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【第2部開始】ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜  作者: 月森 かれん
第2部 始祖竜編

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第54話 さようなら、ブラウア大陸

 外は相変わらず雪が降っていた。 

分厚い雪雲の隙間から陽が細く伸びていて、表面を照らしている。

宝石のようにキラキラと輝いていて、とても綺麗だと思った。


 「よし、これで全部用事は終わったから……」 


 『次の大陸だな!

ここからはロートアかケルブアに行けるぞ!」


 「どっちが良い――あ」


 そこまで言いかけて閉口する。

確かロートア大陸を経由した時、もうすぐ噴火する、と言われていたのだった。


 「ケルブア大陸だね。

ロートア大陸はもうすぐ噴火するらしいから」


 そう言いながら歩き始める。

行き先はもちろん船着場だ。


 『もうしてるかもしれねぇけどな。ここに来て数日は経ってるんだしよ』


 『ハハハッ!

 となれば、ケルブア1択だな!つまりは黄色!』


 「イエロードラゴンだね。……どんな性格なの?」


 アルゲオは事前に声を聞いていたから、なんとなく予想はついたけど、

イエロードラゴンのことなんて全然知らない。

 するとラディウスが唸った。


 『そうだな……。怒らせたらミイラにされちまうぞ』


 「なにそれ!?怖っ!!」


 思わず大声を出してしまい、慌てて両手で覆う。

 ちょうど通りに出たところだったので、複数の人が不思議そうに私を見ていた。


 「あ……お、思い出し恐怖ってやつなので、気にしないでください!」


 作り笑いを浮かべて早足で進む。

思い出し恐怖なんて無茶振りだと思ったけど、他に思いつかなかった。

 逃げるように人通りの少ない路地に入って、ようやく足を止める。


 「うぅ、油断してた……」 


 『周りに誰も居ないことが多かったからな。

さっきまでいろんなやつに会ったけど、俺達ほぼ黙ってたし』

 

 『なるほど!確かにシーラ以外からしてみれば、いきなり大声を出したようにしか見えんな。これは苦労するぞ』 


 「2人共優しいんだね。てっきりバカにされるかと思った」


 そう言うと、ラディウスがポケットから出てきて、肩までよじ登ってくる。

寒さは関係ないみたいだ。


 『俺は呆れの方が強い。

とはいえ、他の人間がいる中で俺達と話しながら移動するのは久しぶりだからな。仕方がねぇだろ』


 『フハハハハッ!!我はまだよくわかってないからな!何とも言えん!』


 「そ、そうだね……」


 アルゲオはともかく、ラディウスが励ましてくれたのは嬉しかった。



 路地にいる内に、イエロードラゴンについて聞くことにした。


 「それで、イエロードラゴンって怒ったらミイラにしちゃうんだよね?」

 

 『もちろん冗談ではあるがな!それでも怖いけど』


 冗談でもミイラにする、と言うイエロードラゴン。

想像しただけでも背筋が寒くなって、思わず身震いした。

 

 「イエロードラゴンって男の子?女の子?」


 『それがな、わからねぇんだよ』


 『そうなのだ!なにしろ常に敬語で声の高さも中性的だからな!

何回か聞いたけど、はぐらかされちゃうし……』


 アルゲオの説明を聞いて納得してしまう。

ラディウスもアルゲオも声が低いので男の子だとわかるけど、中性的ならわからない。


 「会ったら1回だけ聞いてみていい?さすがに初回でミイラにされないよね?」


 『たぶん!』


 「たぶんかぁ……」

 

 『まぁ、アイツは正義感が強いから。明らかに悪人でもなければ

いきなりミイラにすることはないだろうよ』


 「そうなの?」


 思わず聞き返すと、ラディウスが小さく跳ねる。


 『ああ。それに、始祖竜のことは聞いてるはずだから、すぐに理解してくれると思うぜ』


 「ちょっと不安だけど、ラディウス達がいるから大丈夫だよね。

だって面識あるんでしょ?」


 『ある!

それにこの姿とはいえ、我等の声を聞けば、黃でも1度は動きをとめるだろう!』


 「頼りにしとくね」


 『ハーッハッハッ!!任せておくがよい、シーラよ!』


 アルゲオがポケットの中でバタバタしながら答えた。 

これだけ自信満々なら、任せても大丈夫だと思う。


 聞きたいことは聞けたし、ラディウス達もこれ以上情報は持っていなさそうなので、再び歩き出す。


 「それじゃあ、船着場に行こっか。

たぶん船移動になるから」


 『あー、そうだよな……』


 ラディウスの声が明らかに下がる。

また船酔いすると確信しているみたいだ。


 『おお、船か!我は乗るの初めてでな!

