聞いて、サハルさんがさりげなく悪徳商人たちから助けてくれていたことを思い出した。


 「そういえば、私に声をかけたのも……」


 「あなたがこの大陸の人間じゃないから、でしょう?

いいカモみたいよ、商人たちにとってはね」


 「全く同じことを言われました……」


 少し憂鬱な気分になる。

故郷のクラルハイトと違って治安が良くないのは理解した。


 しょんぼりと肩を落とした私を見て、ジャミラさんが微笑む。


 「やっぱりね。ああ見えて世話焼きなのよ」


 「銅貨5枚払いましたけどね……」


 「安い方よ。ここの物価は銅貨5枚〜銀貨2枚なんだから」


 それからジャミラさんは何かを閃いたらしく、ポンと手を叩いて私に提案してきた。


 「そうだ!あなたしばらくケルブアに居るんでしょう?

その間、服と使わない荷物を預かるわよ」


 「いいえ、大丈夫です。大事な物ですし、自分で持ち歩きますから」


 ジャミラさんは善意で言ってくれているのだろうけど、会ったばかりなのに

ここまでしてもらうのは申し訳ない。


 やんわり断ろうとしても、ジャミラさんは引き下がらなかった。 


 「遠慮しなくて良いのよ?肩から下げてる白いポーチは重くはないだろうけど、革袋が2つ。それを持ち歩くのはけっこう大変だと思うわよ?

手が塞がっちゃうし」


 「でも……」


 「私、頑張ってる子を応援するのが好きなのよ。あなたもそう。

知らない土地でもこうして頑張って馴染もうとしている。

それにあなたは態度がとても良いから、色々助けたくなるの」


 「態度が良い……」


 まだ実家で勉強していた時、家庭教師のロイヤーさんから『態度は大事ですよ。初対面の人には特に丁寧に接するように』、と口酸っぱく言われていたことが思い起こされた。

 当時は同じことを何回も言われて辟易してたけど、改めて彼女の指導が活きていると実感した。


 すると、ラディウス達が会話に割り込んでくる。


 『任せちまっても大丈夫だろ。お前の言葉に嘘をついていないって言い切ったヤツが悪いヤツとは思わねぇ』


 『それに言っていることも間違いではない!

我の時のように雪山を登るのとはまた違うだろうからな!

後で後悔するよりはここで預けておいた方が良いと思うぞ!』


 今までの会話を聞いて、2人とも意見が固まったみたいだ。

それにしても真っ当な意見を言ってくる。ドラゴンは賢いと絵本にも書いてあるので、間違ってはいないんだなと思った。


 私は顔を上げると、ジャミラさんの透き通った青い目を見つめる。


 「あの、やっぱり荷物を預かってもらえませんか?

追加料金なら払いますので!」


 「お代は要らないわよ。私が勝手に提案しただけだから。

なら、要る物だけポーチに入れちゃいなさい」


 「ありがとうございます!」


 私は精一杯の笑顔で言うと、荷物の整理を始めた。

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