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【第2部開始】ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜  作者: 月森 かれん
第2部 始祖竜編

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第53話 不思議な縁

 しんしんと小粒の雪が降る中、スノメルに足を踏み入れると、遠くから私に向かって走ってくる人がいた。

 アオトさんだ。


 「アオトさん!?」


 「よかった!君、無事だったんだね!」


 「へ?ま、まぁ……」


 危険はあったけど、結局は帰ってこれたので曖昧に答える。

アオトさんは私の真正面で止まると、肩で息をしながら話しだした。


 「君を送り届けたあと、食堂に行ったらちょうど話題になっててね。

少し盛り上がったんだけど、夕方になっても帰ってこないから心配になっちゃって」


 『確かに昼頃に出かけたヤツが帰ってこなかったら不安になるよな』


 「心配させてしまってごめんなさい……」


 ラディウスの呟きに思わず返しそうになったけど、どうにか耐えた。

 私の言葉を聞いたアオトさんは、にこやかに微笑む。


 「無事だってわかってよかったよ。

とりあえず、君を心配してた大将やロズリーヌさんに顔を見せておいで。

その後、また僕の家に寄ってもらえるかな?

例のことをゆっくり聞きたいからね」


 例のことがアルゲオへのお礼の件だと察した私はすぐに頷いた。

そして1つだけ尋ねる。


 「あの大将さんはわかるんですけど、ロズリーヌさんって?」


 「ああ、洋服屋の人だよ。あの人もちょうど食堂に居たからね。「もし凍えてたらどうしましょうっ!?」って少し青くなってたよ」


 『へぇ、体型に似合わず綺麗な名前――グへッ!?』


 私は肩に積もっていた雪を払うフリをして、ラディウスを雪の上に落とした。

あんなに良くしてくれた人にそんなことを言うなんて許せない。


 ラディウスも帽子とマフラーもらって助かったとか言ってたから、余計に。


 『お前、後で覚えてろよ……』


 「じ、じゃあ急いで顔を見せてきます!また後で訪ねますね!」


 素早くラディウスを拾って空いているポケットに突っ込むと、

さっそくロズリーヌさんのお店へ向かった。

 その間にアルゲオがポケットから頭を出す。モゾモゾと動いているところを見ると、調子は戻ったみたいだ。

 

 お店に辿り着いて、軽くノックしてからドアを開ける。

初めて訪ねた時と同じように、温かい空気が迎えてくれた。

 

 「こんにちはー」


 「まぁまぁいらっしゃい――ってあなた!?

よかった無事だったのね!」


 カウンターで作業をしていたロズリーヌさんは動きをとめると、バタバタと私の所にかけよってきた。


 「アオトさんから聞きました。

心配させてしまったみたいで、すみません……」


 「とんでもないっ!無事ならよかったのよ!」


 ロズリーヌさんがふくよかな体を揺らして笑う。

それから、私のポケットに入っているラディウス達に目を止めた。


 「あら?ぬいぐるみが増えてる?」 


 「はい。作りたくなったので。

急いで作ったから、白の子よりは大ざっぱですけど」


 そう言いながら、アルゲオをポケットから取り出して見せる。

ラディウスはまだドラゴンの形をしているけど、アルゲオは丸いだけ。

時間がある時に作り直さないといけない。 


 『ハーッハッハッ!!我こそがアルゲオである!』


 「まぁ本当。でもこれはこれで可愛いわよ」

 

 『待って!?もしかして我の声聞こえてないの!?』


 のんびりとした声で話すロズリーヌさんを見て、

アルゲオが手の中で少し動いた。 


 『ああ。言い忘れていたが、俺達の声が聞こえるの、箱入り娘だけだぞ』


 『それ早く言ってよ!!……ん?ということは、我動いちゃダメじゃん!?』


 アルゲオは1人で理解して呟くと、大人しくなった。

 

 察するのが早すぎる。助かったけど、少し複雑な気分になった。


 変な間ができてしまったので、私はアルゲオをポケットに入れてから慌てて話を続けた。


 「でも私はまだ納得がいっていないので。

時間がある時に作り直そうと思います」


 「その方がきっとぬいぐるみちゃんも喜ぶわよ。

そうだっ!布を追加で買っていかない?少しマケとくわよ」


 「買います!」


 これから訪ねる予定の色、黄色と赤と黒。

そして直す用に青の全部で4枚買った。

 銅貨4枚で、ロズリーヌさんの配慮もあったけど思ったより安くて嬉しかった。


 店の入り口で改めてロズリーヌさんにお礼を言う。


 「本当にありがとうございました!