楽しみー!!』


 『お前、後で後悔するなよ』


 『え、何で!?船ってそんなに嫌なの?』


 『少なくとも俺はな』


 今度は周りを気にしながら小声で話す。

そうしている内に、船着き場に着いた。

 ちょうど船が入ってきた所で、お客さんや船員さん達がバタバタと動き回っている。

 船員さん達が頭に巻いている布が黄色なので、アルノーさん達の船だ。

 まばらになるまで待ってから、桟橋にいる船員さんに声をかける。


 「あの、すみません。この船ってケルブア大陸に行きますか?」


 「ああ、行くぜ。

まだあと10分ぐらい滞在するけどな。

先に乗るなら代金貰っとくぜ?」


 「乗ります!銀貨1枚でしたよね?」


 革袋からお金を取り出して渡すと、お兄さんは満足そうに頷いた。


 「よし、確かに受け取ったぞ。

はしゃぎ過ぎて船から落ちないでくれよ?」


 「落ちませんよ!?船乗るのも慣れてきましたし!」


 ムッとして言うと、お兄さんはケラケラと笑った。


 乗客は、私達以外に誰もいなかった。

 船の後方の隅を陣取って、縁に手をかける。

そこからスノメルの町を眺めた。

 

 まばらに行き交っている人々、雪の帽子を被っている屋根。 

 もうすぐブラウア大陸を離れるのだと思うと、少し胸にくるものがある。


 「なんかあっという間だったね……」


 『まぁ、割とトントン拍子に進んだと思うぜ』


 「そうだね。ピンチはあったけど、皆のおかげで乗り越えられたし」


 『ハーッハッハッ!!旅にピンチはつきもの――』


 「よぉ、お嬢ちゃん!少しぶりだな!」


 アルゲオの声すら遮る威勢のいい声に振り返ると、アルノー船長が立っていた。


 「アルノー船長さん!お元気そうで何よりです。

またお世話になりますね!」


 「ガッハッハ!……って今からケルブア行きだぞ?

家に帰るんじゃないのか?」


 「せっかくだから、いろいろな所を見て回ろうと思って」


 ラディウス達のことを話すわけにはいかないので、こう言うしかなかった。

アルノー船長が意外そうに目を丸くする。


 「ほー。

余計なお世話かもしれないが、親は心配してねぇのか?」


 突っ込まれて、返す言葉を失った。体温が少しずつ下がってくる。

 そう、このことは家族の誰にも話していない。

だから皆、私がヴァイスア大陸にいると思っているはずだ。


 『確かに。家族には話してねぇよな。このこと』


 『えっ!?そうなの!?』


 『コイツを泊めてくれてる宿屋夫妻には話したけどな。

でもブラウアまでしか知らねぇし、まさかこのまま別大陸に行くことなんて予想もできてねぇだろうよ』


 『それ、大丈夫!?見つかったら強制帰還とかない!?』


 『俺も知りてぇよ』


 耳にラディウス達の会話が突き抜けてゆく。

 完全に固まってしまった私を見て、アルノー船長はバツが悪そうに頭をかいた。


 「あー、どうやら聞いちゃいけねぇことみたいだったな。

よし、忘れろ!ガッハッハ!!」


 「忘れるって言われても……」 


 「俺とは挨拶しかしてない!」


 『無茶苦茶だな、コイツ』


 ラディウスの意見に賛同する。

だけど、船長はゲラゲラと笑いながらどこかに行ってしまった。

 

 つい、大きなため息が漏れる。


 「そうだった……。

となると、ぬいぐるみが喋るってことから話さないといけないし。

信じてくれるかな……」


 『意外と大丈夫なんじゃねぇか?宿屋夫妻も信じてはくれているんだしよ』


 「ぬいぐるみ作りに関しては寛容だけど、それとこれとは話が違うと思う……」

 

 気分が晴れるはずもない。

そのまま出港時間になり、私は暗い気持ちのままブラウア大陸を離れたのだった。

ようやくブラウア大陸編、完結です!


次はケルブア大陸。イエロードラゴン。

どんな旅になるのやら……。

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