ここの服、温かくて全然寒くなかったです!」


 「そりゃあ丹精込めて作ってるからねぇ。私も楽しかったわ。

これからはクラルハイトに帰るの?」


 「えっと……」


 尋ねられて、思わず固まる。

次の場所は赤がいるロートア大陸か別の色竜がいる大陸。

少なくともクラルハイトには戻らない。


 「せっかくだから、いろいろな所を回ってみようかなって」


 「そうなの。またここを訪ねることがあったら寄ってちょうだいね!」


 「はい!その時はよろしくお願いします!」


 ロズリーヌさんに手を振ってから店を出た。



 

 それからすぐに食堂を訪ねる。

そろそろお昼時なのか、店内は賑やかで半分ほど席が埋まっていた。


 「こんにちは……」 


 「いらっしゃ――まぁ、あなた!?」


 私に気づいたミーシャさんが小走りで寄ってくる。


 「皆で心配してたのよ。山で遭難しちゃったんじゃないかって」


 「ごめんなさい……。ここまで大事になってるなんて思ってなくて……」

  

 アオトさんやロズリーヌさん、ミーシャさん達には会ってから日が浅い。

それなのに、ここまで心配してくれていたことに申し訳なくなる。


 「無事ならそれでいいのよ。

うーん、ゆっくりしてもらいたいんだけど……」


 ミーシャさんが店内を見渡しながら小さく唸る。

大将さんは忙しそうに食材を切っているし、他の店員さんもバタバタと動き回っている。


 「私は顔を見せに来ただけなので、すぐ失礼しますね」


 「そう?ごめんなさいね。

でも大将には私からしっかり伝えておくわ!」


 「お願いします!

あと、スープ飲んでて本当に助かりましたって、伝えてもらえますか?」


 「もちろんよ!じゃあ、またね」


 「はい!お邪魔しました!」


 私の言葉を聞くとミーシャさんは軽く手を振って、

来た時と同じように仕事に戻っていった。

 

 「私達も行こっか」


 『やっとかよ……。人が多いんだしさっさとしてくれ』 


 『そうだな!さっきの店もそうだったけど、ここ少し暑いし!』


 「はいはい……」


 ラディウス達は早く外に行きたいらしい。

ポケットの中でモゾモゾと動き始めた2人を鎮めながら、私は食堂を後にした。



 「さてと、次はアオトさんの所だね」


 『お前も忙しいな』


 「だって皆に心配させてしまったんだもん。

顔を見せて無事だってことを伝えなきゃ。

でも次で最後だから!」


 私は小走りでアオトさんの家に向かう。

まだ雪は小降りだった。


 「失礼しまーす」


 「やあ、いらっしゃい。

皆に顔見せはできた?」


 ノックしてからドアを開けるとアオトさんが笑顔で出迎えてくれる。


 「はい。皆さんとても優しいんですね。

申し訳なくなっちゃって……」


 「ははは。この町は住人の繋がりが強いからね。

でも本当によかったよ」


 『うーん、この人間か。見覚えがあるような、ないような……』

 

 アルゲオがポケットから頭を出したまま、唸り始めた。

やっぱりその時から時間が経っているし、見ただけでは難しいみたいだ。


 「それで、例のことを聞きたいんだけど……。

その前にドアを閉めてもらっていいかな?さすがに寒くて」


 「あっ!?すみません!!」


 慌ててドアを閉める。すでに玄関先に少し雪が入り込んでしまっていた。

 手で集めて、ドア付近に寄せる。

それからアオトさんに向き直った。


 「ブルードラゴンに会えたので、ちゃんとお礼を伝えてきました」


 「本当!?ありがとう!!

ブルードラゴンは何か言ってた?」


 「それがですね、ブルードラゴンは助けたことを覚えてないみたいで。

子どもを助けた記憶はあるけど、って言ってました」


 私の言葉を聞くと、アオトさんは残念そうに肩を下げる。


 「そっか……。

いや、それでも伝えてくれてありがとう。ずっとモヤモヤしてたからね」


 『我ここに居るけどね!!

しっかり受け取ったぞ!!』


 アルゲオが叫ぶ。

声を聞かせられないのが、本当に残念だと思った。


 「あ、そうだ!ピスカの粉、ありがとうございました!

助かりました」


 ワイルドベア対策として渡されていたことを思い出した。

懐から小さい革袋を取り出して、アオトさんに渡す。


 「それはよかった――って半分ぐらい減ってるね?

もしかして、会っちゃったの?」


 「はい。でもその粉とアイススライム達が助けてくれました」


 そう答えると、アオトさんはポカンと口を開けたまま固まってしまった。


 『そりゃあビックリするよな……。生還してるんだから』


 『ギリギリではあったがな!!それでも我等の勝ちである!!』


 「そ、そうなんだ……。すごいね。

魔物が助けてくれるなんて聞いたことがないけど……」


 「私、懐かれやすいみたいで」


 ここまでのことを思い出す。

テネル達スライム、そしてアイススライムとフィデス達スノウウルフ。

リーダー達がぬいぐるみに入ってくれたから、意思疎通が取れたけど、

それでも確かに懐かれやすいなと思った。 


 アオトさんはしばらく私を見つめた後、穏やかに微笑んだ。


 「もしかしたら、君から魔物を安心させるようなオーラが出ているのかもしれないね」 

 

 「そうかもしれませんね。自覚はないんですけど」


 「見えない気ってそういうものだよ。

 君はこれからどこかに行くのかい?」


 「その予定です」


 まだ行き先は決まってないけど、そう答えておいた。

すると、アオトさんは名残惜しそうに目を伏せる。


 「そう……。楽しんでおいで。

 引き留めて悪かったね」


 「とんでもないです!私の方こそ、いろいろ助けてもらって。

本当にありがとうございました!」


 「それはお互い様だよ。僕も長年の未練がなくなったからね。

じゃあ、さようなら。もしこの町に寄ったら訪ねてくれると嬉しいな」


 「さようなら!お元気で!」


 私はお辞儀をして、ドアを開けた。 

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